後編・邪悪極まりない教会は滅びてね、すぐでいいよ!

第33話 聖女教会潰しに、まずは商業都市へ


 領地の生活の朝は早い。

 朝起きた後、一応ハナコの母体の様子を見に行くことから始まる。母親の方はどうでもいいけどお腹も随分と大きくなってきたから子供のメディカルチェックは常に最優先しなければいけないのだ。


 ハナコのいる部屋に近づくと何やら異臭がするのでなんだと思いドアを開く。


「ああああああああああああああああああああっ」


 そこにはブリブリブリブリブリュリュブッチチブリィ、とベッドの上で横たわりながら脱糞しているハナコの姿が!!

 そしてそんなハナコの身体を労わり、糞尿まみれになったハナコの身体を濡らした手ぬぐいで拭いては、桶で手拭いを洗っている義姉上。

 義姉上の方が起きるのが早かったようで、ハナコの世話を焼いていた。


「義姉上おはようございます。うわぁ酷い有様、……俺も手伝いますよ」


「おはよう。大丈夫よ、それにハナコさんは女性だからここは私に任せて?」


 にっこりと笑う義姉上からは慈母のような温かいオーラを感じる。……さすがは義姉上(おねえ)さまです!

 涙を流すハナコの胸中はうかがい知れないが、どうでもいっか。

 そういえばクロエが戒めの術と共に反抗できないように知能レベルを落としてるとかいってたっけな。ただ、知能レベルが低下しているのとは別で自分自身の行動を理解はできているとはいっていたので相当に尊厳もプライドやられてそうだけど……何も問題は無いような気がするしハナコもそれで別にいいよね、答えは聞いてない☆


 義姉上に追い出されるようにハナコの部屋を後にした後、朝食の時間にはまだ早いしと庭に出たところで話しかけてくる声があった。


「いたいた、おーいユーマァ!」


 朝からまさおがいい笑顔で駆け寄ってきた。偉いぞ今日は服を着ている!


「どうしたんだよまさお」


「へっへっへ、ユーマに俺の取得した新しいスキルを見せたくてな」


 ……新しいスキルゥ?まさおのことだし大丈夫かと身構えてしまう。また変なスキル取得してるんじゃないだろうな?と思う俺の心配をよそに、まさおは俺の隣に並び、何やらスキルを発動した。こ、これは……!!


「……なんか肌が水色のクリア素材になった?」


「あぁ!!みてくれこの色艶!!」


 肌の色というか体全体が水色のクリアになって反対側が微妙に透けて見えるようになった。スライム的というかなんというか。


「で、それはどんなスキルなんだ?」


 俺の言葉にニヤリ、と笑いながら俺の隣でポーズをとるまさお。


「……レベル4の魔物が2体。来るぞ、ユーマ!!」


「お前そんな一発ネタやるためだけにスキル取得したの?!?!?!?!?!」


 思わずまさおに突っ込んでしまう。俺とお前で特殊召喚じゃねーんだよぉ!!


「ちなみに効果は特にないよ。自慢はこだわりの色合いです」


 そう言ってドヤ顔でご満悦のまさお。コイツもう、……本当にまさお!!この、まさお!!何そのゴミスキルゥ!!


「ハァッ……で、用件はそのしょうもない一発芸をするためだけだなんて言わないよな?……まさか、そのためだけに俺を探してたのか?」


「勿論さッ」


「ランランルーじゃねぇんだよなぁ?!お前、ほんとうにもうこの、まさお……!!っていうかこう、ほら、スキルを取得するにしろもっとこう、有意義なものってあるだろーっ!?」


 クソッ、忘れていたがこいつまさおだ!!ひらがなでまさおってかいてカタカナでバカってルビふるやつだわッ!!あとは地味だけど同じ故郷から転生してきた奴なのでいちいち小ネタを振ってきて、都度ツッコまされるので疲れる。俺はよろず屋のメガネが本体のツッコミ担当じゃないんだからさぁ、もう。


「この肌色が水色の透明になる“バリあん”の他に取得できそうなのって脇の下で上手におにぎりをつくるスキル“ワキノン”とか脱いだ時に股間に霧が発生するスキル“ミストさん”くらいしかなかったし」


「その中ならミストさん一択だろ!!!!!!!!!!!ミストさん取得してくれよぉぉぉぉっお前すぐ脱ぐんだからさぁ!!!!でも今はそんな事はどうでもいい。重要な事じゃないって?いや滅茶苦茶重要なスキルだッろーがっ!!」


「そこはほら、全裸になっても……大丈夫、履いてませんよ!ていうから問題ないんじゃない?」


「パーンツ!!だから脱ぎネタをさも芸のように言うんじゃないよっ、お前のはただの全裸だッ!ちくしょうでも子供にはストレートに受けてるんだよなぁ……。クソッ、こんなに俺とまさおで意識の差があるとは思わなかった」


 まさおの全裸芸は子供にはバカ受けなので無下にもしにくいんだよなぁ、それならせめて股間を隠すミストさんを取得してほしかった。


「でもミストさんを覚えても根本的な解決にはなりませんよね?」


 何故かキメ顔で言ってくるまさおだが、それをお前が言うのやめてくれない???


「その通り。お前が最初から全裸にならなければ良いのだ、脱ぐな、服を脱ぐなとあれほどッ……!!あれほどッ……!!」


「でもほら、俺全裸の方が防御力高いから何かあったときにはその方が人の盾になって守りしやすいし、脱ぐことが染みついちゃってるんだよなぁ」


「……少なくともこの領地の中では安全だから服を着てくれ」


 概ね平和で穏やかな日常の中でまさおが凄くまさおしてるのは頭痛の種だが、日夜病院や孤児院を回ったりしているので中々叱りづらいところもある。


「善処します…キラッ☆」


 使えない政治家みたいな返事とともに親指と人差し指と小指を伸ばし、中指と薬を曲げた掌を顔にかざしてポーズをキメる姿からは微塵も反省を感じない……!!手のかかる子供が増えたみたいだ。だけど丁度良かったのでまさおにも言っておこう。


「この領地も改めて落ち着いてきたから、港町の商業都市に行こうと思うんだ。お前も一緒に来いよ」


 ――――そう、あの教会の下種共はきっちり根絶やしにしなければいけないので、その協力を仰ぐために俺は商業都市に行かなければいけないのだ。それならついでにこいつも連れて行って知り合いたちに合わせてやりたいよねって。


「えっ?いや、俺連れて行っても悪目立ちしないか?全裸だし―――」


「だから服を脱ぐことを前提にしゃべるんじゃぁないッ!!……ドナテロとかコンコとかお前の知己もいるんだろ?久しぶりに顔見せてやれよ」


「……ウォォォォンありがとうユーマァ!!」


 感極まってという様子で泣いて抱き着いてくるまさお。


「わわわ忘れ物~っと、……大将ッ?!」


 人型のクロガネがてくてくと歩いてきて、俺達を視て固まっている。


「た、大将!俺という者がありながら……うわーん!」


 あ、待て誤解の上に子供みたいに泣いて去っていくんじゃない!!いや、そういえばクロガネはまだ子供だもんな……とりあえず、待てクロガネーッ!

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