妖精住処巡り

雪華(せつか)

第1話 さよなら、ホワイトタウン

「シェリナ、妖精の住処巡りをしよう。」

「えっ」

「妖精の住処巡りをしよう」と言われて、戸惑いの言葉を吐き出した。そしてすぐに喜びがにじみ出てきた。戸惑いと喜びが混じり合う。

「俺たちいい歳になった。そろそろ夢を叶えないか?それとも、夢のまま終わらすか?」

「ううん、ううん。戸惑ってるの。待って。」

確かにあたしとウィオはもう16、小妖精ではなく成妖精。あたしにとって大きくて偉大な「ティオと妖精の住処巡る」夢も近づいているとは思っていた。でも…でも…。

嬉しさと戸惑いが考えをかき乱していく。

ウィオとあたしはいつも妖精の住処巡り中心だったような気がする。「妖精の住処巡りしたいね」って、「行くならここ行きたいね」って言い合った。その“妖精の住処巡り“だ。その‟妖精の住処巡り‟だよ!?


なんて心がわーわー騒いでる間、心が落ち着いてきた。この間約三秒。多分。知らないけど。

「…どうするの?」

ようやく出た言葉は曖昧だった。どういう「どうするの?」?何が?なんで?

自分でも思った。

でもウィオは普通に答えた。

「うーん、まずツリータウンに行こう。」

ウィオが画用紙を取り出し、見ながら答えた。

「それって…」

「『シェリナとウィオの妖精の住処巡り大計画表』。」

ウィオがあたしの目の前に画用紙の表紙を見せる。

綺麗な字は小さかったウィオが書いた字。その下にある奇妙な絵は小さかったあたしが描いた絵。

思わず絵に顔をしかめて「へったな絵!!」と言った。

「そうか?俺は好きだぞ。これがシェリナでこれが俺だろ?」

「え、逆じゃない?」

「え?」

「…………」「…………」

「まあいいや、どうするんだっけ?」

「あ、ああ」と思い出したように急かされたように言うと、ウィオは二つ折りになっている画用紙を開き、読み始めた。



家に帰ったらベットにうつ伏せになった。

ああ、この真っ白ともお別れかあ…。

真っ白な天井を見て言う。いや、真っ白なのは天井だけじゃない。壁も床もベットも何も。別に白が好きなわけじゃない。別に好きだけど。…じゃなくて、言いたいのはそれじゃなくて!

あたしの生まれ育った故郷は『ホワイトタウン』。

ホワイトタウンなんて名前通り、町は白。真っ白。見渡す限りの白である。

だからあたしは真っ白とちょっとの間お別れなのだ。

ちなみに、あたしはそこに住む妖精のシロノコである。

ここは妖精の住むところだからね、あたしは妖精だ。




チリリリリリ、チリリリリリリ――――カチッ

鬱陶しい目覚ましを黙らせる。

閉じそうになる瞼をなんとか押し上げる。

なんてったって、今日は待ちに待ちに待った住処巡りの日である。

起きて、ご飯食べて、着替えて、ちょっとソワソワして、時間を何度も確認して……

そろそろ出ないとだ。

バックを肩からかけて、扉を開けた。


待ち合わせ場所にはすでにウィオがいた。

「ウィオーー!!」とウィオを呼ぶと手を振ってくれた。

あたしは手を大きく振り返しながらウィオのもとに着いた。

「ウィオ。」

「よし、乗るぞ。」

そう言ってウィオは妖精用の乗り物に向かう。

この乗り物も白色…かと思いきや、実はちょっと違う。

確かにホワイトタウンがある方向は白色である。でも反対方向に行くといろんな色が出ている。

もしかしたら気づいた人もいるかもかもだけど、これはホワイトタウンから出ていって他の色を見ていく…的な意味らしい。

ウィオは乗り物の窓から外をじっと見つめていた。

私はあのほわほわとした雰囲気のホワイトタウンを思い浮かべていた。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妖精住処巡り 雪華(せつか) @hanapi-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