エイプリルフール

「君は愚者になった訳でもなく、愚か者になった訳でもない、ただ嘘をついたんだ」


 エイプリルフールを直訳すると4月の愚か者あたりだろうか。タロットのThe Foolは愚者を表すため、愚者といっても間違いではないだろう。しかし、愚者であれ、愚か者であれど嘘をつくという意味はない。タロットの愚者は自由の象徴であり、愚か者は愚かな者という意味だが愚かには嘘をつくという定義はない。馬鹿げているというのが最も意味としては近いのだろうが、それでも嘘をつく行為とイコールでは結べないだろう。嘘をつく行為は愚かだとすれば文脈は通るかもしれないが、企業が広告のために必死に嘘を創り出している現状は、馬鹿げているとも、愚かな行為だとも言えないだろう。


 愚か者は存在する。このエイプリルフールにおいても。それは騙される奴だ。愚かという言葉には考えが足りないさまという意味もある。愚かの意味を考えれば愚かが最も適するのは騙す人間ではなく、騙されている人間だとわかるだろう。

「悪いのは騙す奴じゃない、騙される奴なんだ。騙されている奴は愚かだ。」


 エイプリルフールの起源みたいなのは正確には分かってないらしい。けれど、明確にエイプリルフールは騙されている人間は愚かだと言い切ってしまっている。エイプリルフールをただのイベントだと思うのは自由だ。だが、その中で、僕という人間一人くらいはこの日の嘘を糾弾し、この日の持つ意味を糾弾したっていいだろう。世間の嘘を冷ややかな目で見たっていいだろう。


「君は愚者になった訳でもなく、愚か者になった訳でもない、ただ嘘をついたんだ」


 その嘘が善意でろうが、悪意であろうが、広告の意図であろうが僕はこういわなければならない。今も騙されている、愚か者のためにも。


 


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超常探偵  黛 美影 @midorineko

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