祭礼の日

 フェルデの身がカムルランギの山へとかえり、百十二年が経った春の渡翼わたりの日。奥院おくいんに初めてシャラークからの使者が降り立った。


 時の大僧正だいそうじょうはシャラークの言葉で使者と挨拶を交わし、かの国の文字でつづられたシシトの辞書や習俗書を手渡したという。二つの国の民は長い年月をかけて交流を重ね、やがて緩やかにシシトの大地になじんでいった。

 シシトとシャラークが繋がる渡翼わたりの日は二つの国の祝祭日と定められ、その中でも春の渡翼わたりの日のことを特別に『祭礼の日』と呼ぶようになった。


 祭礼の日、シシトの国の子どもたちは鈴を付けた衣装で町を歩き、人々に飴を配って回る風習がある。

 これは、シシト国の歴史上に唯一存在した翼を持った大僧正と、その友であった僧との逸話にちなんだものだと後世に伝えられている。


―了―

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祭礼の日 上杉きくの @cruniwve

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