第41話 エピローグ

 カイナは憂鬱そうな表情で執務室の机の上に突っ伏していた。


「カイナ様、どうなされました?」


 紅茶を入れながら、ロマンスグレーの老執事モスが尋ねる。


「今回の件。赤字だ。大赤字だ。くそっ! 俺様の血肉になるはずの領民の血税がっ! なぜあれだけ身を削ったのに赤字なんだ?」


「バルツァー卿の商会からたんまりと請求したのでは?」


「もちろんだ! だが、払えないし、バルツァーは死んだしで、支払い拒否というか、従業員が全員逃げやがった。まぁ、当然だよな。俺様でもそうする。で、現在ある奴隷商は全部奪ったが、それでも全然足りん!! こうなったら、領民から補填させるか……。今こそ延期にしていた増税をすべきでは?」


「カイナ様、それは悪手では? せっかく一部の領民には良き領主と思われるようになられてきたのですから」


「そうだよな。俺様が領民なら、後ろからボウガンをぶっ放す案件だ。ふむ、それなら新たな税を作ろう!! 金持ちから取るならいいだろう! 魔獣税とかどうだ? 魔獣を飼っていたなら払う税だ。今回の騒動でシルバーバインで手懐けた魔獣を飼う貴族がそれなりに出ただろうし、なんだったら、シルバーバインの件をちらつかせれば税以外にも公に出来ない裏金も入りそうだ!! そうなれば俺様の懐にダイレクトだからな! うん!! これはいいぞ!! さっそくモス、お触れを出せ!!」


 完全に私利私欲に塗れた税。

 カイナはまだまだイナゴ領主の名を欲しいままに、金を搾り取っていく。

 そして、その考えにも何か、思慮深い考えがあるのだと、勘違いしながら領主に付き従う執事モス。


 彼らの勘違い領地運営はこれからも続く。


「そういえば、カイナ様、とある新興宗教から招待状が届いておりますが、いかがなさいますか?」


「新興宗教? そんな胡散臭いものに参加したら、いろんな意味で危なそうだな。だが、金の匂いはプンプンする! モス、その新興宗教に参加と伝えておけ! それから、調査を抜かるなよ!!」


 カイナは全てを喰らいつくさん勢いでモスへと命令をした。


「魔獣税も新興宗教もどっちも財源にしてやる!!」


 結果、ますます領民からはイナゴ領主と揶揄されることになるのだが、モスはその命令にいつものように恭しく頭を下げて一言。


「かしこまりました」


 完

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重税イナゴ領主、ちょっと慎重になったら老執事からの評価が爆上がりに!? タカナシ @takanashi30

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