むちゃくちゃいい意味で劇薬のごとき作品

幼い少年が主人公となれば、ほのぼのしたジュブナイルを誰もが予想するだろう
しかし、この作品はプロローグから唖然とするほど真っ正直に裏切ってくれるのだ

初っ端出てくるこのセリフ
>だって、本当ほんとーの落ちこぼれは……誰にも『にんしき』されないものだから
これに度肝を抜かれた

この少年は只者ではない
この感慨はそろそろ酸いも甘いも噛み分けようという大人のものだ
世界の残酷さを十分に思い知ってボロボロになりながらも、まだ少年の心を持ち続けようとする、ナイーブに振り切った表現者のものだ

これはカクヨムに溢れ返っている異世界転生もの、チートで俺TUEEEEでハーレムな作品群への強烈なアンチテーゼではないのか
そう思ったところからこの作品が俄然面白くなった

社畜のおっさんが異世界転生したら本当はこうだろう、という小気味よいほどのリアリティ
そして異世界転生もののお綺麗なご都合主義にうんざりしている読者には、これがものすごく響くのだ、痺れるほど共感できる

ある人にとっては、覚醒するための劇薬になるかもしれない、今のリアルに牙を突き立ててくる超作品である

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