第10話 11/03 4:21
ことが 終わって ホテルのベッドの上で アタシは 気だるい
おっさんは 起き上がってベッドサイドに 腰かけてる。
おっさんの広い背中に アタシのつけた爪痕が いくつも残ってる。
腰が砕けたかと思うくらい アタシのこと攻め立てたクセに おっさんは けっこうタフ。
アタシも まだまだだな……そんなことを ぼぅっと考える。
……いや。
もう いいのか…?
アタシに 身体を鍛えなきゃいけねえ理由は もう無ぇんだ…。
微かに 煙草の匂いがする。
見ると おっさんが 煙草に火を点けてた。
……また 煙草なんて 吸いやがって…。
小言が口から出そうになるけど 考え直して おっさんの左隣に座る。
「おじさん。一本もらっていいっすか?」
「……松嶋さん タバコ吸うの?」
おっさんが 少し驚いたような声で こっちを向く。
「……いや。初めてっス。けど もう 身体鍛える理由も無いんで…」
おっさんは 少しタメ息を
「僕は 松嶋さんに 続けて欲しいんだけどな…」
「――気持ちは 嬉しッスけど アタシは もう……」
煙草を 1本抜きながら そう答えると おっさんは 黙って ライターを差し出した。
たぶん 軽い煙草なんだろう。
初めての煙草だったけど
お互い黙って 煙草を
ん?
煙草を持つ おっさんの左手に指輪が無ぇ…。
おっさん 気を使うタイプだし アタシに気兼ねして 外してくれてたのか?
優しさから 逆に痛みを感じる。
やっぱ 迷惑かけたく無ぇ。
ホテル出たら 街を出よう。
流石に 今日中ってワケには いかねぇだろうけど。
もう 絶対 顔 会わせねぇで済む 遠くの街へ行く…。
「……おじさん 左手の指輪 忘れずに付けてくださいね。失くしでもしたら それこそ
そう言うと もう一度 煙草を咥える。
煙草の煙を肺に吸い込む。
やっぱり 噎せたりはしねぇ。
ほんの少しだけ 思考に靄がかかったみてぇになって 心地いい。
おっさんの隣に いられる心地いい時間も 残り僅か…。
右肩に感じる おっさんの温もりが
おっさんは しばらく黙ってたあと ポツリと 話し始めた。
「……先週 松嶋さん トライアウト受けに行ってただろ? あの日 僕は 裁判所に いたんだ。……その なんだ… 夏に 初めて会った日があっただろう? 僕が ひどく酔っぱらってて 松嶋さんに 介抱してもらった日。覚えてるかい? ……あの日 実は 妻から 別れ話を 切り出されてね…。……まあ もう何年も家庭内別居状態だったし 時間の問題だったんだが…。でも やっぱり 色々考えてしまって 酒に逃げてたときに 松嶋さんに会ったんだ。……それで なんだ その… この3ヶ月 色々とゴタゴタしてたんだが 毎晩 松嶋さんと身体動かせて 楽しかったし そのおかげで なんとか乗り切れた…。ありがとう。その なんだ…話が 上手く まとまら無いんだが……結局 何が言いたいかって言うと その例のトライアウトの日に 協議離婚が成立したんだ。だから 僕には もう指輪は無い…」
そう言うと おっさんは アタシの目を見つめてくる。
アタシも おっさんの目を見つめ返す。
ブラックアウト。
……そして アタシの煙草の灰が 床に落ちた。
~~ F i n ~~
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最後まで 読んでいただきありがとうございました。
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本作は 現在連載中の『紺野さんとあきちゃん』のスピンアウトになっています。
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よろしくお願いします。
煙草の灰が落ちて僕はキミに恋をする 金星タヌキ @VenusRacoon
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