第34話 都市重鎮への最短ルート
「という訳で商業都市に出かけてくるから留守番をお願いします」
俺は皆で朝食をとっている時に商業都市に行くことを皆に話した。
一緒にクロガネとまさお、ミミィちゃん、エシェック、あとは教会側の証言をする人間としてローンを連れて商業都市に行くことも説明する。
クロガネには馬車を引いてもらわなければいけないのと、まさおは古い友人たちに会わせたいからで、ミミィちゃんももしかしたら面識があるかもしれないしまさおと一緒にいた方がミミィちゃんも安心すると思うからという人選。
ちなみにエシェックは社会勉強を兼ねているのとハゲ大臣の下で働いていた経験を期待しての人選である。
「ユーマ殿とクロガネ殿が不在の間は我ら三騎が防空と警邏を引き受けましょう」
長期間の不在の防空などは三連星なオッサン達が引き受けてくれたのでぬかりはない。成り行きで仲間になった人達だけど並みの兵士よりはやっぱり強いし真面目に働いてくれているので想像以上に助かっている。
バルフェは商業都市と言えば美容に良い温泉施設ッ!!!!!!とついていきたがったがあまり大人数で移動するのも困るのと交渉の場にはローンの方が向いているのでローンに任せた。
ローンはクロガネきゅんの引く馬車に乗れるハァハァ、と息を荒くしていたけどきっと大丈夫だろう、多分。
「そうだユーマ、バナナは――――」
「バナナはおやつに入りますかって言ったらそぉい!するからな」
遠足じゃねぇんだからさぁ、もう。こういう頭まさおなところに対しては容赦なく突っ込んでおく。
「――――何のために産まれ死んでいくんだろうか」
「それはバナナが?」
図星をつかれたのかまさおのトンチキな言葉で返してきたのでツッコミをいれてやる。
朝食の卓を囲む他の皆は「ばなな?」と首をかしげているが、まぁ気にしないでくれと笑ってすませしておく。けど、朝食が終わって解散した後に庭に連れ出したまさおの腰を掴んでジャーマンスープレックスをしておいた。そぉい!
さて、旅の準備しようっと。
―――そしてクロガネに牽引してもらっている空飛ぶ馬車の荷台。
「イェーイ、こういうのって遠足みたいでたのしいよな!」
ウッキウキな様子のまさおが肘で曲げた両腕を肩で上下に弾ませながら上体を左右に動かして上機嫌な様子を体で表し、その隣でミミィちゃんが同じように上機嫌な様子のポーズをしている。うむうむ幼児のミミィちゃんがすると普通にほっこりして可愛いよね。まさおの動きはウザきもいけどミミィちゃんの可愛さでこの場は見逃してやるからミミィちゃんに感謝するんだな。
「しかしユーマ殿、私が証言をするのは構わないのですがそれだけでは決め手に欠けます。何せ物証が乏しいので商業都市の中枢、特に通商組合を動かすのは難しいと思いますよ。教会ですら門前払いを食らうのが商業都市ですから」
ローンがそう話しかけてくる。そこは俺とも共通認識なのだが、そこはまぁ色々と手は考えてある。
「まぁ手は幾つか考えてあるので後は現地での話し合い次第だなぁ。どちらにせよ商業都市に協力を貰うのは教会崩しの必須事項だ」
「……なるほど、そういうことですか」
ローンが頷いている。商業都市、ひいては通商組合の協力が必要という事で俺の狙いがピンときたのだろう。やはりこやつはインテリ型じゃったか。
「HEY!HEY!HE~~~~Y!折角のたびに難しい事言うのはナッシング!だぜっ!ここはひとつ俺が盛り上げてやらぁ、俺の歌を聞けぇーっ!!LET’SGO~~~~♪」
手拍子をを鳴らしながら歌い始めるまさお。
それに合わせてミミィちゃんはポシェットカバンからタンバリンに似せた楽器をとりだし、にこにこ笑顔でシャンシャンと鳴らしている。これはまさおの依頼を受けて俺が流刑地の工房に作ってもらったものだが、ミミィちゃんがもっていると幼稚園のお遊戯の時間のようで父性がわいてくる。ほっこり。
商業都市への関所は簡単な変装と共に越後のちりめん問屋という事にして通行を試みる。
竜に馬車を引かせている時点でそれなりに裕福であるとはわかるので、後は金の匂いをさせておけば良い。関所の役人が
「儲かりますか?」
と親指と人差し指でマルを作りながら聞いてきたので
「ぼちぼちでんなー」
と返しておく。完璧な商業都市のあきんどムーブである、フッフッフ。
