学園の天使が彼女になったら距離の詰め方がエグい件

まっしろき

第1話

俺は何かの音で目を覚ました。

身体が動かない……。


そして目の前には息を荒くした裸の美少女が俺の上に跨っている。


俺の通っている学園では「天使」と呼ばれており、その呼び名に相応しい圧倒的美少女。

人当たりがよく、優しく、誰にでも愛される、中身も含めて、まさしく天使。


なんでこんなことになったんだ……。


始まりは今朝に遡る……。


~今朝~


何でもない普通の日、俺はいつも通り学園に向かっていた。

そして、学園に到着し、靴を脱いだ時、俺の下駄箱から謎の白い紙のようなものがはみ出ていた。


「ま、まさかっ」

俺はある期待を持って下駄箱を開けると、そこには手紙が入っており、


----------------------------------------

甘瀬あませ ゆう君へ


大事なお話があります。

今日の放課後、屋上に来てください。

----------------------------------------



こここれはっ、告白の呼び出しというやつか!?

甘瀬 勇。

俺の名前だ、間違いない。

彼女いない歴=年齢の俺はテンションがぶち上がった。


そしてあっという間に放課後になった。

よく一緒に帰っている友人の帰宅の誘いを断り、屋上へ向かう。

そして、期待で胸を膨らませながら俺は屋上のドアを開けた。


「あっ、来てくれたんだね!」

そこには俺の知っている美少女が立っていた。


神内じんない そら……?」

「なんでフルネーム?うん、同じクラスの神内 天だよ!甘瀬君、来てくれてありがとう!」

人懐っこい笑顔でとてとてと俺に近づいてくる。

思わず俺も笑顔になりそうだ。


しかし、なぜ神内がここにいるんだ?

と、俺は一気に不安になってしまった。


神内 天。

男子だけでなく、女子からも人気のあるクラスどころか学園内でもカーストトップの生徒だ。

天という名前もあって、学園の天使とも呼ばれている。

当然男子からは告白もされまくっているらしいが、全部断っているという話しか聞かない。

そんな話を知っているからこそ、ここに神内がいることに不安を感じていた。


そんなことを考えていると、神内は少し顔を赤くして、深呼吸をしている。

「あのね、甘瀬君、早速だけどいいかな……?」

「あ、あぁ、話っていうのは……?」

「うん、あのね。……私、神内 天は……甘瀬君のことが好きです!だから、付き合ってください!」

と告白されたのだった。


俺は今起きたことが現実か分からない。

学園の天使と呼ばれている生徒が何の特長もない俺に告白をしてきた。

そして特別関わりがあるわけでもない。

本当にたまに話すクラスメイト、ってくらいだ。


「ダメ……かな?」

神内の上目遣いが反則級に可愛すぎる。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。いくつか聞かせて欲しい」

「う、うん、いいよ」

神内は少し不安気な表情になっている。


正直なところ、嘘告なのではないか?と思っていた。

しかし、表情を見る限りではそんな雰囲気は微塵も感じない。

これが演技だったら恐ろしいが、その線は薄そうに思える。


「そのさ、俺のどこが好きになったんだ?そこまで関りがなかったと思うんだが……」

「えっ」

神内は少し困ったような表情になった。


「き、気持ち悪いって言わない?」

「えっ」

なんだそりゃ。


「そんなこと言わないよ」

「じゃ、じゃあ……」

と深呼吸すると、

「まずは性格かな学園の男子ってみんな私のことを下心丸出しで見てくるのに特に胸でも甘瀬君からはそういう目線を感じなかった、落ち着きがあるっていうのかな。それにうちのクラスだと私に告白してきてないの甘瀬君だけだし、みんな私の事天使なんて呼んでくるけど甘瀬君は私を特別扱いしないから凄く嬉しかった。大人っぽくて素敵。次に身体かなこの前の体育の着替えの時に見ちゃったんだけど結構鍛えてるんだね?腹筋が割れてるのが見えてドキドキしちゃった。体力テストの持久走でもクラスで三番目くらいだったけど余裕があるみたいだったように見えたから、もしかして運動部の子に遠慮してたのかな?そういうところもほんとちゅき。あ、もちろん顔も凄く好みなの、私の友達は同じクラスのサッカー部の部長……名前忘れたけど、それが学園一モテるって言ってるけど私は全然好きじゃない甘瀬君の少し強面だけど優しそうな雰囲気がある顔の方が何万倍も、あ、0に何をかけても0だね、あははっ。そんな人なんかよりも甘瀬君の顔が遥かに好みなの。あ、最初に興味を持ったのはおち」

