そして、物語は────

「勇者様ー。今日も来ました………?」


 勇者様に関する、五つの不思議は無事に解明。私の夢である、新たな叙事詩を作るため、今日も勇者様達に旅の話を聞こうと思ったのですが……何やら殺気立っております。


「王女ちゃん」


「賢者様……これは一体?」


 聖女様と勇者様は、何やら真面目な顔で話し合っておられて、聖騎士様は鎧を磨いております。まるで、この後戦いに赴くような雰囲気を感じます。


「北の地────かつて、魔王城が存在した極寒の地で、魔王の卵が産まれたことを確認したわ」


「────え!?」


 倒した時の第二第三の魔王が~なんて言ってたセリフ、負け惜しみじゃなかったんですか!?


「ごめんなさいね、次旅に出る時は一緒に連れていくという約束だったのだけれど、少し、遅れそうだわ」


「俺達は、魔王を倒すために20年かかった」


「私達も強くなってはいるので、恐らく5年ほどで済むとは思いますが……ごめんなさい、王女ちゃん」


「ま、安心して王女ちゃんはここで待っていてくれや。魔王の卵なんて、今の俺達じゃ負ける道理なんてないんだからよ」


「………それでも、心配です」


 どうしても、暗い気持ちになってしまう。分かってます。勇者様達は何百年も生き続けている生ける伝説。死んでも死なないようなトンデモ実力集団ということは知っていますが……。


「大丈夫ですよ」


 ふわり、と優しい花の匂いに包まれる。気付けば、聖女様が抱きついていた。


「大丈夫です。私達は死にません」


「改めて約束だ王女ちゃん。この旅が終わったら、一緒に世界中を旅しよう」


「………はい!」


 そうして、勇者様達はまた世界を救う旅に出た。これから数年、下手したら10年以上会えない日々が続く。


 ………寂しいなぁ。






「ただいまー。いやーごめんね王女ちゃん!転移の魔法使えるの忘れてたわ!」


「………………………は??????」









 ────百三十年後。新たな勇者達に関する『勇者叙事詩』という絵本にしてはページ数がとんでもない量の本が出版される。


 いつもの四人とプラス一人の仲間を加えた旅の話は、大いなる反響を呼び、大ヒットした。


 その中で、王女が様々な面倒事に巻き込まれ、勇者たちと同じく色々とあって人間の限界を超えたのは、また別のお話。

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勇者パーティーと5つの不思議 結月アオバ @YuzukiAoba

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