第10話
その後、住職の息子は逮捕された。
警察が住職の息子を尋ねたら、すぐに自白したということだった。
玄関先で思い余って泣き崩れてしまったようだ。
それだけ、小心な男だったということなのか。
事件当日。男は法事の後、車で村の中を流していた。
女の子を物色するためだ。
運よく妹を車に乗せて連れ去ったが、いたずらしようとして騒がれたため殺害。
家族のいる自宅には連れて帰れないため、山に埋めたということだった。
実はこの男は似たようなことを何度かしていたが、昔は性被害に遭うのが恥ずかしいことと思われていたから、誰も名乗り出ていなかった。嫁入り前にそうした被害に遭っていると、破談になることもあった時代だ。特に田舎だから、面白可笑しく尾ひれがついて言いふらされるのが目に見えていた。
俺の話では妹が生きているということになっていたが、実際は殺害されて土に埋められていた。だから、俺のことが新聞にのったり、表彰されることはなかった。俺が警察に行ったことは親にも話したことはなかった。
俺が覚えているのは、両親が民事で訴えて賠償金を得たということだけだ。
両親は、その後はそれほど悲しんでいなかったと思うが、二度と寺には行かなかった。
俺は何度かその寺に行ってみたが、妹に会うことは二度となかった。
あの世で行儀作法を身に付けて、俺たち庶民には手が届かないような、いい暮らしをしているかもしれない。
行方不明 連喜 @toushikibu
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