第7話

 それから……私は、あの頃とは、別の道を歩み出した。

 もう何も知らない道だ。でも、だからこそ、健康にはいっそう気をつかった。

 自分の許容量をちゃんとはかって、その中で一生懸命やった。

 不思議な事で、そうすると、信頼されだした。友達もできなくていいやと思っていたら、友達ができ始めた。

 ちゃんと、気持ちを伝える様になったからかもしれない。

 

「間に合え!」


 願いむなしく、信号に引っかかった。


「ああ……遅刻かな……」


 今、私は大学の二年生になる。

 サークル活動に、学業に、バイトに……忙しく、充実した日々を送っている。もう、自分の許容量を、わかっているから、色んな事に挑戦できた。

 風が吹く。初夏の風……戻ってから、もうすぐ三年になるんだ。

 歩道は、信号待ちの、学生たちでいっぱいだった。

 相手を思いやることは、怯える事じゃなかったんだと、最近思う。

 あの頃、本当は、私はずっとずっと、怒っていた。

 家族に、部活に、真帆に……自分を優遇してくれない、何かに、いつも怒っていた。


(行動もしなかったのに……ううん)

(あの時、私は、私なりに一生懸命だったよね)


「戻って」、頑張り出してから、あの頃の自分が恥ずかしくて仕方ない時もあった。

 けれど、今は――あの時の私を、抱きしめてあげられる。

 戻ってよかった。本当に……

 私も、誰かを助けてあげられる人になりたい。

 だから、絶対、将来は――

 

 激しい走行音とつんざくような、ブレーキの音が、あたりに響いた。

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