主人公と友人・シオンとの思い出が綴られた物語です。
本文に「心がありそうなところ」という言葉が出てくるのですが、「心」や「思い」について語られる小説を読んでいるとき、そこにしか存在しないような時間や空気を感じることがわたしにはあります。
タイトルからして、『星の王子さま』を彷彿とさせるモチーフが出てきて、そうだ、あの小説を読んでいたときにも、これと同じような雰囲気を感じたかも、と思いました。
後悔、喪失……主人公は出来事を通じていろいろな痛みを経験したのでしょうが、そこから逃げ出さずに向き合い、自分が問い続けてきた「もし」を記録に残す。
ふと立ち止まるように静かになった時間の中で、自分の心や他人の心を探しに行く、そんな小説だと思います。