第4話 オトの気持ち
「レイちゃん、留守の間、ありがとう。何もなかった?」
「うん、何もなかったよ。平和、平和。ご飯もあの子たち自分たちでするからって」
「へえ、ほんまに自分らで出来たんやろか」
「それより、うちのオトが」
「オトちゃんがどないしたん?」
ナオは冷蔵庫から麦茶を出した。
「あら、うちの子たち麦茶も作ってる」
ナオは目を丸くして、コップを2個並べた。
「バレエのスタジオ付きの家を紹介してもらって見に行ったの」
「うん、海外へ引っ越すからって言ってた家やね」
「まだ新しくて申し分ない感じなんやけど、オトが嫌って言うの」
レイは麦茶を一気に半分ほど飲んだ。
「それで違う家にスタジオを作ろうかと言ったら」
「言ったら」
「それも嫌と言うの、もうどうしてほしいのかわかんなくなって」
今度はナオがコップに手を伸ばした。
「ガクさんが時間をかけて、ゆっくりと話を聞きだしてくれたの」
「ああ、ガクさん粘り強いもんね」
「そしたらオト、スタジオはいらないって言うの。将来バレエを続けるかどうかわからないし、この家から引っ越したくないって」
周りが勝手に話を盛り上げ、オトの将来像を描き上げていた。
本当は牛窓への旅行も一緒に行きたかったし、ルナとご飯も食べたかった。
そうなのだ、オトはほんの小学4年生。そう思うのが普通なのだ。
「また気持ちが変わるかもしれへんし、レイちゃん焦りすぎ。レイちゃんにステージママは似合わへんよ」
ナオはダイニングテーブルから立ち上がって、キッチンへ向かった。
「晩ごはん何しようかな」
冷蔵庫を覗き込むと、ブロッコリー、ミニトマト、ゆで卵が入っていた。
これにマカロニを茹でてマヨネーズで和えたら一品出来上がり。
「あの子たち結構やってるやん」
「ああ、ルナちゃんが一つ一つスマホで調べながらやるから時間かかりすぎって、リョウ君に文句言われてた」
ママのスマホ貸してって、しょっちゅう言うから音を上げて、ルナ用に購入した。
わからないことがあれば検索して、今では手放せなくなっている。
うん、賢い使い方しているやん。
「わあ、ママお帰り。楽しかった?」
「そりゃあ、おかげさんで、めっちゃ楽しかった。あれ? ルナ足に包帯巻いて怪我したん?」
「ああ、ちょっと擦りむいただけ。ママに心配してほしくて大げさにしてたの」
「もう可愛いんやから」
とナオがルナを抱き寄せた。
「ルナ、お風呂入ってへんの? ちょっと臭う」
「ああ、今から入って来る」
そうだった。昨日は足の擦り傷に染みて嫌だなあと思って入らなかった。
その前の日は田辺事件があって、覗かれているわけでもないのに、気持ち悪くて入浴出来なかった。
お兄ちゃんたちの部屋のシャワーを借りようと思ったけど、外の廊下に出るのが億劫になってやめたのだった。
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