第15話 三次元に帰ろう!!!
「早く準備して行こう」と言われたものの、服に食料、回復グッズの準備をするのに一日ほどかかるので、前日の疲れを取り除くために、三人は休みをもらった。山奥の軍人センターには、三階まであり、二階は成人の軍人の休憩、待機所になっていて、三人は三階の八畳の部屋で休んでいた。そこには、テレビ、エアコン、ラジオが設置されていて、机の上にお菓子がおかれてあった。
「俺たち、これからどうなるんだろう…」
「たぶん、このまま戦いに連れて行かれるべ。一応、俺たちも戦力なんだから…」
義志斗は、メリケンサックを指にはめたり外したりしてカチャカチャと音を立てていた。休めと言われたが、明日戦いに行くのかと思うだけで憂鬱になってくる。
「こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ。ほら、もーっと、恋愛小説の主人公!みたいな感じだと思っていたんだけどなあ。これじゃ、現実の方が良かったんじゃないかな。現実で、非モテのまま、つまらない人生だなあ、とか思いつつもあの何もなかった日の方が幸せだったんじゃないかな……。俺たちが周りの幸せに気付けなかっただけなんじゃないか……。」
「今頃、両親は僕たちのことを探しているんでしょうね。なんか、、、悪いことをした気分だな…。自分のことを不幸だ不幸だ思っていたけど、実は幸せだったんだよ。俺たち。なあ、今からでも遅くねえよ、現実に帰らないか?」
進向が、そう提案しても、二人は何も返さない。二人は泣いていたのだ。やっぱり家が恋しい。お家に帰りたい……。
「な、なんとか、現実にっ、、変える方法を、、考えてみません?このままここに残るのは、俺、嫌なんです……。」
進向は、瞳に涙を浮かべながら語った。高生と義志斗も同じ気持ちであった。
「だ、だよな、俺たち、やっぱり、現実世界に、、、帰ろう……。無理だよ。もう、、、やって行きたくない。ここで、生きるのは、疲れた。二次元の苦悩を知ったよ……。もう、三次元でいいや…。」
高生が泣きながらそう言うと、部屋のドアが叩かれる音がした。
「みなさん、いらっしゃいますかー?」
「そ、その声は!!」
高生がドアを開けると、そこにはスズコが立っていた。
「良かったです。三人が無事で。」
スズコは、部屋に入って三人の顔をじーっと見て、高揚した声でそう言った。そんな上機嫌のスズコに進向が歩み寄った。
「す、スズコさん、、、俺たち、三次元に、、、帰りたいんです…。どうにかできますか??」
スズコは、きょとんとしていたが、三人の泣き顔を見て、また笑った。
「なんだ、、、そんなことですか。出来ますよ、、、三次元に帰ること」
「本当ですか?!?!?!それって、どうしたらいいんでしょう???」
「みなさんがここに来た目的を達成することです。みなさんの条件は、「推しと結婚すること」でしたよね。誰かに理由を話して結婚した後に、三次元に帰ることは出来ますが、それ以外の方法はありませんね……。」
「推しじゃなくてもいいんですか?」
「「推し」という定義は意外と曖昧です。なので、誰かと一度結婚してしまえば、三次元に帰ることは可能でしょう。最低な方法かと思われるかもしれませんが、みなさんが三次元に帰れば、みなさんが二次元に来たということはなかったことになります。二次元で会ったキャラたちは、みなさんの存在を忘れます。そして、みなさんも二次元で起きたことの記憶を忘れてしまうでしょう。もちろん、私もみなさんのことを忘れるのですが」
仮の結婚をして三次元に帰れば、結婚をしたことも、俺たちが来たことも、記憶としてなくなってしまうのなら、その方がいいのかもしれない。
「みなさん、どうですか?それでも、やりますか?結婚相手なら私が紹介してあげますから、じっくりとお考えくださいね」
「僕は帰る!!」
真っ先に進向が手を上げた。そして、義志斗も同じように手を上げた。それを見た高生も手をあげた。
「これで、決まりだな!」
三人は顔を見合わせて、歯を見せて笑った。ははは、二次元、楽しかったなあ…。
「ふふふ、かしこまりました。それでは、スズコ、最後のお仕事といきましょうか。とりあえず、今日はお眠り下さい。明日の朝にみなさんの仮の結婚相手をお連れいたしますので」
そうして、スズコは部屋を出ていった。
これで安心して眠れる……。高生たちはそう思って眠りについた。
「こんにちは」から始まる異次元ライフ〜陰キャたちの大逆転物語〜 @WataameMelon
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