音と光が煌きを放つ、文学の美しさがここにあります。

とにかく文章が美しい。

ピアニストを目指すゆきが音に悩んでいる時、画家の大悟の絵を見て音に対する理解度をあげるシーンがあるのですが、その表現がなんとも美しい。

地の文。音楽と絵画を、あり余る知識を惜しむことなく選別し、選び抜かれたシンプルな言葉をもって読者に伝える技術と姿勢。

文学のもつ美しさを堪能させて頂きました。

芸術という大きな括りと、美術・音楽という別の括りと、二つの括りがある中、才能ある者同士が惹かれ合い、そして高め合う大人の恋愛小説。

どれだけ推敲を重ねれば、こんな無駄のない文章になるのでしょうか。
音楽も美術も分からなくても、文章で伝わる。それを短編で書き上げる力量。芸術に対する知識量。全てが圧倒的です。

音と光で煌きを放つ、大人のための文学作品です。

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