神様のお咎め

坂本 光陽

神様のお咎め


 宮古島の近くに、大神島おおがみじまという離島がある。数十人の住人は皆、高齢者であり、子供や若者は一人もいない。かつては子供もいたのだが、小中学校が廃校になって久しいという。


 大神島は昔から「神の島」として崇められている。島には立ち入り禁止の聖域があり、勝手に入ってはいけない場所がいたるところにある。


 昔、大学教授が調査にやってきたとき、重大な問題が起こったらしい。

 教授は島で行われる秘祭に関心をもち、執拗に取材を申し込んだのだが、断られてしまった。そのため、勝手に神聖な場所に入り込み、無断で写真や8ミリの撮影を行ったのだ。


 これによって、島は神様のおとがめを受けた。具体的にいうと、疫病が流行ったのだ。教授の不遜な行為のせいだ、と島民たちは怒り心頭だったらしい。その後、教授は40代の若さで亡くなっており、天罰を受けたのだと言われている。


 島で工事が行われた時も、同じようなことが起こった。

 島の東側が浸食によって削られたため、防波堤を兼ねた道路建設の話が持ち上がったのだ。だが、工事中、神様にとって重要な岩石を砕いてしまったため、お咎めを受けてしまった。


 ブルドーザーが故障したり、関係者の体調が悪くなったりした。現場で怪我人が出た上に、現場監督まで亡くなったのだ。工事関係者は慌てて、岩石の修復を行ったらしい。結局、道路工事は中断され、そのまま現在に至っている。


 さらに、大神島には、島のものを持ち帰っていけないという取り決めがある。石や木片、貝殻一つといえども例外ではない。島から決して持ち出してはいけないとされている。


 しかし、世の中には罰当たりがいる。東京からの若い旅行者が、「神の島」の貝殻を大量に拾い集めて、こっそり持ち出したのだ。「神の島のお守り」として売り出そうと考えたらしい。持ち出し厳禁は聞かされていたが、ただの迷信ぐらいにしか考えていなかったのだろう。


 この旅行者も神様のお咎めを受けた。40度を超える高熱が出て、身体中に赤い湿疹ができたのだ。島の決まり事を破ったために、天罰が下ったのだろう。


 旅行者は貝殻を島に郵送して神様に許しを請うたのだが、聞き入れられなかった。解熱剤を服用しても高熱が下がらず、20代の若さで亡くなったという。

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神様のお咎め 坂本 光陽 @GLSFLS23

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