第35話 名付けて聖女教会の悪事生配信大作戦
というわけで棚ぼた的に“少年を遠くから見守り愛でる会”というちょっと最低な会の会長さん改め、ドナテロ爺さんの秘書さんに面会できることになった。
「ローンくんお手柄じゃないか、いやぁなんだこれは…たまげたなぁ」
そう言ってローンを褒めていたまさおは街中を移動している途中でいつのまにかどこかに行ってた。迷子になるから勝手にウロチョロするなっていってるでしょ、も~~~~と呆れていたところでクロガネがまさおを探しに行ってくれたのでとても助かる。いやぁ~お兄ちゃんかな?見た目はクロガネの方が子供なんだけどね。
ドナテロ爺さんの居城でもある亀甲商会の客室で秘書さんを待っている間、エシェックがミミィちゃんをもふりながらご満悦な様子でミミィちゃんと仲良くきゃっきゃしていたのでそのまま温かい目で見守っておく事にする。
「お待たせしました。私が当商会の会長秘書のショルタンです」
そう言っておかっぱ頭に眼鏡のキリッとした様子のお姉さんが部屋に入ってきた。俺を胡散臭げにじろりと睨んでくる、バリキャリってかんじで本能的に怖いよこのお姉さん……!!
「エチゴノチリメンドン屋のツクモです」
一応、素直にユーマと名前をいう訳にはいかないのでひとまず偽名を名乗っておく。
「私はツクモさんの下で青少年の健全な成長を見守っているローンです」
「そこは会計とかもっとまともな役職言えよ」
曇りなき眼で淀みなく言ってのけるローンに頭を抱えながら思わずツッコんでしまう。
「この子はエシェック、こっちの子はミミィちゃん」
そういってエシェックやミミィちゃんを紹介するとショルタンは優しい笑顔を浮かべる。
「こんにちはエシェックちゃん、ミミィちゃん。ちょっと、この子達にはやくお菓子を出してあげて。愚図は嫌いよ、30秒で出しなさい!」
パンパンと手を鳴らすと給仕の人達がバタバタとかけこんできてちびっ子たちにお菓子を出してくれた。俺やローンには厳しいけど子供にはとても優しい……。
「紹介状が回ってきたので一応、面会には応じましたが……最近はこういった方法で正規のルートを使わずに会長に面会を目論む下種が多いのよね。
申し訳ないけれど黒髪色白七三分けツリ目で軍楽隊や軍服のラインの服と膝上丈のブレーを履いた俺っち呼び美少年でも連れてこ無い限り私を――――」
とショルタンがクドクドと語りだしたところで扉がノックされて聞き馴染んだ声とともに人が入ってきた。
「すまねぇ大将、全裸の兄さんを捕まえるのに手間取った!……おっと、お取り込み中だったか、すまねぇ」
全裸にズタ袋をかぶせられた男を引きずって入ってきたのはクロガネ。まさおェ……また全裸になってるのかよと頭を抱えていると、ショルタンはクロガネをみて停止している。
「おっと、初めましてだな?よぉ姉さん、俺っちクロガネだ。大将ともどもよろしく頼むぜ」
そう言って屈託なく笑うクロガネに、豪快に血を吐きながら倒れ込むショルタン。
「―――――我、至高にして理想の美少年を得たり最早悔いなしゲフゥゥゥゥゥゥッ」
満ち足りた表情と共に今にも天に召されそうなショルタン、この人ダメな人だ!!ローンと同じタイプの奴だ!!
「……バッカもん、何をやっておるのじゃショルタン!!」
そう言って客室奥の扉が開き、2足歩行する子供位の背丈の亀が出てきた。……旅の途中でこの街に来た時にあった事があるドナテロ爺さんだ。扉の向こうでこちらの様子を伺っていたのね。
「まったくお前という奴は美少年をみるとすぐこうじゃ。……で、英雄のユーマ殿が素性を隠してこんなルートからワシに何のようじゃ?」
おっとさすが年の功というか全部お見通しじゃったか。これなら偽名使うまでもないじゃん、恥ずかしい。
「これは失礼しましたドナテロ翁。――――実は聖女教会を潰そうと思うんですが。そのために会長たちの、この街の力をお借りしたく伺いました」
聖女教会を潰す、という言葉にドナテロ爺さんの眉がピクリと動くが、フン、と鼻息を鳴らす。
「やめておけ、聖女教会を潰すなど気安く言うものではない。どこの誰じゃそんな愚かな事を言い出したのは―――」
「ワシじゃよ、しんいち」
そういってズタ袋を取る(全裸の)まさお。そのまさおの顔を凝視した後で、絶叫するドナテロ爺さん。
「ま、ままま、マルサルオス様ァー?!?!?!」
飛び上がって驚いているが無理もない。あとバーロー、誰がしんいちだよまさお。
「実は黒幕はワシだったのじゃよ、フォッフォッフォ。真実はいつもひとつとは限らない!」
やめろまさお、それ以上いけない。……あ、ドナテロ爺さん失神してる。
床に倒れ良い笑顔で魂が抜けてるショルタンと立ったまま気絶しているドナテロ爺さんとか初手からカオスすぎるんじゃよ……。
そんなカオスな状況を仕切り直し、全員が椅子に座った状態で改めて俺は切り出した。
「聖女教会のクソマッチポンプを潰す案についてですが。商会が各都市間の商談用にもっている通信機構を流用させてもらい、俺の魔法を上乗せすれば映像を各都市上空に投影することができます。それで暴露配信をするんです」
「――――私の他にも教会から離反した者達がいますので証言をします」
俺とローンの言葉に、ふぅむと考える様子を見せるドナテロ爺さん。
「面白い作戦じゃが、果たしてそれだけで人は動くかな?」
そう、確かに人の証言だけでは嘘だと言われる可能性もある。だから俺はもう一つのとっておきの隠しだねを提案する。
「その証言を囮に使った隙を生じぬ三段構えってやつでいきます。教会側は捨て置けませんから暴露配信を阻止するべく動かざるを得ませんからね、それが本命です」
そして懐からプロペラ状の器具が付いた水晶球を取り出す。
「ジャーン!これは魔導ドローン。映像転送の魔術を備えている道具で、こいつを飛ばしつつ映像を紹介の映像伝達機構にリンクして―――攻めてきた聖女教会側の言動を引き出してその悪行をリアルタイムで全世界に向けて生配信してやるんですよ!!!!」
俺の言葉に皆がポカーンと見ている中でまさおだけが意味を理解してなぜか遠い目をして窓の外を眺めていた。
「ドローン……生配信……ワァッ……」
まさおはドローンとか生配信に何か思い出もあるのかな?ちいさくてかわいそうな生き物みたいな泣き顔浮かべてるけどとりあえずすておこう。
「……ふむ。お前さん面白い事を考えるのう」
ドナテロ爺さんは顎鬚をこすりながら、俺のドローンを視ていた。結構良い反応、これは……勝つる!
幼馴染の婚約者を寝取られた挙句、聖女の義姉諸共追放されたので裏切った連中が滅亡していくのを眺めていることにした。 サドガワイツキ @sadogawa_ituki
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