更新待ちを悦楽に思う物語

 創作の世界では様々なジャンルが存在しています。
 特にファンタジーは、“空想や想像力によって生み出された物語や世界観”と換言されるだけあって、この分野で人の創造に果ては無いのでしょう。
 ただ、親和性というものは存在し、時代の求める空気感を読み解いた作品が万人受けするヒットコンテンツに昇華するのだと思います。

 異世界、迷宮、時間遡行、転生、悪役令嬢、ざまあ、スローライフ。
 流行している様々なジャンルも、人の求めと共に育まれてきた歴史があります。

 ただ、昨今のアニメを見ると、流行りのジャンルという戦略は理解できますが、アニメ化に至るまでの時間差によって、個人的に食傷を感じる作品が多くなっているのも事実。
「このジャンルを供給しておけばニーズは満たせるんでしょ?」 というメディアミックス、二次創作界隈の意図も分からなくもありませんが、それに追従して、投稿サイトのような一次創作の舞台でも、似たような設定、どこかで見た構成、ありきたりなセリフが横行するのは、数年前から変わらないように思えます。

“右へ倣え”は日本人の美徳と共に、独創性の萌芽には少々厳しい環境に思えます。

 その中でも、ご自身の“創造力”を発揮し続ける作家さんは大勢います。
 自身の独創が次代のジャンルを生み出す! とばかりに、孤高の道を歩き続けています。

 本作「祓いの王」もその一つ。
 流行りのジャンルの長所に“お約束”や“予定調和”があるとするならば、本作にその印象は程遠い。
「不遇な少年が宿運を努力によって克服しやがて最強の退魔師に至る物語」となるであろう予測は立つにせよ、毎話、数行後の展開がまるで読めない。
 この作者様の引き出しの罪深さというか奥深さ、闇の深さのような設定の底なし沼にズブズブと引きずりこまれるのです。
 
 別の作品でも感じた、思いつかない「敵」「戦い方」「能力」「装備」「仲間」「設定」は本作でも健在です。
 そして物語の骨子。
 どうすればこの創造の境地に至れるのか感嘆を覚えつつ、今回もまたひたすらに文字を追い求めるのです。

 我々は、作者様の独創性の追求と、楽しめる物語を創造するというその崇高な行動に、読むという行為でしか応援は出来ません。
 ただ、“新しい作風”を求める多くの読者に響いている作品だとするならば、ひょっとしたら新たなジャンルが生まれる機会に触れているのかもしれません。

 いずれにせよ、世間の評価はともかく、個人的に更新を心待ちにする作品に出会えたことが嬉しいって話なんです。