本編
第1話『緊急出動、ガバメンジャー!』
──東京都千代田区。首相官邸地下内閣情報集約センター。
日本国の指令センターともいうべきこの危機管理センター。暗く広いこの部屋では外務省、警察、防衛省、経済産業省、総務省などから出向する官僚がパソコンを叩き、ヘッドセットで会話する。
全ては国民の営み、衣食住、日々の暮らしを守るために。
そこへサングラスをかけたいかつい警察官僚が慌ただしく駆け込んできた。
「危機管理監!」
警察官僚が内政における危機管理の責任者に耳元で囁く。
「なに! リニア123号がトレインジャックされて暴走、東京駅に向かっているだと!?」
訓練された警察官僚たちは動揺もせず、衛星中継と各地のカメラをディスプレイに表示させる。
リニア中央新幹線が名古屋駅を無視して限界速度ギリギリで火花を軌道に散らしながら駆け抜けているではないか。
「数分前、国際テロ集団アバンギャルドから犯行声明が出されました。リニア運行管理システムにハッキングされています」
「警察も自衛隊も消防もJNRも即応が困難だ」
時速500キロで走る暴走列車が東京駅に突っ込もうとしている!!
「秋津内閣総理大臣、荒垣内閣官房長官にただちに報告!」
プルルル! と内線で内閣総理大臣とのホットラインが鳴る。危機管理監は受話器を取る。
「畏まりました総理」
危機管理監は受話器を置いてから、威儀を正し立ち上がった。
「特定事案対策基本法に基づき、現時点を以て内閣総理大臣が本事案を特定事案に指定! 行政代執行特設専従対策班を投入する!」
「了解──」
レッド
ブルー
グリーン
ホワイト
ブラック
「──を、現地への斥候として投入します」
彼らの履歴書が次々とディスプレイに表示される。
20代の年齢の割に高すぎる階級を持つ彼らこそ、重大事案の際に現地に斥候として投入され、初期活動を行う専従対策班だ。
「しかし、専対は信用できるのですか?」
人は彼らを
《 行政戦隊ガバメンジャー ──行政代執行特設専従対策班── 》
勇ましいサイレンが鳴り響き、パトランプが巨大メカの四隅に光る。
はしご車をモチーフにした巨大ビークルが猛スピードでリニア中央新幹線123号を追跡する。タイヤは採掘現場の巨大ダンプほどもあり、それが東名高速を爆進する。
本作は特撮的なノリもあるので実際に走れるか否かは気にしてはならない。
そのビークルこそが、ガバレッド赤羽穂村が操るレッドファイアーだ。
「いよいよ俺たち行政専対の初お披露だぜ!」とレッド。
そのビークルをパトカーをモチーフにしたこれまた巨大ビークルのブルーパトローラーがサイレンを鳴らしながら警察車両として先導する。ハンドルを握るはブルーの
「もっと冷静になれ、レッド」
「ブルーこそ熱くなれよ。危機管理監の息子なんだろ?」
「それをいうな」
後ろからは大砲を勇ましく掲げた装輪装甲車型のグリーンストライカーが進撃する。
「赤羽消防監、青島警視監、任務達成に集中してください」とグリーンこと
そして最後にホワイトアンビュランスが救急車両として随行する。
ホワイトアンビュランスの荷台後部扉が開き、タラップが道路に降りてくる。
「遅くなりました」とホワイトが救急車を運転しながら背後からアプローチ。
ビークルのコアとなる救急車がランデブーし、ホワイトの運転でホワイトアンビュランスに格納される。
4体合体のこの車列がパトランプを光らせ、東名高速を爆走し、リニア中央新幹線とランデブーする!
「これより、救出作戦を開始するぞ」
残って車列を操るブラックが宣言した。
* *
レッドファイアーのはしごが旋回し、リニアに向けられる。はしごの先のゴンドラにはレッド、ブルー、グリーン、ホワイトが乗り、リニアへの移乗を試みる。
グリーンが手榴弾をダクトにぶちこみ、爆破!
