第9話孤独の魔女と隠れの砦
「また…何か始めたか」
静かな領主館で領主エドヴィンは静かに呟く、小高い丘に館が立っているおかげで 窓から村が一望できるのだが…
よく見ると村人が ムルク村の外で何かの支度をしているではないか、まぁ 恐らくはまたあの偽物の魔女の歓待とか感謝の宴とやらを開くつもりなのだろう
「あの、…あの偽物が この村にやってきてからというもの、村は荒れに荒れていく始末…今年の備蓄にとっておいてあるもの 外へ売り出し金に変えるための物、全てをあの魔女に捧げてしまっている…このままではムルク村は潰えてしまう」
かといって、エドヴィンにはこの状況を打破する力は何もない、せめてもの抵抗と これ以上の無駄な浪費を止めるよう村人相手に説得を試みたものの
『魔女様がいるから、今年は豊作に決まっている』
『それに、食料の問題も全て魔女様が解決してくれるだろう』
だとさ、…皆 もはや引っ込みがつかなくなって変に偽物の魔女に依存しているところが見られる
一応捜索騎士に連絡をつけて ムルク村に来てもらう手筈になっているが、ここは皇都から最も遠い場所…最低でも到着にはあと一週間近く要するだろう、そうなると それまでの間にムルク村の食料は全て あの偽物の魔女に捧げられ尽くしてしまうかもしれない
「はぁ、賢人様とエリスちゃんだけが僕の味方だと思うと 心強いけれど、あの二人にはあまり迷惑はかけられないしな…」
そうため息をつきながら頬杖をつく…情けない、何かが起こっているのに 何も出来ないとは、いやこれは昔からそうか、僕にもう少し甲斐性や根性があれば今頃 賢人様に花の一本でも送れたのかもしれないな と…終ぞ渡せず枯らせてしまった幾多の花を思い、自分と重ねる
「ん?…」
ふと、館の扉が乱雑に開けられる音を聞く…なんだ、クレア君か?いやクレア君は今玄関先で掃除をしている筈…
「いや違う、クレア君じゃない ?…誰だろう」
クレア君のような小柄な女性の足音じゃない、ズカズカとヅカヅカと鳴る足音はもっと大柄の…しかもこれは、一人じゃない大人数の足音だ
一体何が と不穏に思い、席を立った瞬間 奴らはそこに僕がいる事を最初から知っていたかのように、この部屋の扉を開け……
…………………………………………
「それで?……分からせろ とあの魔女様に命令されていたんだろう、なら早くしてくれ 急いでいるんだ」
「いででっ!?な なんだよこいつ!?魔術師じゃねぇのかよ!?、話違うじゃんか!ぃっ!?や やめてくれぇ…お 折れちまう 腕が…あがぃっ!?」
歳をこいてみっともなく喚き散らす盗賊崩れの男の姿に、更なる煩わしさを感じ…組み伏せ掴んでいる男の右腕をさらに捻り上げるレグルス、情けないな この程度では腕は折れんよ…って気絶したのか?
