閑話 

うちのお嬢様

気がつけば☆が100を超えました。皆様ありがとうございます。これは、限定として近況ノートに挙げていたSSになります。


語り役はソフィリア付きの侍女のアンです。時期的には学園に入学する前の話になります。

楽しんで頂ければ嬉しいです。







 私がソフィリア様付きの侍女になったのは、幼い頃に高熱を出してお嬢様が寝込まれたからだ。一気に変わった環境で、知恵熱がでたのではとお医者様が仰ったのを受けて、直ぐ側で面倒をみるような人間がいた方がよいだろう、と旦那様が判断されたからだ。


それが私になったのは、メイドの中で一番若かったのが私だったから。そうは言ってもメイドって2人しか居なかったんだけどね。

それ以来、ずっとお付きのままになっている。


 奥様は、しばらくすると旦那様の仕事の手伝いなどをするようになられたので、そういうのもあったのかもしれない。


そういった経緯があったからソフィリア様付きの侍女として私はいる。でも、男爵家ではもともとお付きの侍女なんていう発想は無かったから、上のお嬢様にはお付きの侍女はいない。


 うちのお嬢様は、余所のお嬢様とは少し、いや大分違うのではないだろうか。本人は気がついてないが、義姉にあたるアルディシア様が如何に優れているかを嬉しそうに語っている。


一緒に勉強をするようになってから、会話の中でお義姉様の話題が増えている。

家庭教師が絶賛しているとか、課題で自分には到底解けなかった問題をすらすら解いているとか。目をキラッキラッさせて。


そこにやっかみとかもなく、純粋に凄いなって感心している様子で。普通、姉妹で片方が優れているのならば、比べられる方は僻んだりすると思うんだけれど、そんなのがない。で、自分はドコまで出来るのかとチャレンジしてしまうのだ。

そうやっているのが、楽しそうだ。変わった方だ。


幼い頃の1歳の差は大きいと思う。それを食らいついていく根性があるので、家庭教師の先生方も一緒に勉強するのを許しているという部分があるんじゃないかしら。


本人が気がついているのかどうか知らないけど、お嬢様は義姉様について憧憬の念を抱いているんじゃないかと思っている。


だから、アルディシア様が義妹を避けているのは、本当は気圧されているのではないかと私は勘ぐっている。真っ直ぐに見つめられて、向かってこられては普通の子供ならばちょっと引くんじゃないだろうか。


ただあの方も少し変わっているというか、子供らしくない。何事も淡々と熟している。ここの家のお嬢様二人を見ていると10歳ぐらいの女の子のイメージが狂う。


家ではそんな事は口にしないが、心の中では思っている。彼女たち、二人揃っておかしくないか ?


ある日、お嬢様が

「今までとは違ったお菓子が食べたい」

と料理人のカルロスのところへ突っ込んでいった。本で見たと主張して、自分に作らせろとカルロスを困らせた。一体、どこの本 ?


それで、一緒に作るという妥協点を見いだして作ったのがオマンジュウとオセンベイだった。

最初はそんなに美味しくないお菓子だったが、カルロスが改良し、男爵家定番のお菓子となった。


ちょっと感心したのが、

「こんなのが食べたいと言ったのは私だけど、仕上げたのはカルロスなんだから、カルロスのお菓子よ。でも、私にはちょっと多めに頂戴ね」

と言ったお嬢様にだ。殆どカルロスが作ったようなものとはいえ、言い出したのはお嬢様だから、自分の手柄だって言うと思っていたんだけれど。


でも、オセンベイの味については未だに対立している。どっちもあればいいんじゃないのかな、って私は思うんだけれどね。

負けられない戦いがここにはある、的な感じで相容れないのよねえ。どっちでも美味しければ良いと思うんだけど。


塩っぱいオセンベイがあると、他のお菓子も進むのよね。塩っぱくて、甘くて、塩っぱくて、甘くて、止まらなくなるのよね。



お嬢様が街に行っている間、お留守番で色々と頂いているのだけれど、お菓子が幾らでも食べられるの。この頃は体重計に乗るのは控えている。

いいの、美味しいから。


それに文句を言いながら、お嬢様と私のためにカルロスは塩っぱいオセンベイも作ってくれる。いい男だね、君は。


 うちのお嬢様は、突飛な事をやったりするけれど、一緒に居て楽しいお嬢様だ。お嬢様がお嫁に行く時は、どこか良いところのお家で、私も一緒に連れて行ってくれるといいなあ。


でも、あのお嬢様がお嫁に行くっていうのが失礼だけれど、イメージできないのはなんでだろう。

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王子様なんていらない 凰 百花 @ootori-momo

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