第3話
《ごめん!いま忙しくて……。あとで、俺の考えをまとめた文章を送るわ!》
わたしは、命の危険を感じながら、できるだけ楽しいことを考えようとした。SNSに前向きなことを書きこんで、一心不乱に小説を書いた。
こういうときに限り、執筆の調子はよかった。無理やりにでも書けば、そうなるものなのかもしれない。
わたしは、今日書いた文字数をSNSに投稿した。どれくらいの進捗かを記録することはルーティンのようなものになっている。しかしなぜ、SNSに投稿するのだ?
舞野からのメッセージを思いだす。
《進捗を書いて褒めてもらいたいのカナ?》
《荻山のフォロワーみんなバカにしてると思うよ笑笑》
――もしかしたら、ほんとうにそうなのだろうか?
わたしは頭を振り、もう少し執筆を続けることにした。舞野のメッセージなんて気にしなくていい。
わたしは、自分の小説を読んでくれる人たちのことを考えた。連載中の小説は、絶対に完成させなければならない。ずっと読んでくれている読者の方々に、誠実でありたい。
抗うつ剤を飲んでもいい時間がきた。
ああ、疲れたな――と、呟いていた。
それは、しみじみとした口調で、まるでだれか別の存在が耳元で
どんな夢を見ていたのだろう。はっきりとは思い出すことができない。
ああ、疲れたな――と、口にしてみたとき、不眠症とともにわたしを苦しめる、あの破壊慾がうずきはじめた。
破壊慾――していないこと、思ってもいないことを、本当にしたかのように、心から思っているかのように口外したくなる、恐ろしい衝動である。
もう、どうなってもいい。そんな自棄から起こるものではないらしい。それだけは分かっている。
主治医はこの破壊慾も、睡眠不足から起こるものだと言っていた。だとするならば、早急に深い眠りを味わわなければならない。
不眠症からくる心身の疲れより、この破壊慾の方が、わたしを苦しめている。
ああ、疲れたな――という言葉が、自然と
前向きなことを考えるべきだ――そう思っても、どす黒い感情に
わたしはある小説の登場人物のひとりに、このような遺書を書かせていた。
The life is the ongoing past.
The past is one of the most a beautiful inferno.
あれから、
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