第14話 一喝

 ブーン…バタバタバタバタ。高生たちは空の上からコミュの様子を見渡した。

 「ひええ、たくさん、人が死んでる…」

 「アームに殺られたのか……」

 ミーラはその光景を眺めながら、自身の顔を曇らせていた。

 「私が責任を取らないと。私が、軍隊長としての私が。しっかりとしていなかったから、私のせいでこんなに被害者を出すことになってしまった…。なんとしてでも、生きてる人たちは助けないと」

 そんなミーラを進向は励ました。

 「そんな、隊長は悪くありません。どう考えてもコミュを荒らしに来た外道どものせいに決まっているじゃないですか。そんなに落ち込まないで下さい」

 「ありがとう…進向君…」

 そんな二人を横目に高生は考えていた。

「誰がこんなことをしたのか?」と。

 まず、コミュよりも外に別の何かがあったということからだ。神様曰く、この世界は二次元…。それに従うと、その外の何かも二次元の世界の一環かもしれない。でも、スズコさんの言うことを信じると、コミュ内にしか二次元キャラは存在しないことになる…。どういうことなんだ???


 考えれば考えるほど正体が分からなくなっていく。しかし、アームによってコミュの人達が連れ去られたことは事実だ。それを受け止めて、自分たちが助けに行くしかない。

 「着きました。軍人センターです」

 ヘリの操縦士は、そう言って、ヘリのドアを開けた。軍人センターは、真っ白で作られた箱のような建物だった。軍人が、作戦を組むのにふさわしい隠れ家のような造りだった。高生たち三人とミーラは、ヘリを降り、建物の前に立った。

 手動式のドアを開けると、赤いカーペットが引かれ、奥のホールへと繋がっているようだった。高生たちは、そのカーペットの上を通って、建物の中を進んだ。


 カーペットに従って進んでいくと、右に角を曲がったところで、両開きの扉が空いていて、中のホールへの入口のようだった。中には椅子が並んでいて、台の上で誰かが立っているのが見えた。


 ホール内に入ると、ボロボロの服を着た軍人が椅子に座り、前のステージの上で誰か二人が口論をしているところを聞いていた。一人は若い青年で、長身イケメンで、体つきもがっちりとしているのが、軍服の上からでも分かる人だった。対するは、ぽっちゃり体型で、小さいおじさん。という感じで、腹がぽっこりとでている中年だった。


 「だから、今すぐ、コミュの外へ助けに行くんですよ!」

 「ばかな!今すぐにコミュの外に出たら、またアームに潰されるに決まってる!」

 「ヘリを使って住民を助け出せばよいではありませんか?」

 「ヘリ?馬鹿なことを言っているんじゃない!君も見ただろ?ヘリに乗っていたら、あのアームがまた襲ってきた時に逃げ道が無いじゃないか!みんな揃って木っ端微塵になっちまうぞ!」

 話を聞く限り、住民を外に助けに行くと主張する青年とコミュに残るべきと考える中年のおじさんが口論をしているようだった。

 「ありえない。あなた、住民を見殺しにするつもりですか?」

 「見殺しなんかではない!変なことをしてまた襲ってきたらどうするんだ!次はただじゃいかないかもしれないんだぞ!」

 お互いがどちらも考えを引きそうに無く、埒が明かない。

 「もういいです。私の軍だけでも助けに行きますからね。あなたの軍はコミュに残っていていいですから!」

 「勝手にしろ!もう知らん!」

 青年は、ステージの後ろに立て掛けてあった旗を取って、上に掲げ自分たちの軍へ呼びかけた。

 「諸君。今すぐに行くぞ!コミュの外に連れて行かれた我が住民達を助けに行くぞ!」

 おーーー!という歓声が上がり、青年がステージから降りようとすると、高生の横にいたミーラがステージに向かって叫んだ。

 「今戻った」

 ホールにいる軍人全員がミーラの方を振り向いた。高生もミーラの顔を見たが、その顔には、怒りの念が溢れ出していた。

 「私の意見も無しに、なぜ勝手に外に行くなど判断しているのだ!!!いいか、軍隊長は私だ!!!私の判断を聞かぬなど、つまらん!!!」

 そう一喝すると、ホール内は静まり返っていた。怖え……。そして、ミーラはステージの上に上がり、全員に声掛けをした。

 「助けに行くぞ!コミュの外へ!ヘリは使わない!自らの足で、親からもらったその足で、仲間たちを助けに行くぞ!」

 おーーー!!!と先程よりも何倍も大きな声で軍人が叫んだ。ミーラさん…やばいっすね…。

 そして、喝を入れた後、青年とおじさんの方を睨んだ。

 「ヘリはこちらで手配する。勝手なことはせずに歩いて行くぞ。分かったか?」

 二人は俯いたまま黙っている。

 「返事は?」

 「は、はいぃぃ……」

 二人は頭を下げてミーラに言った。やべえ、本当に怒らせたらアカン人や…。


 ミーラはステージから、飛び降りた後、高生たちのところに笑顔で戻ってきた。

 「さあ、君たち、話聞いてたよね♡さっさと準備して行こーね♡」

 「は、はぃぃぃぃ」

 怖え……。

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