「テメェ!調子に乗りやがって!」
「乗せているのは君達だろうに」
私が情けなく悲鳴をあげる男をいたぶっている隙をついて…いや隙を突いたつもりのもう一人の山賊が、高らかに鈍重な棍棒を振り上げ殴りかかる…が遅い 動きに無駄がありすぎる
踏み込み、至って単調 ただ前へ足を出しただけ 理合のかけらもない
体重移動、なってない どころか出来てない あれでは棍棒に振られるだけだ
振り下ろし、重心は軸からズレにズレている、これでは攻撃とは呼べない 子供のチャンバラの延長線上だ
全てがお粗末、荒事担当はその強面な顔くらいしか要素がないようだ、本物の荒事 本物の闘争というものは 全てが合理と綿密な計算の上に成り立つのだ 例えばこんな風に
「よっと…」
腕を捻られ悶絶し気絶した男の腕から身を離すと未だ振りかぶる最中の鈍間に向き直り、拳を鋼の如く握りしめ腰だめに構え、一歩 盗賊に先んじて踏み込む
隆起、踏み込みと共に大地が沈み湧き上がる、攻撃の威力とは踏み込みと気合いで決まる
刹那、やっと振るわれたその棍棒の間をスルリと抜けてその身を男へ近づけると共に、その構えられた拳 この小さな拳に 我が全体重が上乗せする
一閃、振りかぶる瞬間も 振り抜いた瞬間もなく音を超える我が拳が、盗賊の男の眉間へ綺麗に突き刺さる、棍棒に振り回されていた男の重心と我が拳が衝突事故を起こし 物の見事に彼の体は宙へと浮かび くるりくるりと三回転、頭から綺麗に着地する
「がぶふぅ…」
「殴る という行為は、一見するよりも奥が深い 私もまだ半端にしか会得していないが、君よりはマシだったろう?」
泡を吹き 鼻血を垂れ流す彼に向けて言葉を投げかけるが、是非もなし 返答など返ってこないだろう、ギリギリ意識を失うよう調整して殴ったのだから
魔術など使わなくともこのくらいなら、軽く捻れるんだよ
「っくしょう…なんだよ、魔術師は白兵戦が苦手じゃなかったのかよ、なんで殴り合いで俺たちに勝ってんだよ!この女!」
「魔術師の弱点は白兵戦である…という自分の弱点を理解しながらそこに目をそらす連中が多いのは確かに事実だ、だけど 中にはこのように心配性で ついつい弱点を埋めてしまう小心者の魔術師もいるんだよ」
少し前に殴り飛ばした男が、文句をつけるように私に叫ぶ…おっと 歯がへし折れ鼻が曲がり 以前の強面が更に見れない顔になっているな…
魔術師は白兵戦が弱い それは事実、だがこの世で一流と呼ばれる魔術師は皆 そんな弱点遠の昔に克服しているだろう、少なくとも私が生きた時代の古代の魔術師は皆 卓越した白兵技術の持ち主でもあった、今ではみんな伝説の魔術師として伝わるような人物達なのだが…
そして、その今では伝説と呼ばれる古代の魔術師達の中で頂点に位置したこの私、魔女レグルスが…、事 殴り合いで賊に遅れを取るわけがないだろう
「くそ…ふざけんなよ、畜生 山猿の奴…何が女嬲れる楽な仕事だよ 、ふざけやがって、デタラメ言いやがって…」
「はぁ、自分で売った喧嘩くらい、自分で責任を持つんだな」
私は あれから偽レグルスが使わせたであろう荒事担当の盗賊達を相手していた…というほど相手もしてない、何せ皆紙細工のように吹けば飛ぶし突けば倒れる薙げば伏す、勝負にもなり得なかった
私を数分でも足止めしたいなら、一個師団は最低でも要るだろうに、それをお前 賊7~8人て…ちょっとショックだぞ
「ちょうどいい、…先にお前に聞いておきたい事があるんだ、教えてくれないか 君達の目的と裏事情…後その他諸々」
