エクシスト

「いただきます!」

「召し上がれ♪」


 レイエスさん、改めてアリアの相談?に乗った日の夜。俺はステーキを食べていた。


「どう?美味しい?」

「ああ、すごく美味い。今までで一番おいしいわ」

「良かった。あ、それ熟成肉なんだって」

「へぇー。ってなんで買って来た俺が知らないんだよって話だな」

「あはは!確かにそうだね!」


 そして、食べながらお互いに今日あった事を報告し合う。今日は世界史の授業全滅してたとか、井戸端会議が3時間と言う最高記録を更新したとか、輝夜がバイト先に来たとか、ゴキブリが出て来たから念力で捻り潰しちゃったとか……念力使えんのカッコいいな。俺もやってみたいわ。「これがフォースだ。ルークわかったかね?」(心の声)


「そういえば、アリ、レイエスがバイト先にきたよ」

「大樹君の話に出て来たあの高飛車、傲慢、女王様のアリア・レイエスさん?」

「お、おう。そのレイエスさん」


 やべえな俺。めちゃくちゃ悪意に満ちた話をしてんじゃん。そんなに俺って根に持つタイプだったっけ?

 ともかく、今日喫茶店で話した内容をユリアに伝えた。


「へー。そんなことが。レイエスちゃん漫画読むんだねー」

「ああ。それでユリアに聞きたいことがあるんだけどさ、いい?」

「ほほう。どんときなさい!」

「エクシストとか陰陽師って実在するんだよね?」


 そう言うと、ユリアはあちゃー!といったふうに顔を顰め天を仰いだ。どうやら、俺に知られたくない類の物だったみたいだ。


「うん。私も聞いた話で実際に見たことあるわけじゃないけど、いるみたいだよ」

「見たことないの?」

「うん。だって見たことあったら、私今頃天国だもん。これは先輩幽霊に教えてもらったこと」

「んんん?先輩?いや、ちょっと待って、祓われるってことはユリアは結構ヤバいやつだったの?」


 情報を処理できず俺は混乱する。まず、地縛霊のユリアはここから動けない。それなのに先輩と呼べる幽霊がいるのがかなり不思議だ。それに天国っていうことは、祓われるってことで、ユリアが危ない霊ってことになるんだけど俺にはどうしてもそうは見えなくてさらに混乱してしまう。


「えっと、説明するにはまず幽霊について分からないといけないから、そこからするね?」

「了解」

「まず幽霊は肉体が亡くなって、魂だけになった状態のことを言います。そして幽霊には二種類あって、理性なく人を襲う悪霊と理性を持つ善霊。それで、基本的に人に害を与えるのは悪霊だからエクシストとかはそいつらを狙うんだ。ここまではいい?」

「うん。分かる」

「ここで問題になるのが悪霊と善霊の違いなんだ。一言で言っちゃえば悪霊は魂が傷ついた廃人なの。それってつまりさ、私達善霊も魂が傷ついたら悪霊になるってことなんだよね。しかも私達は体っていう魂のケースがないから簡単に魂が傷つくし、なんなら何もしなくても劣化していくの」

「何もしなくても?」

「そう。例えばこの熟成肉だけど、適した環境に置かないとそれは熟成じゃなくてただの腐敗になるでしょ?それと一緒で魂にとっていい場所。つまり神社とか教会とかの神聖な場所にいるならいいんだけど、他の場所にいる霊はいつかは必ず悪霊になる」

「それは……」

「その結果エクシスト達からしたら私達はどうせ悪霊になる予備軍なんだから、見つけ次第祓ってよくね?ってなっちゃったの。まぁ、理性があるからと言って人に友好的とは限らないからあの人達の言い分も分かるんだよ。それにそもそも私達は今頃魂も天に還ってなきゃいけない存在だからね」


 つまりだ、ユリアはサーチ&デストロイを信条とするヤバい奴らに命を常に脅かされているって訳だ。ふむ……


「ユリア、オレ今からアトランティスに行って遺物レリック探してくるわ」

「待って。思考が飛躍しすぎて私ついていけてない」


 いつかは、幽霊は悪霊になる。だから危険視されている。ならばユリアを守るために必要なものは一つ。


「この部屋を聖域化する――ッ!」

「やめて。無理だから」

「やってみないとわかんないじゃん!」

「そんな事やってる暇があるんなら家事を身につけてよ」

「ぐぬぅ……」


いや、確かにな?そんなの見つからないとは思うけどゼロではないじゃん。だったらそれを探すくらいしてもいいと思うんだけどなぁ。


「はぁ……こうなるから言いたくなかったんだけどなぁ」


 何かユリアが呟いたような気がしてそっちを見ると、ユリアが少し嬉しそうに頰を緩めていた。


「どうかした?」

「なんでもないっ!あ、ほら、早く食べちゃって!冷たくなったら美味しく無くなるでしょ!」

「わかった、分かったから」

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高校生活、幽霊と二人暮らし ※更新見通し無し 晶洞 晶 @idukisouma

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