参照プロット(第三話②)

シーン17

場所:校庭

人物:優、自衛官

展開:

ゆうは被災者の避難場所になっている学校で、一人の自衛官と話す。絶望的な状況でも、できることをやり続ける意志に、ゆうも戦う決意を再確認する。廃墟はいきょが増えた街並みと、普通の人たちの状況、ゆうが守るべき対象は個人ではなく街、社会、国を含めた世界であることを描写する。

台詞:

「温かい食事を、お持ちしました。すぐに準備しますので、他の皆さまにも伝えてください」

「あの」


「大変、ですよね……戦争とか、ミサイルなら楽ってわけでも、ないでしょうけど」


「あんな怪物、わけがわからないですよね。政治家も自衛隊も、どうしろ、って話じゃないですか。こんなに、急に……めちゃくちゃになって……今までの普通が、なくなって」


「次は、もしかしたら、みんな……」

「そうですね、大変です」


「航空自衛隊は哨戒機しょうかいきの、海上自衛隊は艦船かんせんの、陸上自衛隊は各地の施設の広域レーダーを、それぞれ運用しております。ですが、残念ながらあの敵性体てきせいたい……怪物の、過去二回の攻撃を、防衛することができませんでした。申しわけありません」

「いえ、そんな! あやまられるようなことじゃ……」

「おっしゃる通り、次にどうなるか、自分にもまったくわかりません。ニュースで言っているように、防衛出動か災害出動か、そこから議論している状態です」


「怪獣映画みたいですよね。本当は、御安心ごあんしんください、とか、お任せください、とか、言わなくちゃいけないんです。だから、やっぱり申しわけありません。本音ほんねが出ちゃいました」


「水道や電気が止まっているところ、ありませんか?」

「え……?」

「ガスや石油は、この状況では危険ですので、冷えるようなら追加の毛布を支給します。仮設トイレや区画くかくパーテーションも、もっと必要なものがあれば、いつでも教えてください」

「あ、ええと……」

「インフラが機能して、生産活動が継続していて、物流ぶつりゅう維持いじされています。この食べ物だって、自分たちが、動物や野菜を育てたわけじゃありません」


「訓練でやったことありますが、食料を完全自給するのって、種類も量も不足するのに手間てまばっかりかかるんですよ。こうして美味おいしいカレーを皆さんにお届けできるのは、この街の外、この国のいろんな場所、もちろん他の国でも大勢の人が働いて、仕事をしているからです」

「この街の外、ですか……」

「ですから、自分も働きます。大変でも、わけがわからなくても、仕事をします。まず、そうですね……カレー、温かいうちに召し上がってください。元気が出ますよ」


シーン18

場所:校庭(夕暮れ)

人物:優、唯、敵性群体(数十体)

展開:

ゆうの前にゆいが現れて、問いかける。人間全部よりも自分一人を選んでくれるか、というゆいの言葉に、もちろん、と答えるゆうの、言葉ではなく心をゆいが受け取る。直後に数十体もの敵性群体てきせいぐんたいが現れ、一体がゆいを連れて月に昇っていく。アクションのない『破』のクライマックス。設定は調味料、メインはゆい葛藤かっとうと決別、ゆうの決意と結果の反転。メインがメインになっているか、注意して描写する。

台詞:

「あ、ゆうくんがいた」

ゆいちゃん……どうしたの?」

「多分、ゆうくんと同じじゃないかな」


「家にいるより、今まで普通にやってたこと、行ってたところ……そういうのが、まだ少し、欠片かけらでも残ってるんじゃないか……って、確認したかったんだよ」


「ねえ、ゆうくん。もし……もしも、だよ?」


「あたしが、世界中のみんなに嫌われて、仲間はずれにされちゃっても……ゆうくんは、嫌わないでいてくれる?」

「え……?」

「他のみんなじゃなくて、あたし一人を、選んでくれるかな……?」

「も、もちろんっ!」


「俺は、その……こ、こんな勢いで言っちゃうのも、なんだけど……」


「俺は、ゆいちゃんが」

うそつき」


ゆうくんは、そんなに弱くないよ。ちゃんと、みんなを守ってくれる……やさしくて、カッコいいヒーローだよ」


「そんなゆうくんだから……あたし……」


「ねえ、あたしの手、見てよ。自分で言っちゃうけど、ピッチピチだよ! 乙女おとめたしなみ、UVケアも産毛対策うぶげたいさくもバッチリ!」

「え? あ、うん……? き、きれい……だね」

「いい? いっくよー」


「水素と炭素の素粒子そりゅうしをちょっといじって、別の種類の原子核に置換変性ちかんへんせいしたの。あ、放射線はもらしてないから、大丈夫だよ! 骨は鉱物質こうぶつしつ剛性ごうせいを持たせて、筋肉は金属質きんぞくしつ複合繊維状ふくごうせんいじょうで、電気で伸縮しんしゅくさせてる。お肌はやっぱり、珪素化合物シリコーンみたいな高分子結合で、樹脂質じゅししつを優先したんだ」

「ゆ……ゆい、ちゃん……?」

「うん。ゆいちゃんだよ」


「多分、ずーっと昔。宇宙のどこかから、石みたいな、あたしたちの結晶単子けっしょうたんしが地球にきたんだよ。それが海の中から、植物とか動物を媒介ばいかいして、増殖して土壌どじょうにも広がって。で、十年ちょっと前、川辺かわべで遊んでた女の子が、転んで手のひらに怪我しちゃってさ」


「侵食、感染したら、もうこっちのもんだけど、あんまり急ぐと死んじゃうから、置換変性ちかんへんせいあせらずゆっくり丁寧ていねいに、が基本なの。今のは末端組織まったんそしきだし、ゆうくんだから、特別に大サービス! 脳や脊髄せきずいは、複雑なのに最初にやんなきゃだから、一年くらいかかったなあ」


「元の女の子は残ってないけど、家族も他のみんなも、あたしを浅久間あさくまゆいって認識してるから、あたしが浅久間あさくまゆいだよ。あ、御山ミャーちゃんや凡河内ボンカワくん、ゆうくんと友達になったのは、始めからあたしだから安心してね!」


「本当は、さ。こんな面倒くさいことしないで、同じ無機質の地殻ちかく変性へんせいさせて、惑星わくせいごともらっちゃうのが普通だったんだけど……ちょっとがんばって、普通じゃないところまで、きたんだ。なんでだかわかる?」

「……なん、で……」

「にぶいなあ、ゆうくんは。ゆうくんに……神さまに、いたかったんだよ」


「みんなにも、もう声をかけてるんだ。すぐに宇宙全体から、集まってきてくれるよ。この惑星わくせいの、生命体も死体も、海も地殻ちかく土壌どじょうも、全部もらっちゃう。だから、その前に……デートしたいな」

「待って、ゆいちゃん……っ!」

「もっちろーん! おめかしして、お宇宙そらで待ってるよ! 体液たいえきなんてないけど、きてくれなかったら、泣いちゃうふりくらいできるかも!」

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宇宙が堕ちてくる日、遠く彼方の君に、逢いに行く 司之々 @shi-nono

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