「す、ストップストップ!」

頬を上気させながら、とんでもない勢いで俺に対する好きを語ってきたのだ。


神内はやってしまった、という顔になる。

「ごめんね、気持ち悪いよね、死ぬね」

「待て待て」

学園の天使が壊れてしまった。


自分自身特に何の変哲もない生徒だと分かっていたから、普通に接していただけだったのだが、こんなに好かれていたとは思わなかった。

先ほどまで感じていた不安は消え去り、晴れやかな気持ちだ。

疑っていた自分を殴りたい。


「その……どう……かな?」

「お、俺で良ければ、喜んで」

「ほ、ほほほ本当!?取り消さないよね!?」

「取り消さないよ」

「やったああああああ!」

神内は屋上を軽やかに跳ね回っている。

こう見ると本当に天使みたいだ……。


俺は内心で決意を固めていた。

こんな俺を好いてくていたんだ、俺も神内のことをよく知って好きになろう、と。


その後、そのまま制服デートをすることに。

苗字ではなく、下の名前で呼び合おうということにもなった。


カフェに行って、駅前のショッピングモールに行って……そして、スーパーに行ってなぜか俺の家に来ていた。


「お邪魔します」

「い、いらっしゃい」

あれ、彼女を家に呼ぶの早すぎじゃね?

俺のイメージだともうちょっとゆっくり仲良くなって家に呼んで……みたいな感じだったんだが。


「おー、一人暮らしなのに綺麗にしてるんだね。男の子の一人暮らしってもっと汚れてるイメージあったけど」

「たまに親が帰ってくるから、その時にまとめて掃除してくれるし」

「でも、継続的に掃除してるのが分かるよ、流石はゆー君だね」

正直、そういう目的じゃないことは分かっていても緊張していて話があまり頭に入ってこない。


「それじゃあ、キッチン借りるね」

「あ、調味料とか食器とかの場所は……」

天が夕ご飯を作ってくれることになったのだ。

両親が出張で不在、普段はあまり自炊していないという話をしたら、夕ご飯作ってあげたい、とお願いをされてしまった。

初めての彼女のお願いを無下にするのも、と思いOKを出してしまったが……早まったかなぁ。


「うん、うん、大体の場所は分かったよ。ありがと。ゆー君は出来るまで待っててね」

「ありがとう、天。俺は洗濯とかしてるから、何か聞きたいことがあったら声をかけてくれ」

「はーい。よーし、腕によりをかけて作るねっ!」


…………

……


「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした。ゆー君、満足してもらえたかな?」

「あぁ、すごく美味かったよ!本当に毎日食べたいくらいだ!ありがとう、天」

天の作ってくれた肉じゃがは死ぬほど美味しかった。

どうやら、天のお母さんは料理学校の先生をしているらしい。

そりゃあ料理上手なわけだ。


「時間ももう遅いし、食器は俺が洗うから、家まで送っていくよ」

もう時間は20時を過ぎていた。

流石にこれ以上は長居させられない。


「うん、お願い……!?」

ビカッ!!!とカーテンを閉めた窓が白く光った。

そしてすぐに、ゴロゴロゴロ……と音が鳴った。


「雷か!?夕方まで晴れてたのに」

「あ、そういえば今日の夜から天気が大幅に崩れるって朝の天気予報で言ってたかも……」

「ごめん、天。俺が料理作らせたばっかりに……」

「私が押しかけたからだよ。ごめんね、ゆー君。その、落ち着くまでここに居てもいいかな?」

「もちろん、何時くらいに止むか見てみる」


俺はテレビを点け、天気予報をやっていそうなチャンネルを探す。

『今夜の天気ですが、○○市は明日の6時頃まで雷雨となるでしょう。朝には晴れる見込みです。運休の情報があるとのことですので、詳しくは……』


「どうしよう?」

「確か天の家って電車使わないと厳しいよな。あとは タクシーとか……」

「ここからタクシーだと結構お金かかっちゃうよ。そ……その、もしもゆー君さえ良ければ……泊めて貰えないかな?お風呂と寝る所を貸してもらえれば大丈夫だから。それに今日って金曜日だから」

