かごめかごめ

あの日

子どもの頃、今は亡きおばあちゃんから一度だけ聞いた。


「懐かしいねえ」


テレビで「かごめかごめ」で遊ぶ子どもたちが、ドラマか何かで映った時だった。


何気なく、まるで独り言のようにおばあちゃんは語りだした。


子どもの頃、近所の神社に集まってみんなで遊んでいた。

大人はあまりそこで遊ぶことにいい顔しなかったが、こっそりと。

見知らぬ少女がいた。

年格好は自分たちと同じくらいだけど、何故か誰も名前も知らない。

でも、みんな気にせず一緒に遊んでいた。

いつもニコニコしていた、かごめかごめが好きな子だった。


あの日。


家の手伝いをしていると、かごめかごめの歌が大きく聞こえてきた。

『ねえ、ねえ、お母さん……」

でも、大人は何も聞こえていないようだ。


歌は延々と続く。


子どもらが集まってきた。

誰かがいった。

神社のあの子じゃないかな?

そうだ、そうだ。

でも、なんで?

何かおかしいとみんな首をひねった。

その間も歌は聞こえてくる。

すぐそばのようで、でも遠く神社からのような気もする。


胸騒ぎがした。


すぐ家に帰って大人を説得、家族で神社へ駆け込んだ。

みんなの家族も集まってきた。


そのすぐ後。


たくさんの爆弾が、たくさん落とされて、町は火の海になった。

呆然とそれを見ていた。

神社だけは何故か残った。


あれからあの女の子がどうなったかは知らない。

家も田畑も何もかもなくなって、遠くの親戚の家に移ったから。

ほかの友達だって、あれ以来どうなったか分からない。

みんな散り散りバラバラ。


「あの頃は人がいっぱい死んだ。不思議なこともいっぱいあった」


おばあちゃんは淡々といった。

感情も何もない。ただ遠くを見つめていう言葉がやけに怖かったこと、今でも覚えている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かごめかごめ @t-Arigatou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説