第6話 10月2日

箱からは温もりを感じる気がした。


箱にカッターナイフを突き刺した瞬間に、強い痛みが祐介の胸に走り、実際に刃物で刺されたかのような傷が体の中にできていた。


となると、どんなに信じられなくても、この箱は祐介の体の一部なのだと言える。


箱を見つめている祐介顔には、自分の置かれている状況に理解が追いつかず、困惑した表情を浮かべていた。


そのうち、薬の影響なのか強い眠気に襲われた彼は、箱を棚に戻して眠りについた。


朝、目が覚めると箱に1枚の紙切れが置かれていた。


『___の大切なものです』


はじめに見た時と似た文面であるが、誰のものなのか、宛名部分が空白で書いていなかった。

また、紙切れは箱に張り付き、剥がすことができない。


ふと、紙切れの空白部分に『彼の』と思いつきで書いてみた。

そして、軽くではあるが、箱の隅を壁に打ち付けてみた。


すると、壁に箱が当たるのと同じタイミングで、祐介の向かいのベットで横になっていた男性から、苦痛を訴える声があがった。








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