し、仕方ないよな……こんな天気の中帰らせる訳にもいかない。


「分かった、色々と不便をかけるかもしれないけど泊まっていってくれ」

「ありがとう、ゆー君!あっ、お母さんも泊まって良いよって言っててくれたよ!」

「ず、随分早いな。じゃあ、ご飯作ってもらってる時に風呂沸かしておいたから、先に風呂入ってきていいよ。タオルと寝巻きは置いておくよ」

「うん、それならお言葉に甘えて頂いちゃおうかな。ありがとゆー君♪」

天は洗面所へと向かっていく。


俺は自分の部屋に一旦向かいあまり使用していない大きめの服を探す。

というか……泊める!?冷静に考えたらヤバくないか?付き合った当日に家に呼ぶだけじゃなく、泊めることになるなんて。いやいや不可抗力、そう、不可抗力だ。

帰れないんだ仕方ない。まず俺が手を出さなければ間違いなんて起きない。あれ、でも彼女なら間違いが起きても問題ない?何言ってんだ落ち着け落ち着け落ち着け。


よ、よし、良い感じの服があった。

これならサイズ的にも大丈夫なはず、ズボンもゴムだし。


俺は洗面所に向かい、見えやすいところに服を置き、風呂場でシャワーを浴びている天にドア越しに声をかける。

「服と寝間着は置いておくよー」

『ありがとー』


俺はささっと洗面所から離れる。

なんか下着っぽいものが置かれていたけど何も見ていない。


皿洗いして、頭を落ち着けよう。


…………

……


皿を洗い終わり、ソファに座りながらスマホをいじっていると、

「ふぅ、上がったよー、ゆー君」

と後ろから声がかかった。


「ああ、それじゃ、俺も入ってこようかな……!?」

バスタオルを首にかけ、俺が出した寝間着に着替えた天が目に入り、思わず息を吞む。

風呂上がりの女子ってこんなにエロいのか?

寝間着のボタンも第三ボタンからつけていて、豊満な胸の谷間がしっかりと見えていた。

しかも、なんか胸の先がピンと立って……いかんいかん、煩悩が!


すぐに目を逸らし、

「てっ、適当にくつろいで待っててくれ。冷蔵庫にある飲み物適当に飲んでていいから」

とさっさとリビングから出ようとすると再び声をかけられる。


「あ、ゆー君。お風呂のお湯飲んじゃだめだよ?」

「流石に飲まないわっ、シャワーだけにするから!」

「えー、彼氏の性癖なら受け入れるのにー」

「頼むから変なことを言わないでくれ……」

「冗談だよー」

「あのな……」


なんか天使のイメージが壊れそうだ。

イメージだと清楚、って感じだったのに、しっかり話してみると意外と冗談を言ってくる小悪魔っぽいというか。

これが素なのだろうか。


そんなことを思いながら俺はシャワーを浴びに風呂場へ向かったのだった。


…………

……


シャワーを浴びてさっぱりした。

神に誓って風呂の湯は飲んでいない。

普段は残り湯は洗濯物に使うのだが、謎の理性が働きお湯は抜いておいた。


「あ、おかえりー」

リビングに戻ると天が手をひらひらと振ってきた。

一挙手一投足が可愛いな、本当に……。

「お茶いただいてるけど、ゆー君の分も入れてあるよー」

「ありがとう、もらうよ」

気も利くなぁ。


風呂上がりで喉が渇いていた俺は、天が用意してくれたお茶を一口で飲み干した。

天はそんな俺のことをニコニコと眺めていた。

「こういうのって新婚みたいだね」

「ぶふっ!」

危な、飲み切っててよかった。

無意識なのか分からないが、突然こういうドキッとさせてくることを言われると心臓に悪い。


「なんてね、ふふっ、ちょっと浮かれちゃってるのかも。恋人の家でお泊まりなんて初めてだから……」

少し照れたような表情になる天。


付き合い始めてまだ半日も経っていないのに、こんな些細なやり取りだけで天の魅力が伝わってくる。

冗談も言える、純粋にかわいい、気も利く。

さっきは小悪魔だなんていったが、やっぱり天使だ。


俺はちょろいのかもしれない。

いくら好きになっていこうと意識しているからと言って、今までは高嶺の花っぽくて、手を出す気にもならなかったのに、彼女になったらあっという間に好きになりそう、というか好きになっている。


そんなことを考えていると、

「ねね、ゆー君」

と天が声をかけてきた。


「あのね、ゆー君の部屋見てみたいなーって」

「!?!?」

天は爆弾発言を投下してきたのだった。


…………

……


「へー、ここがゆー君の部屋なんだー」

流石にダメだと言ったが、うるうるとした目でお願いされてしまい押し切られた。

悪女の素質もあるな?

