Episode.27 はい。行ってきます!
武器はヴァリアブルマナブレードとミスリル包丁。本当は鞘に納めて腰から吊り下げたいのですがそんなものはないのでとりあえずインベントリに。
防具はメイド服、着替え用と予備にロングスカートとミニスカートを2着ずつ。今のところ着ているのはロングスカートの方です。
所持品は水筒を肩から下げて、技能を覚えられる基礎的な本を何冊かインベントリに入れておきます。私自身はもう読み終わっているのですが、他の人の役に立つかもしれませんので。
その他の本や素材などは最上階の私室に置いておくことにしました。
「持って行くものはこんな感じですね」
装備品・所持品を改めて確認しましたが問題はなさそうです。
「それで、結局どこに行くんですか?」
「大陸西部方面にしようと思っています。『Dawn of a New Era』を遊んでいる
トルアドールを出てどこに行くか、は沙織お祖母さまお勧めの大陸西部に決めていました。雅和お祖父さまもいるそうですし、沙織お祖母さまに逆らうのは怖いですからね。
「ただ、大陸西部の『どこに』するかは迷っているんですよね」
「3か所ありますからねえ」
大陸西部の転移箇所は全部で3つ。
1つは大陸中央部に近い東寄りの山脈の麓。
1つは北側の山に囲まれた場所。
1つは西側の湖の中の小島らしき場所。
『どこでもええんとちゃうん?』
オルカは呑気に言っていますが変な場所に出ると厄介です。
そういう意味では転移する場所はきちんと吟味したい所です。
「それならこの山脈の麓がいいんじゃないですか?」
ドーネルさんが指差したのは大陸中央部に近い東寄りの場所です。
確かにそこは最有力の場所なんですよね。
山の奥深くや湖の島だと人のいる場所に行くのが難しい可能性が高いと思われます。
ま、今まで行ったことない自然の秘境も興味はあるんですけど、沙織お祖母さまたちと合流することを考えると街とかが近い方が良いと思います。
「公式の簡易地図だとその場所の近くに結構大きい街がありますから」
「そうなんですか?」
「はい。『西方の玄関』ステイグースって街ですね」
北から南に流れる川と東西の主要街道が交わる場所にある交通の要所の街だとか。
北には大陸西部有数の鉱山、東には大陸中央部を支配するアルス帝国との国境線に建てられた西方の守りの要である城塞、西に繋がる街道は大陸西部の主要な大都市に通じていて、南は広大な森が広がっていて現在開拓が活発に行われているそうです。
「冒険者が求められることも多いので、初心者プレイヤーが拠点にするのにも適しているそうですよ」
「へー、いいですね」
私の中では麓>湖>山奥、て感じの評価だったのが一気に麓>>>湖>山奥という感じになりました。
湖というのもちょっと気になっていたのですが、やっぱり他のプレイヤーもいるような街を見てみたいんですよね。
「じゃあ、ここの場所にしましょうか。じゃあオルカはいったん仕舞いますよ」
『えーっ!? うちも外の世界を見てみたいやん!?』
「転移した先が狭い部屋だったり、狭い通路しかなかったりすると困るじゃないですか。大丈夫そうなら外に出しますよ」
『絶対やで! 絶対やからな!』
支配下のマギドールはインベントリにしまって待機させることが可能です。
とりあえず何をやらかすかわかりませんしオルカにはいったん中に入ってもらうことにします。
普通の街だとオルカを連れ歩くのはたぶんまずいと思うのですよね。
一応は古代文明の技術の結晶みたいな存在ですし。
ま、長距離を移動する時はオルカに乗りますしその時は出さざるを得ないでしょうけれど。
それとも、もしかするとオルカを連れ歩いてても全然珍しくない可能性もあるかな?
プレイヤーには【召喚術】や【調教術】などお供を連れ歩く必要のある技能もいくつかありますしね。
こうして考えると本当にわからない、知らないことばかり。
その知らないことを見るために、知るために。
新しい世界に旅立つ。
ここから外に出て行けば何があるのでしょうか。
本当に今から楽しみです。
「じゃあ、僕は見送りですね……本当にここに滞在させてもらってよかったんでしょうか?」
「ドーネルさんは『無限回廊』の攻略があるから、ここにいないとまずいのでは?」
「いや、それはそうなんですけど……一応、ここはハクさんの所有するエリアですからね」
ドーネルさんはトルアドールに残って「無限回廊」の続きを攻略していくそうです。
「構いませんよ。それに私もある程度大陸西部を見て回ったら、ここに戻って来るつもりですから」
笑いながら左手の人差し指にはめた指輪をドーネルさんに見せます。
この指輪があればいつでもトルアドールに戻って来ることはできます。
だからこそ、ほとんどの私物はここに置いて行くわけですから。
ただ、戻るのは簡単でも元いた場所に行くのは大変なのですよね。
トルアドールから外の世界に出る場所は限られていますから。
うん。
転移魔術か魔法みたいなものを探すのも目標の1つにしましょうか。
それがあれば自由にトルアドールと行き来できますからね。
覚えておきましょう。
「わかりました……ええっと、それでですね」
「何でしょう?」
いつになく真剣な面持ちでドーネルさんが私の事を見ています。
「もし、何か困ったことがあって、僕の力で役にたてることがあったらいつでも言ってください。どこだろうと、絶対に駆け付けますので」
「ありがとうございます。頼もしいですね」
ドーネルさんは今は種族レベル上がって113レベルだったかな?
