驟雨に呻く蝋燭火

荻山洋は間もなく誕生日を迎えようとしていた。しかしなんの喜びも覚えることはなかった。今年から真剣に取り組みはじめた創作で、なんの結果を得ることもできないでいたからだ。
どれだけコンテストに応募しても、ひとつも受賞することはできない。のみならず、拍車がかかる家庭の悲劇と心身の不調は、洋に後ろ向きな感情ばかりを抱かせる。
果たして、洋の誕生日はどのような姿形を見せることになるのだろうか。

※作中に登場する人物は、それが「誰であるか」ということを特定できないように、可能な限り、実際のモデルから「パーソナリティ」「立ち場」などを乖離させています。もちろん、全員が仮名です。また、同様の理由から、具体的なエピソードのいくつかを省略しております。しかし、本作に書かれていることは、まったくの虚構ではなく、…続きを読む