「適当なところに座ってくれ」

「はーい。……えいっ」

「そ、そらさん!?」

「えへへ、ゆー君の匂いがするー、なんでさん付け?」

その間に天は俺のベッドにダイブして、枕に顔を押し付けて深呼吸している。

あまりの突飛な行動に、俺は固まっていた。


「あぁ……ゆー君に包まれてるみたい……」

モゾモゾしながら幸せそうに呟いている。


「あのー、流石に本人前にしてそれは恥ずかしいのでやめてくれないか?」

「ぶーぶー」

何と可愛いブーイングなんだ。

「あと10分〜」

「ダメだ」

「じゃあ5分~」

「何分でもダメなものはダメです」

これ以上いられたら夜に悶々としてしまいそうだ。

俺の安眠のために負けない!


「それなら……一緒に寝よ?」

「はい?何言って」

「隙ありっ!」

「うわっ」

いつの間にか身体を起こしていた天に腕を引っ張られたっ。

俺はバランスを崩してしまい、天と一緒にベッドにいる状態になってしまう。


「ふふふ、油断大敵だよ、ゆー君」

ギュッと抱きしめられた。

天の顔がっ、近い!

下に目を逸らし……って天の胸がはだけてる!

童貞(昨日まで彼女すらなし)には刺激が強すぎてっ。


(ムクムクッ)


馬鹿っ反応をするなっマイ愚息!


というか積極的過ぎないか!?

一般的にこんなものなのか!?


天はじっと俺の顔を見つめると、身体をブルっと震わせ、

「あー、もうダメ、我慢できないっ、ゆー君っ、んむっ」

「!?」

いきなりキスをしてきたのだった。


へー、キスって柔らかいんだなぁ。

急展開過ぎて、パニックになるわけでもなく、逆に冷静になっていた。


どのくらいの時間が経ったかは分からないが、いつの間にか天は唇を離していた。

天の顔は真っ赤になっており、目も潤んでいた。


「ごめんね、ゆー君……」

「……流石に急すぎるって」

天は謝ってきた。

正直な話めちゃくちゃ嬉しい。

こんなに可愛い子が俺にキスしてくれたのだ。

ただ驚いただけであって。

と思っていると、天は首をふるふると横に振った。


「ど、どうしたんだ天?」

「そうじゃないの……謝るのはこれからのことに対して」

「こ、これから?」

「事情は起きたら話すね」

あれ……なんだか急に意識が……。


俺の意識はここで途切れた。


…………

……



~現在~


回想終了。現在に至る。


「そ、天……?」

「はい、ゆー君の彼女の天です」


ジャラッ……

「えっ」

よく見ると手錠が付けられており、腕と足がベッドに固定されていた。

そして服が脱がされていた。


「こ、これは一体どういう事だ!?これを外してくれないか?」

「うん、きちんと事情を話すから……少しだけ聞いて欲しいの……」

天は申し訳なさそうな顔になり、俯き、

「私ね……性欲が凄く強いの」

「……はい?」

学園の天使の発言とは思えない内容を突然カミングアウトをしてきたのだった。


「でも、適当に告白受けて身体を許すのなんて論外。そういうことは好きな人としてこそ、満たされるって思っていたの。でも、好きな人もいなくて一人慰めるだけの日々を過ごしていた。そんな時にゆー君と同じクラスになった。ゆー君についてのある噂を聞いていたから、元々興味があったの」

天は一度言葉を区切る。


「ある噂?」

なんだろう、俺の噂というと一つしか思い浮かばない。

地獄のような内容だが


「それはね……ゆー君のおち〇ちんがすごく大きいっていう噂だったの!」

と脱がされて露わになっている俺の愚息を指さしてきた。


「アァ……」

やっぱりそれか……。

一年前の水泳の授業の時に水着の紐か緩んでいたことに気づかなかった結果、生まれた悲劇。


クラスの男子からは、

『甘瀬のチン〇デカすぎるだろ!』

と一時期流行ったネットミームのようにネタにされてしまったのだ。

別にコンプレックスではないし、あまりにしょうもなさ過ぎて呆れていたが。


多分その噂をしたバカ→聞いていた女子→天という形で伝わってしまったのだろう。

女子も結構下ネタの話をするっていう話だし。


「そんな話を聞いていたから、興味はあったんだ。私の使ってるオモチャより大きいのかなーって。そんなことを思いつつ実際話してみたら、凄く真面目で優しいし、大人っぽくて私の好みどストライクだったんだけどね?そんな興味のあったゆー君を手に入れるために計画を立てたの」

