第8話
「お疲れ様」
煙、人の悲鳴、サイレン――惨状と化した歩道を見下ろして、僕は言った。
ふわり、ふわりと浮かんできた、一つの丸い光をそっとキャッチする。
慰撫する様に形を確かめると、口を開いた。
一息に光を飲み込むと、上唇を舌先で舐める。
「ごちそうさま」
この味わい。さすが、三年ものの魂だ。
「素敵な余生だったみたいで、僕も嬉しいよ」
僕たちは、未練ある魂を、戻してあげることができる。
「けれど、言ったんだけどな。『魂はあのころのままだ』って」
やっぱり、わかってなかったみたいだった。そんな味がする。
体の年齢は戻っても、魂の年齢は変わらない。
戻る前の寿命が三年なら、体が「戻った」ところで、三年で死ぬのだ。
「とっても頑張ってくれてたから、こんな結末しかなかったけど……」
僕はくるり、旋回すると、天に向かった。
次の食事が待ってる。
「おいしかったよ。君の魂」
――空は高く高く、澄んでいた。人の影は遠くかき消えるほどに。
ハッピーライフ 小槻みしろ/白崎ぼたん @tsuki_towa
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