会社の中の秘密

@penta1223

会社の中の秘密

市内中心部の商業ビルの一階に、株式会社"日暮"は位置していた。そのビルは古く、近代的な建物が立ち並ぶ中で異様に昔のままを保っていた。


青木は新入社員として、その日暮に入社した。初めてビルに足を踏み入れると、古いエレベーターが目を引いた。そのエレベーターのボタンには8つの数字が並んでいるが、実際にはビルは7階建てだった。


オリエンテーションの際、人事の佐々木氏は「何も心配することはない。ただ一つ、夜間にエレベーターを使用する際、絶対に8階のボタンを押してはいけない」と明確に言及した。青木はその指示を奇妙に思ったが、特に深く考えず、その日を終えた。


数週間が過ぎ、彼は日暮の働き方や文化に慣れてきた。しかし、仲間たちの間で囁かれる噂を耳にした。それは、8階のボタンにまつわる噂だった。ある日、廊下で彼の先輩、水野が秘密のように囁いた。「実は、以前このビルで起きた事件が、8階のボタンに関係しているんだ」


夜、青木は仕事が遅くなり、他の社員が帰った後も会社に残っていた。彼は疲れ果て、エレベーターで地下の駐車場へ行くためにボタンを押した。エレベーターが開くと、中には誰もいなかった。しかし、奥の壁には小さな赤い手形が付いていた。その手形はまるで、何かを訴えるかのように8のボタンを指していた。


彼の好奇心は募り、エレベーターのボタンに手が伸びてしまった。そして、8のボタンを押してしまった。


エレベーターはゆっくりと動き始め、7階を過ぎ、8階へと向かっていった。その間、彼は不安と興奮で心がざわついていた。


ドアが開くと、彼の目の前には真っ暗な廊下が広がっていた。しかし、その先には一筋の光が見えていた。光の先には部屋があり、その部屋のドアが半開きだった。


彼は静かにその部屋に近づき、覗き込むと、中には会社の社員たちの写真が並んでいた。しかしその写真たちは、彼らの普段見かける姿とは違い、顔に恐怖を浮かべていた。


部屋の隅には古い椅子があり、その上には血の付いた縄が置かれていた。その椅子の横には、手記のようなものが置かれていた。


彼は手記を手に取り、読み始めると、それは数十年前にこのビルで働いていた社員が、同僚たちに恐ろしい目に遭ったことが記されていた。


彼は恐ろしさで震えながら、その部屋を後にした。そしてエレベーターに乗り、1階に向かった。エレベーターのドアが開くと、佐々木氏が彼を待っていた。


「青木くん、8階に行ったのか?」彼の表情は冷たかった。


青木は驚きながら、言葉を失った。佐々木氏は彼の肩を握り、囁いた。


「これから、君もあの部屋の一員になるんだ」


彼の意味するところが分からず、青木は恐怖で固まった。そして、その場で気を失ってしまった。


次に彼が目を覚ました時、彼は自分が会社の地下の一室に閉じ込められていることに気づいた。そして、その部屋の隅には、同じ血の付いた縄が置かれていた。


地下の部屋の灯りは暗く、薄汚れた床には乾いた血痕がいくつか見えた。青木は何が起こっているのかを理解しようと必死に考えたが、頭は混乱し、肌には冷たい汗が滲んでいた。


しばらくして、扉がゆっくり開き、佐々木氏が現れた。彼の背後には、水野や他の社員たちがずらりと並んでいた。


「青木くん、ここは会社の特別な部屋だ。この部屋には、会社の歴史と秘密が詰まっている」と佐々木氏は冷静に語り始めた。


「何十年も前、このビルには別の企業が入っていた。彼らは、独自のリーダーシップを追求し、一部の社員を"特別な教育"のためにここに閉じ込めていた。それが、この部屋の役割だった」


青木は怯えながら佐々木氏を見つめた。彼の口から語られる真実は、想像を超えるものだった。


「そして、ある日、ここで行われていた"教育"が行き過ぎて、一人の社員が亡くなってしまった。それ以降、この部屋は封鎖され、8階のボタンも使用禁止となった。しかし、その後も、不可解な出来事が続いていた」


水野が前に出てきて、青木の顔を覗き込んだ。「私たちは、その歴史と秘密を守るために、選ばれた者たちだ。そして、青木君も、その一員に選ばれた」


佐々木氏が手に持っていた小さな黒い箱を青木に差し出した。その中には、小さな銀のペンダントが入っていた。


「これは、私たちの証。これを持っている者だけが、8階の真実を知ることができる」


青木は驚きと恐怖で声も出せずにいた。しかし、彼はこの状況から逃れるための方法を見つける必要があった。


彼は、ペンダントを首にかけると、身体に温かさが伝わってきた。そして、彼の頭の中には、過去の記憶や知識が次々と流れ込んできた。


佐々木氏が微笑む中、青木はその場に立ち尽くしていた。


「さあ、青木くん、新しい人生が始まるよ」と水野が優しく囁いた。


青木はペンダントの力を信じ、この秘密の世界からの脱出を図ることを決意した。そして、彼は、会社の真実を知るため、8階の秘密を探る旅に出ることを決意した。


青木は、ペンダントの持つ特別な力を使い、会社の建物内を探索し始めた。彼は、8階の秘密の部屋に再び足を踏み入れることにした。ペンダントの温かさを感じながら、エレベーターに乗り込んだ。


8階の部屋には、先日見た社員の写真や古い椅子、血の付いた縄などがそのまま置かれていた。青木は部屋の隅にある書類を発見し、それを読み始めた。それは、数十年前の会社の秘密の研究や実験、そして"特別な教育"に関する詳細が記されていた。


青木が書類を読んでいる最中、背後から足音が聞こえてきた。彼は慌てて隠れる場所を探したが、すぐに佐々木氏と水野が部屋に入ってきた。


「やはりここに来ると思っていたよ、青木くん」と佐々木氏が言った。


青木は立ち上がり、佐々木氏に問いかけた。「なぜ私をこんな目に遭わせるのですか?」


佐々木氏はゆっくりと微笑んで、「私たちは、会社の真実を知る者たち。そして、新しいメンバーを迎える際、過去の秘密を守るための儀式を行っているんだ」と語った。


水野は青木の方を向いて、「私たちの仲間になることで、真の力を手に入れることができる。だから、これからも一緒に、この秘密を守りながら、会社を盛り上げていこう」と言った。


青木はペンダントを握りしめ、決意の表情で佐々木氏と水野を見つめた。「私は、この会社の歴史や秘密を守りたいとは思いません。しかし、私はここでの経験を元に、真の力を手に入れ、外の世界で活躍したいと思っています」


佐々木氏は考え込み、しばらくの沈黙の後、青木に言った。「分かった、君の意志を尊重する。しかし、君がこの会社の秘密を外部に漏らすことがないよう、約束してもらいたい」


青木は深く頷き、「私はこの会社の秘密を外部には絶対に話しません」と誓った。


その後、青木は会社を退職し、外の世界で新しいキャリアをスタートさせた。しかし、彼の心の中には、8階の部屋とその秘密、そしてペンダントの持つ特別な力が深く刻まれていた。彼は、その経験を胸に、真の力を手にして、新しい人生を歩んでいくことを決意した。

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