「な、何者だ!」
覆面を被ったテロリストが狼狽える。
「レッド!」
「ブルー!」
「グリーン!」
「ホワイト!」
「「我ら、行政専対、ガバメンジャー!!」」
客車の後方で演出みたいに火柱が上がった。
「お前たち、やれ!」
「はっ!」
敵がマシンガンの銃弾を浴びせかけてくるが、即座にフォーメーションを組み換え、ブルーが機動隊から借りた盾で防御陣形を敷く。
チュイン、チュイン、と弾丸が弾かれる。
「前進! 前進! 前進!」
盾の陰からグリーンがライフルで狙撃。
レッドが後方に回り、客車の火を消し止めた。
ホワイトは敵味方関係なくトリアージを実施。乗客は軽傷者で、敵も急所を外して撃ってある。
その時、現場指揮官のブラックから入電した。ガバメンジャーはBluetoothイヤホンのようなもので通話に応答する。
『現場はどうだ』
「ちょっとテロリストを片付けるのに手間取ってます」
ガバメンジャーは2号車にまで迫っていた。
中間リーダーたるブラック、
『そうか、こちらでJNRにコンタクトし、行政代執行の言質が取れた。各所への根回しは任せろ、現場は頼むぞ』
「諸々了解です。で、リニアを止めるには?」
『既に運行管理システムは政府側で掌握しているはずだが』
そこへ消火を終えたレッドが戻ってきた。
「奴ら車両内部の非常電源でリニアを動かしてるんじゃないか?」
『なるほど。ならば君たちの任務はひとつ。運転室に突入し、安全に運行を停止させろ』
「承りました、万一の際は専対ロボを動かしてゴールキーパーをお願いします」
『了解した』
通話は切られた。
「ブルー、いよいよだな」
「ああ、行政代執行を行う!」
「「了解!」」
グリーンが防御陣形を解いて立ち上がり、バズーカを運転室の扉へ叩き込む!
ブルーが銃をテロリストに突きつけた!
「鉄道営業法違反および銃刀法違反、あまたの容疑で、逮捕する!」
「はん! ダメだね! 僕を逮捕してもこの列車は止まらないよ!」
「どういうことだ?」
テロリストは自作のプログラムでリニア車体で非常電源で発電、さらに回生システムで走るエネルギーで発電し、しばらくは走り続けられるようにしたのだという。
「もうすぐ東京駅じゃないか!時間がない!」
『心配するな、専対ロボで止める』
運転室の前方にはレッドファイアー、ブルーパトローラー、グリーンストライカー、ホワイトアンビュランスが合体した専対ロボがリニアの前方の軌道内をタイヤ走行で駆けていく。
そしてリニアが追いつき、専対ロボが上半身のみを180度回転し後方へ。両手でリニアの舳先を受け止める。下半身は前を向いたまま身体を捻った格好で絶妙なさじ加減でブレーキをかける。
リニアはようやく止まった。
レッド、ブルー、グリーン、ホワイトがグータッチ。
ホワイトアンビュランスが専対ロボからパージされ、臨時の夜戦病院となり、所轄の救急車の現地拠点となる。
そしてガバメンジャーがそれぞれの所属組織に指示を始めた。
「トリアージと応急処置は済ませてあるわ」とホワイト。
「被疑者の救急搬送には警察官を同行させてくれ」とブルーがホワイトの無線に割り込む。
「ちょっと、それはやめて。人命が最優先よ」
「同感だ、ブルーは人命を最優先してほしいな」
「ふん! 俺はとりあえず避難交通誘導の指揮を取る」
レッドがブルーの肩に手を置くと、ブルーは鼻を鳴らし手を振り払った。
権限争いで一悶着あったり?みたいな。
そのための現場調整が合議制のガバメンジャーの仕事でもあるのだが。
行政代執行特設専従対策班、通称ガバメンジャー。
国家権力の威信にかけて、最強の戦隊が起動した!
行政戦隊ガバメンジャー 松コンテンツ製作委員会 @toyasan_japan
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