港町の外れにある廃墟の館にしのびこんだ少年は青い眼をした老紳士と逢う。老紳士はその廃墟を「今は別のところに暮らしているが、ここが私の家だ」といい、お茶会を催してくれる。
老紳士はその廃墟で一枚の絵を描き続けていた。
彼はいう。
「あの絵が完成すれば、夢が叶う」
……
読み終えたとき、想わず感嘆の息をつきました。
家族から懸念されながらも星に願いをかけるように廃墟に通い続けた老紳士の、いまはなき妻への愛。目蓋を降ろせば、読者の眼裏にも彼の故郷の風景が浮かんできます。それはひとえに著者様の暖かみのある筆致による魔法だとおもいます。
多くは語りません。
ぜひとも最後まで読んで、老紳士の夢がかなったのかどうか、確かめてください。
かならず、素敵な読了感が得られることでしょう。