恋情と情愛に揺れる 女性達の力強い生き様

奈良時代の物語。
同様の時代、舞台で交わる人々を、いくつもの物語として紡いでいる作者様。
そのどれもが情緒的で胸を熱くするものですが、私は特にこの物語を推したいです。

女官として務め始める三人の若い女性。それぞれに良いところを持ち、先を思いながら友情を育みます。
微笑ましい女友達のやり取りも可愛らしく…。
しかし、恋情は、時に己の心を別のものに変えてしまいます。
恋とは、落ちるものなのです。

椿売の章は、物語が進むにつれ、男女の情愛に揺れ動く心と、ままならない嫉妬や抑えきれない想いが膨れ上がります。
そういうものを生々しく表現しながらも、どこか清々しく、胸に沁みる描写は圧巻です。
鎌売の章は、恋に落ちながらも、内の愛情を真っ直ぐに育て、なおも夢に向かって突き進む女性の強さが描かれます。

どこを読んでも、力強い生命と愛を感じる物語。時代物は…と思う方も、まず一頁開いてみることをお勧めします。
驚くほど引き込まれますよ!

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