第404話 サンジェルマン、現代へ戻る②
午後7時過ぎ、犬神霊時の乗った車は横田基地のGATE5(サプライゲート)を通過。GATE5から入って左手にある在日アメリカ軍司令部前で停まった。南北に伸びる滑走路から見て西側だ。横田基地は立川市、福生市、羽村市、瑞穂町、武蔵村山市に跨っていた。
戦前は大日本帝国陸軍多摩飛行場であった横田基地には現在、在日アメリカ軍司令部、第5空軍司令部、在日アメリカ宇宙軍司令部、アメリカ沿岸警備隊極東支部、朝鮮国連軍後方司令部、航空自衛隊航空総隊司令部などが置かれている。
在日アメリカ軍司令部と第5空軍司令部の置かれた建物は地上2階地下3階で、地下部分は核攻撃を受けることを想定した米軍のシェルター基準において最大レベルの核シェルターだ。これをEWO(緊急戦争作戦)シェルターという。
万一、核戦争が勃発し、横田基地が壊滅状態となった場合、シェルター内のWWMCCS(全世界軍事指揮統制システム)作戦室が世界規模の通信および指揮統制システムへ組み込まれる。ちなみに核戦争時、大統領は空中からミスティック・スターという通信により各司令部や部隊へ指令を出す。
屈強そうな男たちが犬神へ降りるよう促す。そして建物の地下へ案内された。流石の犬神も何を意味するか十分理解しているだけに緊張せずにはおられない。オカルトや陰謀論の専門家である犬神からすれば、横田基地とりわけ在日米軍司令部は大きな意味を持つ。
世界規模の核戦争勃発時、この在日米軍司令部地下にある地下シェルターが日本で最も安全な場所だ。ここへ避難可能な人物は限られている。日本人であれば、国の最重要ランクの人物に他ならない。
犬神の推測では恐らく首相や内閣などは門前払いだろうと思っている。所詮は取り替え可能の量産型人物など、世界的な支配機構にとっては単なる使い捨ての駒でしかない。
そんなことを思いつつ犬神は周囲の人物を見て、大統領直属ともいえるCIAでなく、噂に聞く第5航空諜報隊員か太平洋空軍司令部直属の諜報部員だろうな、と思っている。
また、リモートビューイングなどを実施しているとすればNSA(アメリカ国家安全保障局)というのが犬神の読みだ。部屋へ案内されるとそこには鬼墓亜衣子、鬼墓亜梨沙、肉山298、小塚原刑子、竹原の5人が揃っている。
今日は、シェルター内のゲストルームに泊まることは知らされていた。しばらくして係の者が基地内のスーパーで買ってきたらしい、食べ物やドリンクを置いて去る。
先に着いた肉山と小塚原がお使いを頼んだようだ。カツカレー、スパゲッティ、スパムにぎり、ブリトー、ソーセージ、ポテトチップス、キットカット、M&M、エナジードリンクなどが並ぶ。
しばらくして、出前のピザも運ばれてきた。サークルの合宿気分みたいな肉山と小塚原は楽しげに飲食を始める。鬼墓亜衣子と鬼墓亜梨沙の能力者ふたりは少し緊張した面もちだ。
鬼墓(亜衣子)は指で文字を書き、犬神へ伝えてきた。先ほどから、大きな気配を感じるという。以前からコンタクトしてくる人物たちと同じらしい。そして翌日、6人は別の部屋へ案内された。
カメラや様々な機材が設置されている。ロックフェラー家の当主、以前来日した代理人、他の一族、皇籍離脱した旧宮家当主、在日アメリカ軍および第5空軍の司令官を兼務する中将、NSA長官の空軍大将、医師、科学者、歴史学者、特殊能力者などが待ち構えていた。
鬼墓亜衣子と鬼墓亜梨沙が準備を始め、およそ30分後ほど経過。幸田広之、織田信孝、サンジェルマンことマイケル・ロックフェラーの座標を掴み引き寄せた。
呆気にとられている軍人や学者も居り、何ともいえない張り詰めた空気が漂う。サンジェルマンは従兄弟であるロックフェラー家当主を見るや涙ながらに抱擁した。
「ジュニア(当主)、君が天国へ召される前に会えて良かったよ。父や母に今でも申し訳なく思っている」
「君は昔とまったく変わらいな。私はこの通りだ。君の両親は常に君を見守ってると思うよ。私の命は残り少ないだろうが、君のことは私の娘へ託すから安心してくれ」
「それは頼もしいな。あのジュニアが、僕より年上のお爺さんになって、守ってくれるとはね」
「マイケル、実は君の兄弟が居るんだ。君が居なくなってから再婚相手との間に出来た若い弟だよ」
「話には聞いていたよ。後ろに居る彼だろ。父さんにそっくりだ」
「兄さん……。私はマークといいます。まさか、本当に会えるなんて夢のようです。よくぞ、ご無事で」
「やあ、マーク。僕の代わりに父に親孝行してくれたかな。残念ながら僕は親不孝の限りを尽くしてしまったからね」
こうして、従兄弟と再会し、弟と初対面を果たすサンジェルマンであった。その後、サンジェルマンは別室で一族と過ごし、広之、犬神、鬼墓母娘の4人はそのままNSA長官との会談を始める。
本能寺の変から始める戦国生活 桐生 広孝 @koh2000e
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