「はぁ?何を言いだすかと思えば へっ、言うわけねぇだろう…いくらボコられても口は割らねぇ、、殴るなり蹴るなり好きにしろ!人は殺しても仲間は売らねぇ それが盗賊の常識なんだよ!、仲間を売る盗賊がどこにいんだよ!」
「ここに だよ、意気込みは結構…悪いが君には仲間もアジトも何もかも私に売ってもらう」
そう言いながら地面に伏す彼の体を片手で持ち上げる、私はこの後消えたエリスを探さなければならないんだ、押し問答や尋問に時間を割いている余裕はない…彼の理念は素晴らしいが 、それはまたの機会にしておいてくれ
「な 何をされても、何も言わねぇぞ」
「好きにしろ…、ふぅ その口に堰はなく、真実は今蛇籠を打ち崩す…『白日口露』、さて?君は何をしにここに来た」
「へ?な なんだよそれ…、っ お 俺たちの目的は魔女レグルス様の命令で 無人になったこの村で略奪をする為 そして惑いの賢人を裏で始末する為に遣わされたんだ…っ!?んな!?口が勝手に!?」
魔力を少し込めて囁けば、彼の口は堰を切ったように 己の秘密ボロボロとこぼし始めた、彼の覚悟も理念も知った事かと、無情にも彼が死守しようとしたそれらあれらは 彼自身の口から語られていく
白日口露…所謂自白魔術だ、対象に質問を投げかければ本人の意思関係なく 、答えてしまう 単純極まりない魔術、一応詠唱は殆ど略してある 理由は単純、効きすぎるから
私が本気でこの魔術を使ったら 彼は一生自分の秘密を暴露し続ける人間になってしまう、それは流石にうざったいから今はやめておく
「私の始末か…というか村で略奪だと?、 貴様らの目的はなんだ」
「や やめてくれ聞かないでく…お 俺たちは、この近くに奴隷市場を作るために この村を支配下に置こうとしているんだ、その為にまず魔女レグルス様がこの村に潜入し 盗賊を倒す という芝居を見せて信頼を勝ち得て 村人を自在に操れるようにする、そして 村人達にあれこれ貢がせて それで裏市場を完成させようと…やめてくれやめてくれ、言わせないでくれっ!?」
チッ、やはり最初から盗賊とつるんでいた偽魔女レグルスの猿芝居だったか…それにまんまと嵌められ、今村は偽物の指示で無人 その隙に盗めるものは盗み その上でなお自分達の目的の為に村を利用しようとしてたのか
楽観視していたのは村人だけではない、私も完全に楽観的だった こいつら、この村を食い物にしようとしていたのか
「おい、略奪しようと村に入り込んだと言っていたな 他にこの村に入り込んでる盗賊はいるのか!?」
「や やべて…い いる!、俺たちは飽くまで惑いの賢人を始末する為だけにここにきただけで盗む奴は別にいる!、ただ他の奴らは早々に村で銀貨や 高価な品や…後 一人でいる子供を攫って、あ アジトに持って帰っているだろう…こ 殺される、俺 みんなに殺される」
銀貨や高価な品や…一人でいる子供だと!?
顔が青褪めるのを感じ、思わず持ち上げていた男を取り落としてしまう…、一人でいる小さな子供 それはエリスにも当て嵌まるのでは無いか!、エリスが危ない いや…エリスは偽物の魔女のところへ行ったと考えると、もう既に…
「お おい!、お前達 その連れて行ったアジトはどこにある!」
「アジトは…アジトは、わ わかんねぇ…詳しい地理や場所は 一部の人間と馬車を動かす人間にしか伝えられてねぇ 、山猿が 俺たち末端は 信用ならねぇって…ごべあっ!?」
くそっ!用心深い連中め!下っ端には重要な情報は最初から伝えていないか…知らなければいくら魔術で口を割らせても 何も出てこない
くそっ!、ありのままの怒気を込め用済みになった男を殴り飛ばし気絶させる、即座に向き直る
頼む まだ間に合ってくれ、まだ村にいてくれ 頼む…エリス!
