鮮血姫~今宵、鮮血を流すのは貴方です~

篠原りあ

第1話 降多アラタ


「降多、HRが終わり次第、進路ついて話がある。職員室の私の机まで来て欲しい。勿論剣道部顧問の先生には伝えてあるからよろしくな。」


「わかりました。何か必要なものはありますか?」




「特にないが、進路希望届とメモ帳くらいあれば十分だな」


「わかりました。内容は進路希望届についてですよね」




「そうだが、希望はある程度進路は決めているんだよな?」


「そうですね。詳しくはHR後に話しましょう」






そう言って2年B組の担任である重信先生は教室を出た。


僕は、準高学歴と呼ばれる有名国立大学に進学を考えている。学力はそれに準ずる学力を持っている上、僕が在籍する学校から高学歴の大学進学はザラにいるため、珍しいものではないハズだ。


それに受験した模試の全ての合格期待値はAランクであり、合格ボーダー内に位置しているため、今の実力をキープしていきたい。




HRを終え、仲の良いクラスメイトに挨拶を告げた俺は教室の前扉を開けて何か一歩を進んだ。


そこには、屍山の頂上に直剣を突き刺した漆黒風の紅髪の杜撰な杜撰ずさんな恰好をした人影が見えた。








刹那、視界の両翼は暗幕を下した。生理現象や万有引力でもなく、箝口令を敷かれた役人のように。


生き屍の四股を切り落とした雄の陰部を無造作に貪り、鮮血を啜る雌がいた。




豊満且つ華奢な肉付をした雌は、血生臭く、吐瀉物と牛乳を拭いた雑巾の香りがした。


雌が放つ、雄が刺激と熱に弱く、億個の生命の源である白濁の発射を唆らせる不埒で妖美な無色透明の生理活性物質を分泌させること以上に香ばしい雌だ。




「誰だ、両瞳を瞑る鮮度の落ちた魚の如き雄よ、鮮血姫であるワタシに挑む気か。」


「っ、っ、ぉ、ぉ、ぉ」




何故異界の雌言葉がわかるのだろうか。僕自身不明だが、視界の左下に不思議なエフェクトが見えた。




【精霊の呪い:精霊言語】




これが何かはわからない。言語と書いてあるのでなんとなくの想像は浮かぶ。


浮かばせなければ楽園行きだ。せいぜい五メートル級くらいにしてくれ。所長。




無職で転生もしないし、二刀流でゲームクリアには導かない。MMOに取り残された骸骨ってわけでもない。なのにこのエフェクトってオタクが読んでる美少女が表紙に書かれた○○な件 的な?




雌の声は血を啜り、人喰後にも関わらず、透き通った雌声をしていた。


声帯を切られた奴のように声を発することが出来なかった。ただ、聞き取りはできた。




緊張が、驚きが、声帯がないとかでは無いのはわかる。多分出せそうな気はする。直感EX的な? ただ口を動かしても声帯を震わせることが出来ない。この気に手話術でも覚えていれば良いと思った。


喋れないだけでこれほど苦痛だとは。単純に話せない。声が出ない。三途の川は見えない。




まるで何者かによって声を発することを禁じられているように。






「ロリ好き変態のヴィクーニャの使いか?あいつらきしぇ目で嫌いなんだわ。あいつらワタシの乳貪るように視姦しやがって、尊き処女だぞこちとら。って違ぇか」




この女、非貫通か。非貫通か。膜あるのね。破りたい一心は僕の下着を突き破りそうな勢いある海綿体の鮮血。十六歳思春期性欲爆盛ボクでした。アセアセ。




「その目は聖術に染まってねぇな。さては、奇術をかけるとかいうなんちゃらオカルト集団の下っ端偵察集団か?」




僕は否定行為とわかるように首を横に幾度も強く振り、否定した。


すると雌は胡坐を欠きながら瀕死の雄死体を投げ捨て、屍山から直剣を握り取り、積り散らかす屍を蹴り上げ、飛ぶようにこちらに向かってきた。




「てめぇ、何者だ? って、喋れねぇのか」




僕は首を縦に2回強く首を振った。その際に雌は血濡れた麻衣の服を脱ぎ取り、裏に返した。




「ほら、これに名を書け。鮮度の落ちた魚の如き雄よ」




と言い、僕の左指を掴み目の前にいる雌の口まで持っていき、左上の八重歯で僕の指の第一関節あたりの指腹を切った。口臭を感じさせるこの距離だが、それ以前に強烈な汚臭が酷かった。


