第5話 新婚旅行

 一平とナオは水牛車に肩を並べ揺られていた。

 握りあった手を片時も離さない二人は、新婚さんと間違えられた。

 一之介が商店街の福引で特等の旅行券を引き当てて、


「ママたち新婚旅行、行ってないんだよね」


 とプレゼントしてくれた。

 シルバーウイークで土日の休みと合わせて5日間の連休を利用して、南の島に来ている。


「一之介のおかげで、いい思いさせてもろて」

「ナオさん、子どもたちのことは口にしない約束だよ」

「あっ、つい言うてしもて」

「本当は僕が連れて来てあげるべきなんだけど」

「だめよ、あの子たち、これからお金かかるんやから」


 ナオは、アッという顔をした。


「一平さん、うちを誘導してへん」


 ナオは一平をぶつ真似をした。


 アハハハッ。


 水牛を操るお兄さんが三線を奏でながら、海を渡って行く。

 抜けるような青空に白い雲が浮かんで、透明な海がどこまでも続く。


 着いた先ではグラスボートwindrain号に乗り、床に張られたガラス窓から、サンゴや熱帯魚を満喫した。


「わあ、サンゴってこんなに色があるんやね」

 

 ピンク、ターコイズブルー、パープルの色とりどりのサンゴが出迎えてくれる。


「ねえ、一平さんはどのサンゴが好き?」 


 応える間もなく、


「ほら、見て、見て。あのブルーのお魚。あれが好きやねん」

「ナオさん、本当に海が好きなんだね」


 一平が微笑んだ。


「明日はシュノーケリングして、間近で見られるんやね。楽しみい」



 ホテルに帰ると、プライベートビーチで白いボンボンベッドに横たわり夕日が沈むのを眺めていた。

 ただそれだけのことなのに厳かな気分になった。





「いいか、田辺事件はレイちゃんに知られたらまずい。ママたちに連絡がいって、旅行を途中で切り上げてくるかもしれない。くれぐれも3人だけの秘密にするんだ」


 遼平の言葉に、一之介とルナは返事をした。


「うん、わかった」



 ところが翌日、オトが話をしたらしく、血相を変えたヨッシーが飛び出して行った。

 ヨッシーを止めなくちゃ。騒動を起こしてミオママに伝わったらおしまい。ルナたちを心配してママにメールするはず。

 ルナは渾身の演技をした。確かに階段落ちは痛かった。

 でも、おかげでヨッシーの怒りが収まった。






「タナベ君、ちょっと」

 

 教室でルナが呼びつけた。


「購買部で幻のクリームパン買って来て、苺ミルクも忘れないでね。ダッシュで行って来てよ」

 

 お金を受け取るとタナベは本当に走って行った。


「ルナちゃん、どうしたの?」


 あきこが目を丸くしている。


「学年1の秀才をパシリにして」

「フフフッ、ちょっとね、お・し・お・き、弱みを握っているんだ」

「どんな?」

「それを言ったら弱みじゃなくなるじゃん」

「何かルナちゃん怖いよ」





           【了】





🏠@windrainさん、お名前をお借りしました。ありがとうございました。

作品『風のように雨のように猫のように』


https://kakuyomu.jp/works/16817330666004842959



🏠「第5話 新婚旅行」はいつまでもラブラブな一平とナオの話をと、豆ははこさんからリクエストいただいたものです。

豆ははこさんありがとうございました。

作品『俳句『雨』~自主企画 てんとれ祭に寄せて【てんとれ祭】』


https://kakuyomu.jp/works/16817330665066409362



🏠最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。

中学生になっても変わらないルナちゃん。何しろまだメリハリのないボディしてますから。



『🏠ルナの試練』


https://kakuyomu.jp/my/works/16817330666636839538/episodes/16817330666637181389


に続きます。

よろしくお願いします。







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13🏠一之介ミラクル オカン🐷 @magarikado

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