「エリス!エリスッ!、居るか!頼む!出てきてくれっ!」
我も忘れてその場から駆け出し、村中を駆けずり回る 彼方を探し こちらを探し、無人となり既に荒らされた村の中を草の根掻き分けて探して回るが、エリスの姿はどこにもない
遠視の魔眼も透視の魔眼も用いたが、村の中には人っ子1人いやしない…村の外には宴の準備をしている村人がいるが…、よく見れば 子供が1人も見当たらない
やられた…完全に後手に回った上に見失った、既にアジトに向かわれたとなると 場所が分からん、透視遠視を組み合わせても 捜索範囲が広範囲になればなるほど精度が落ちる
見つける手立てがない…
「はぁ…はぁ、やられた…この私が 賊ごとき遅れを…」
「あれ?賢人様じゃないですか?どうしたんですか?そんなに慌てて」
汗をかき 息を切らせる私を見て、不審に思ったのか近くの村人の女が声をかけてくる、自分の子供が村の一番の宝が盗み出されたというのに、呑気に酒樽なんか抱えて微笑んでいる
「エリスが 子供達がどこにもいない賊に攫われたかもしれん…!」
「なんと!?大変だ …いやでも大丈夫です、それも魔女レグルス様にお頼みすれば直ぐに」
「その魔女レグルスが貴様らを騙して攫っていったとなぜ思わん!?、現に既にこの村のどこにも魔女レグルスとやらはいないだろう!奴が連れて行ったんだ、騙されていたんだよ!お前達は!…私も!」
村人の女の その言葉に、久しく頭に血がのぼる此の期に及んでも、まだレグルス様レグルス様とヘラヘラ笑っているその態度が 頭に来る
いや、頭に来たのは私だけではなく目の前の彼女も同じらしく
「賢人様…いくら貴方でもレグルス様をバカにするのは許せませんよ、賢人様も知っているでしょう 魔女の言うことは絶対で魔女は間違えない、この国では常識です その魔女を疑うなんて…考えられませんよ!」
そっちか!そっちに怒るのか、…そもそも騙す騙されるの話ではなく、魔女を疑うなという話か!
この国では この世界では魔女は正しく 疑うなど以ての外…そういう認識はあると、さんざ話たが、この話はこれ程までに根深いのだ…八千年かけて浸透した常識が簡単に覆るわけがない
村の子供が攫われたかもしれないから と話しても、それすら魔女に頼ろうというのか…
「魔女レグルス様に任せておけば、万事上手く行くのです だって伝説にも書かれているじゃないですか、あのお方は万能の力を持ち…」
「魔女は…少なくとも、魔女レグルスは 万能などではない…ただ周りよりも力を持ち長く生きているだけで、特別な存在などでは…断じてない、すまんな 時間を取らせた」
もはや、会話に何の意味も見出せず…反論する彼女を置いて踵を返す、彼女達は本心から魔女レグルスが助けてくれると思っているんだろう、この寄る辺のない村に唐突に現れた力を持つ者に 依存するなというのは酷な話だろうか…少なくとも、この村は今まで自分の力で強く戦ってきたじゃないか
それを忘れてしまったのか…
「魔女の存在は 彼らにとって…かくも大きいのか」
魔女の言うことは正しい 魔女は間違えない…か、その通りだ だってこの国は、この世界はそのように魔女の手によって作られたのだから
八千年前の災厄という過ちを 2度と犯さない為に 、誰も間違えない世界を作ろう…他の7人は口々にそう言っていた
そりゃあ誰も間違えないだろう、魔女の庇護を受ける者は皆 思考も選択を放棄し 選択は全て魔女が行う、そして魔女のすることは全て正しく過ちなど 無い…誰も選ばないから間違えない 魔女は間違えないから間違わない
そんなエゴで回った世界が果たして理想か?…そうは思わん、そんな世のあり方など
こんなの人の世のあり方ではない
スピカ…いや この話を持ち出したのはカノープスの方か、アイツは今この世界のあり方を本当に正しいと思っているのか、それとも、世界の守護を放棄した私には そんな事を想う権利などないか?
八千年の淀みは 今こうして小さな村さえも蝕んでいるというのに
せめてもの抵抗と、村の中を歩き回りながら探して回る…何か 何かないかと、村の連中は宛にならん、私だけでも探し続けなければ、せめてやつらのアジトに通ずる なにかを…
「これは 車輪の跡か…」
そうやって村を虱潰しに探すこと数十分…ふと、下を向いて歩いていると 村の裏手に少しだけ窪んだ箇所があるのを見つける…これは車輪の跡か よく見れば蹄の跡がある、と言うことは馬車の跡か?