耐えぬことの出来ない痛みではなかったため、唇を噛みしめ耐えた。




降多アラタ と書いたが雌は顔を顰めたしかめた不思議を顔に表した顔をしていた。


返り血と土で顔が汚れて、吐瀉したくなる汚臭を放つ雌だが、如何せん美形の女だと僕の脳が認識している。物騒な女だが少なくとも雌ではない。女だと思う。




下着姿になった女の胸元には円形の胸のふくらみを感じる。はぁ、スポブラタイプの処女か。経験慣れしているグラマーでファビュラスな清楚お姉さま系が毎日のネタなんだけど仕方ない。




うん、仕方ない。僕とハジメテを分かち合おうね。


マイナスかけるマイナスの術していくらでも治癒してあげるからね。






「てめぇはこことは異界のやつか?それとも大和の男か?」


「あぁ、喋れねぇのダルぃな。ったくこれ嫌いなんだけどなぁ。後処理任せるからなドクトル」




血濡れた女の背後からモーニングスーツを着た初老が物音立てず現れた。


すると無言でどこからもなく虚空からクリーム色より古ぼけた再生紙のような紙を取り出した。




処女叱り血濡れた女は術を唱え始めた。






【千血之意志:ブラッドシェアリング】




〈おい聞こえるか、鮮度の落ちた魚の如き雄って、まぁ男か〉


〈ぃ、ぃ、い、き、聞こえす〉


〈おう、喋れてるな。ちゃんと成功したみたいだ〉




僕は口を動かさず、頭の中で考えた言葉が目の前にいる血濡れた女に伝わったみたいだ。


なにか違和感ある感じではあるが、別に痛みや刺激があるわけではない。


現在の位置・状況・帰れる方法を探るために、女に下出にでるとするか。




女如きに下出にでたからには後でわからせなくちゃいけねぇなぁ。


どちらが生物的頂点なのかを。どちらが生命の種を持っているのかを。






〈お前はどこから来た?名と職を名乗れ〉


〈僕は降多アラタと言います。苗字が降多で、名がアラタです。〉


〈聞かねぇ名だなぁ。苗字があるということは大和のやつか。それにどこから来た〉


〈ニホンという国なんですが、わかりますか?〉


〈わからん知らん。殺すぞオス〉


〈ところで貴方の名前とここがどこか聞いてませんでした〉


〈七使徒が一人・第四使徒の鮮血姫ブラッドクイーンだ。ここはワタシの管轄区である混沌区だ〉




七使徒・第四使徒・鮮血姫ブラッドクイーン・混沌区 は?


言ってる意味がわからない。この場所の教養すらない僕になにを言い出すんだこの女は。


天皇陛下的な人に任命でもされたのか?四番目に強いのか?四番目に任命されたのか?


なんだよ鮮血姫って。肉解凍したら赤ピンク色の液出てくるドリップとかいうやつか?


それともヒト型決戦兵器に乗る感じ? 




正直、僕の頭はいっぱいだ。


テスト前日にテスト範囲広げますね~と爽やかに伝えに来る地理学の教師かよ。


中学のあのバーコード頭覚えとけよ。降多アラタ・オルタで復讐するからな。






〈ごめんなさい。理解しようと努力したのですが、わかりませんでした。〉


〈オス、糧と成り朽ちるか奴隷として糧を管理するか。選べ〉

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鮮血姫~今宵、鮮血を流すのは貴方です~ 篠原りあ @ivy_felisya

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