届かない伝わらない叶わない、遠すぎて今はもう、君はいないよ

狂わせるのは月光か才能、それとも恋愛か。
無力さを思い知らされるほど、辛いものはない。

発表当時、ベートヴェンは付き合っていた伯爵令嬢のジュリエッタに贈っている。
静かで神秘的な第一楽章では、惹かれあっているにもかかわらず、想いを伝えられないもどかしさ、気持ちをさらけ出せない恋愛初期のよう。
可憐で可愛らしくも、刹那的な第二楽章では、束の間の現実逃避。
恋愛において最も楽しい時期、あっという間に終わってしまう。
情熱的で激しめの第三楽章は、恋愛のドロドロした感情をすべてさらけ出し、ぶつかったり求めあったりしている。
曲を贈った直後、ジュリエッタは別の爵位を持った作曲家と婚約、結婚している。
そんな『月光』をモチーフにして、本作も展開されていると考える。

誰しも絶望を抱え経験している。
でも、その乗り換え方は、それぞれ違う。
彼女は彼女の乗り越え方を選んだように、彼は彼の乗り越え方をすればいい。

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