第3話 9月29日

仕事から帰宅した祐介が、最初に見たのは今朝よりも大きくなった箱であった。


家を出る時には、片手に収まるほどの大きさしかなかったはずだ。しかし、いまでは両手で持つほどになっている。

手に持った感覚では、朝よりも重くなっているように思えた。しかも、どことなく温もりが伝わってくる気がする。


なぜ箱は大きくなったのか、中に何が入っているのか、不気味に思った彼はその箱を燃えるゴミへと捨てることにした。

ちょうど今夜は、彼の住まう地域でゴミの回収日でもあり、都合がよかったと言える。


ゴミ捨て場にその箱を投げ捨てた時、何かが壊れる音がした。それは、まるでガラスが割れる音に似ていたが、確かめる気にもならず彼はそのまま家へと戻った。


家に戻る途中に、祐介は箱についてか書かれた、謎の紙切れを拾っていた事を思い出した。

部屋に戻ってその紙切れを見てみると、驚いたことに文面が変わっていた。


『貴方の大切なものだと教えたはずです。元には戻りませんが、次こそは大切にしてください』


その紙切れを読み終えると、玄関の方で物音がした。慌てて見に行くと、そこには捨てたはずの箱があった。





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