第7話 野呂 神社

 今日はいろいろありすぎた。

 頭のケガが原因で記憶喪失になり、登校時は張り紙のイタズラにい、クラスでは数の暴力による嫌がらせを受けた。きわめつけは、部活の顧問から卑猥ひわいなことを要求された――でも、これで終わりではないようだ。なぜなら、帰宅途中に清白エリカに待ち伏せされていたからだ――。


「まさか、このままわたしをスルーするつもり?」

「……そ、そんなつもりは……」


 私は歩みを止めた。

 すると、清白エリカは躊躇することなく私のスカートのすそをめくり上げた。


「やっぱり下着、穿いてたわね」

「なに? もしかしてそれを確認するために……」

「そんなわけないじゃない。確認したかったのはのほう」

「えっ、どうしてそのことを……」

「いいわ、全部教えてあげる。わたしについてきなさい」


※※※


 移動にはバスが使われた。

 

 15分位バスにられ、さらに15分歩いた。「ここよ」そう言って彼女が指さした先は神社のようだった。20段ほどある階段を上ると、三ツ鳥居みつとりいが私たちを出迎えた。


 時刻はすでに夜の7時を過ぎている。辺りはすっかり暗闇に包まれているのだが、うっすらと白く浮かびあがるそれはとても存在感があり神秘的だった。


「すごく立派な鳥居」


 思わず声に出していた。


「でしょう!」


 意外な反応だった。

 なぜかほこらし気な表情を見せる。移動中は終始無言だったのだが、決して機嫌が悪かったわけではなかったようだ。


 彼女は鳥居の前で一礼すると、スマホのライトをつけ足元を確認しながら石畳の右はしを歩いた。私も同じようにして進む。本殿を素通りし、さらに奥まった場所にある玉垣たまがきで囲われた二股に別れている杉の木の前で足を止めた。


 スマホのライトで木の幹を照らす。


 そこで私の目に飛び込んできたものは、左右それぞれの幹に打ち付けられたわら人形だった。しかも、なぜか上下逆に並んだ状態で。気味が悪かった。現代においてもこんな呪いの儀式的なことをする人間が複数もいることを知って驚いた。


 ――でもこれが私の記憶喪失と、どう結び付くのかはまったく見当がつかなかった。

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