ほぼ間違いなく、全プレイヤーの中でも最高位の種族レベルの持ち主でしょう。
少なくとも戦闘ならよほどの相手ではない限り負けないでしょう。
「もしもの時はよろしくお願いしますね」
「はい。じゃあ……えーっと。僕が言うのもあれですが」
ん?
まだ何かあるのでしょうか?
「行ってらっしゃい、ハクさん」
ちょっとそんなこと言われると思ってなかったので不意打ちでしたので、思わず固まってしまいました。
でも、そうですね。
確かにドーネルさんが見送る立場ですから、そう言うのが自然ですね。
じゃあ、私が言うべきなのは。
「はい。行ってきます!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
最後になりましたけど。
トルアドールで活動した結果、現在のステータスを。
名前:ハク
種族:マギドール・オリジン 性別:♀ 年齢:1
種族LV:77 職業:
能力値:
筋力(STR):C+/F
生命(VIT):B/D
敏捷(AGI):C/F
器用(DEX):S-/A
知性(INT):S+/A+
精神(MND):A-/C
HP:100% MP:100% VP:100%
空腹度:16% 渇水度:9%
技能:
01:【闇視】L
02:【創神の寵愛】L
03:【鑑定】LV52
04:【古式人形術・上級】LV28
05:【魔機工学・上級】LV41
06:【上級錬金術】LV8
07:【魔法】LV15
08:【解体】LV40
09:【読書】LV22
10:【外界知識】LV19
11:【掃除】LV5
12:【魂核術】LV1
13:
14:
15:
16:
17:
控え技能:
【片手剣術】LV1【見切り】LV30【回避】LV30【危険感知】LV46
【気配感知】LV17【ランニング】LV3【跳躍】LV10【柔軟】LV2【登攀】LV2
【ド根性】LV1【剛力】LV1【俊敏】LV2【MP最大値上昇】LV6
【MP回復上昇】LV7
※継承技能:
【武芸千般】EX【流派:森羅万勝】EX【神眼】32LV【先読み】45LV
【空蝉】42LV【韋駄天】37LV【不屈】78LV【我慢】88LV【上級鑑定】21LV
【魔法】69LV【魔力制御】67LV【神力】16LV【神速】21LV【神指】19LV
【超頑健】46LV【MP最大値上昇】84LV【MP回復上昇】82LV
【VP最大値上昇・極大】33LV【VP回復上昇・極大】36LV
「無限回廊」では死に戻りしたので種族レベルは上がっていません。
「隠都へと至る道」もほとんど経験値は入ってきていません。ドーネルさんの方に優先的に割り振られていましたからね。
技能についてはなぜこんなにメイン技能欄を空欄にしているかと言うと。
検証の結果「ラズウルスさんから継承した技能と私が取得していた技能の効果は重ならず、高い方が優先される」とわかったからです。
これにより私が覚えていた直接戦闘に関する技能はほぼ効果を発しないことが判明しました。よって控え送りになっています。
しかも重複して効果を発していない技能は成長もしないようなのですよね。
ラズウルスさんから継承した技能は直接戦闘系技能についてはかなり高レベル(確認しましたがドーネルさんより高かったです)なので、多分一生困らないとは思うんですけど。
強いて言うと【MP最大値上昇】と【MP回復上昇】が上級になってないので今後魔法を使っていくとなると不安があるかな、という感じです。
そして例外として効果を発する技能が【鑑定】と【魔法】になります。
【鑑定】は【外界知識】とリンクしている時は私の技能が優先して使用されるようです。おかげで「無限回廊」のモンスターを【鑑定】で見たりするとレベルが上がりました。
【魔法】は一度説明しましたがラズウルスさんから継承した魔法と私が覚えた魔法では種類が違うのでそれぞれのレベルで使用することになります。
なのでこの2つはメイン技能欄にセットしたままになっています。
残りの技能欄の空きについては……新しく何か技能を覚える機会もあるでしょう。
【魂核術】を活かすために【死霊術】を覚えにいくとか、転移手段を得るとしたら【魔法】技能より【魔術】技能の方が見込みがありそうですし。
知識系とかちょっとした便利そうな技能を覚えるとかもありですね。
兎にも角にも。
ようやく私の「Dawn of a New Era」の始まり、とも言えます。
しっかり楽しんで行きましょう!
仮想世界の人形姫 xissmint @xissmint
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