人間の欲の「現代」の姿を浮き彫りにした秀作だと思います。

ユーチューバーの配信で「魔法のランプ」のことを知り、自分も体験してみたいとランプに会いに行く大学生のお話です。

なんとなく、藤子・F・不二雄先生のSF短編に出てきそうな感じの、ごくごく平凡な感じがする主人公。素直で心やさしくて、でも壮大な夢やギラギラする欲望は持っていない。願い事をなんでも三つ叶えてくれる魔人を手に入れたのに、彼の行動は……。

この物語を読んで、若者の「夢」「欲」というのは、こういう感じになってしまったか! という感想がわきました。知らないことも、世界の風景も、動画の中でなんでも疑似体験できるわけですよね? こんな摩訶不思議なアイテムなことも、ユーチューバーが紹介してしまっているわけです。

彼の体験と気持ちの移り変わりが非常に素直に描かれていて、小さな地味な物語が「人間」を鋭く突くという、そういう、私にはとても理想的なお話でした。