……今の俺はお忍びで来ているのと、まさおについてやローンについても今はまだあまり表ざたにできない。
それを踏まえてこういった成金オーラをかもしだす言動をしつつ少なくない金子や、領地でとれた雑多なものを馬車に積んできているので「エチゴノチリメンドン屋」なるものの意味は通じなくてもそれなりに裕福な商人であると認識をしてもらえた。
ただ、聖女教会に対してのあたりは強いのでローンがかなり怪しまれて関所の役人に絡まれてしまった。まぁ実際こいつは教会の役職者だったしな~~~~!!糸目の美形でイケボってなんか胡散臭いもんね仕方ないよね。ローンはトゥ!ヘヤーッ!てブーメラン投げたりしてそうな雰囲気もあるし。
……それはさておき、どう言いくるめをするかと思ったところでローンが目を見開き叫んだ。
「私は聖女教会に忠誠など微塵も誓っておりません!私 の 心 と 性 癖 は 黒 髪 色 白 の 美 少 年 を 遠 く か ら 見 守 る 事 に さ さ げ て い ま す の で ~ す !!!!!!!!!!!!!!」
そんな魂の咆哮で関所の役人を黙らせていた。
聖女教会に関係がないという事と、聖女教会にいたら色々な意味で処断されそうな性癖を胸を張って絶叫するローン。……うわぁ……うわぁ……。
ちなみに関所では聖女教会にゆかりのありそうな人物に対してはウソを見破る魔道具“疑心の天秤”も持ち出して言葉に判定をするのだが、今はそれが反応していない……という事はローンにとっての真実の言葉であるということ。聖女教会を本当に足抜けしているということだろう。性癖については……人それぞれ色々あるよね。
ローンも連れ帰ってからちょっと残念なところが見え隠れするようになってきたけどこれでも領地の中だとインテリサイドなんだよなぁ、政務とか財務に関しては滅茶苦茶有能なんだけど……まぁ、深くは考えるまい。
「―――わかるぞ、黒髪色白の美少年が膝小僧の見えるひざ丈のブレーをはいている姿には……胸がときめく!!NOタッチの精神で遠くから見守る精神は大事だよな!」
「おおっ、わかりますか!!―――友よッ!!」
関所のお兄さんと固い握手を交わすローン。うわぁ、関所のお兄さんもそういう性癖か。馬車の荷台に乗っている俺やまさおやエシェックがドン引きの眼差しをローンに向けているが、本人だけが気づいていない。ミミィちゃんは言葉の意味が理解できないので首をかしげているが理解できなくていいからね。むしろあれ目に有害だからみちゃだめだからね。
「そうだ、そう言う事なら一つ紹介状を書いてやろう。商業都市の重鎮、ドナテロ爺さんは知っていると思うが……あの爺さんの秘書は、“少年を遠くから見守り愛でる会”の会長をやっている。同好の者であれば無下にはされないだろうし存分に語り合えるだろうから訪ねるといい」
……マジかよ目的の爺さんのところへの足掛かりがこんなところで手に入ったぞ!!ドナテロの爺さんは多忙で面会するのにも毎回てこずるがまさかこんな所からとっかかりが出来るとは。
そうして関所を通った後、ローンがニヤッと笑いながらサムズアップするローン。
「フフフ、―――計画通り!!」
嘘つけ!ただたんに窮したからお前の性癖暴露しただけだろ。でもそれでなんとかなっちゃうんだから世の中わっかんねぇよな、まぁ確かに聖女教会って基本的に堅物で真面目な集団だからトンチキとは無縁だしな。案外良い手だったのかもしれないし結果オーライだ。
そうしてたどり着いた商業都市は、商店が立ち並び人の活気と賑わいがあふれていた。
「わぁっ、これが商業都市ウォルサーカ!あの川は競技大会でウォルサーカが優勝した時に人々が飛び込むというあの有名なデュトーンヴォリですか?!……あっ、失礼しました」
エシェックが子供のように目を輝かせてからハッとして落ち着きを取り戻しているのをみて、ええんやでええんやでと温かいまなざしを向ける。子供はそうやってのびのびしてればいいのだ。
さて、先ずは―――――、“少年を遠くから見守り愛でる会”の会長とやらに会いに行こうか。いや〜〜〜っ、会の名前からして印象最低なんだけど、初手から普通に最悪だなぁ!!!!!!!!
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