天は続ける。


「夜天気が崩れるって予報がある金曜日、今日だね、ゆー君に告白する。それに成功しなくても、友達から始めようとか言って、無理矢理デートしてどうにか家に行く理由を作って、天気が悪くなって帰れなくなる、っていう状況を作って、薬で眠らせて襲っちゃえば良いって。そしてあとは既成事実でゲームセット」

「く、薬ってさっきのお茶か?だから急に眠気に襲われたのか……。というかなんてこと計画してるんだ」

「でも」

天は顔を下げ、俺の目をじっと見つめてきた。


「嬉しい誤算だったのはゆー君が私の告白を受けてくれたことだったかな……。ゆー君ってば私に興味ないって思ってたから。でも、付き合えたなら、合意の上でシたいと思って。だからエッチする前に計画を今全部話したの」

「そ、天……」

「こんな形じゃないと素直に言えない面倒な女でごめんね……」


俺は色々と思うことがあったが、天が最後まで進まずに俺にそんな計画があった、ということを話してくれたことの方が嬉しいと感じていたのだ。

ただ一方的に襲われてしまったら、恋人なんて続けられる自信が無い。


しかし、性欲が強いなんてそんな簡単に人に打ち明けることは難しいだろうし、天も覚悟を持ってに話してくれたのだろう。

そんな天の覚悟に応えてあげたいと思った。


「天、話してくれてありがとう」

「え……?」

「そのさ、今の俺を身動き出来なくしてることには思うことはあるけど、性欲の話ってそんな簡単に話せることじゃないよな?まだ恋人になって間もないけどさ、大変な事があるなら助けるよ」

「ゆ、ゆー君、それって……」

「うん、俺も初めてで上手く出来るか分からないけど、天が満足できるように頑張るよ」


不安げだった天の表情が明るくなる。

そして、

「ゆー君大好きっ!!」

ガバっと俺に抱き着いてきた。


すると俺を拘束していたことを思い出したのか、

「あっ、手錠外すね」

ポケットから鍵を取り出し、俺の腕と足が繋げられている手錠を外してくれた。

そして、天は、

「じゃあ、たくさん気持ち良くなろうね♪」

と言ってきた。


こうして熱い夜を天と過ごした。


…………

……


結論から言おう。


死んでしまう。


最初は間違いなく最高のはずだった。

それこそ最初はゆっくりと、お互い気持ちよくなるように行為に及んでいた。


しかし、天の性欲は俺の予想を遥かに超えていた。

底なしなのだ。

もう何時間俺の上に跨っているのか。

俺はあまりにも搾られて過ぎて体力の限界なのに、何度も絶頂をしているはずの天は飽きることなく無限に快楽を貪り続けていた。


「凄いっ、これだけしたのにまだ硬いなんて……」

「もう何も出てないけどな……」

もちろんゴムを使っているが下半身はお互いの体液でぐちゃぐちゃだ。

ナマは絶対ダメだ、と言ったら、ゴムは天が今日の計画のために予め買っていたものがあった。


用意が良すぎる。

男の俺は買ったことすらない。

こういうこととは無縁だと思ってたし。


「今日のところはこの位にしておくね。これから毎日しようね♪」

「ま、毎日は流石に……」

「あと、ゆー君。今だから言うけど、私から一つだけ注意があります」

「ん?」

「ゆー君は優しすぎだよ?」

「優しいのはダメなのか?」

「うん」

天は頷く。


「いやまぁ天には優しく接そうと思ってるし」

「そういうのじゃないよ……ゆー君は私の性欲の話からエッチするまでの流れをどう思ってた?」

「え、そりゃあ打ち明けてくれて嬉しいし、それに応えようって」

「それだよ、ゆー君。私はね、ゆー君の優しさにつけこんだの」

「???」

「優しいゆー君はこういう風に打ち明ければ私を気遣ってくれる、エッチしても良いっていう気持ちになってくれるんじゃないかって計算してたんだよ?」

「え」

「もちろん実際にエッチして分かったと思うけど、性欲が強いのは本当。でも、どうすれば最短で合意の上でのエッチにこぎつけるか、っていうことは私の計算通りだったの」

天は妖艶に微笑むと、

「優しく接するのは私だけにしてね?」

と言ってきたのであった。



行為のために策を張り巡らして。男を絡めとり、その性欲を満たす。

その在り方を見て俺は思った。


「神内 天」は天使でも小悪魔でもない。


サキュバスだ、と。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園の天使が彼女になったら距離の詰め方がエグい件 まっしろき @mashiroki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