しかし、こんな所行商人など通らない……
いや、待てよ?そう言えばあの盗賊…
『アジトは、わ わかんねぇ…詳しい地理や場所は 一部の人間と馬車を動かす人間にしか伝えられてねぇ 、山猿が 俺たち末端は 信用ならねぇって』
…馬車を動かす人間か、つまり連中は馬車で移動しているのか
まぁ当たり前の話だが村の周辺に盗賊達のアジトはないだろう 近くにあったなら村人にバレてる、それに盗んだ物品や攫った子供も抱えて移動するわけにもいかん、となれば移動法は確かに馬車しかない
つまりこの車輪の跡は…あっ!
「この地面、よく見れば若干踏み荒らされている 大人数が移動した跡…攫われた子供達か!?ならやはりこの跡は…盗賊の 偽物の!」
あまり深く跡は残っていないが、それでも転々とつながる車輪の跡と馬の蹄の跡を辿るだけで凡その場所は絞れるだろう!
一縷の光明、糸のようにか細い光明だが 確かにこの状況を打破する救いの光だ、離してなるものか 、この光の先に エリスがいるかも知れないんだ!
「エリス…上手く立ち回れよ、絶対に無理をするなよ…頼むから死ぬなよ」
せっかく…折角得た、私の愛弟子をこんなくだらないことで失ってなるものか、絶対に取り返す…絶対に!
無事でいてくれ!
………………………………………………………
盗賊達がアジトとして使う隠れの砦の中…いや、地下深く
汚い空気と嫌な臭いが充満する劣悪な狭い牢屋の中、凡そ十数人の拐われた子供達が押し込まれ 己の不幸ともう会えないかもしれない父と母の顔を想い 泣き続けている
「おーい、ガキども ほれ泣いてみせろよ」
「んんぅ…」
牢屋の前で子供達を見張る男は、暇を持て余し 足元の小石を投げつけ、時に脅かし 時にワザとぶつけて 甚振る、大きな大人のあからさまな悪意に子供達はより一層怯えて縮こまる
今回の投げつけられた石は不幸にも、子供達の中でも特に小さい 女の子アリナにぶつかってしまう
「ゔぅぅぅぅう…んぅぅぅ」
石をぶつけられたあまりの痛みに声を上げて泣こうにも、恐怖と猿轡に阻まれ声すら出ない、本当なら皆慰めてやりたいが 今この時ばかりは誰もその余裕はない
誰しもが絶望して 誰しもが諦める、小さな小さな辺獄…それこそが 、この地下の牢屋なのだ…みんなもう 自分に訪れるであろう最悪の結末を受け入れつつある
ただ1人を除いて
「…………」
ただただじっと、エリスは鉄格子の一番手前に座り 目の前の見張りを見つめて考える、エリスは ただ1人 この状況下で諦めず子供達全員で脱出する為策を練っているのだ、観察し考察し 泣きもせず絶望もせず、ひたすら頭を回転させている
どうやって抜け出すか、いや 抜け出すまでの道のりならもう頭の中にある…ただ、時を待っている
「ふぁああ、ねむっ…あぁだりー」
こうやって観察していると分かる事だが、この見張り やはり真面目な性格ではないようで、時折ウトウトしたり 落ち着かない様子でウロウロしたり 集中力がないのだ
だからか、この見張りが仕事をしているか 偶に別の盗賊が様子を見に来るのだ、見張りの見張り とでも呼ぼうか?、それが大体5分おきだ 少し前後はするが、大体の間隔はそれくらい
それを待っている、この見張りをなんとかしても、タイミング悪く見張りの見張りと鉢合わせしては面倒だ、だから…行動を起こすのはその見張りがやってきて 去った後、またやってくる5分間で決着を…
「おい!、ちゃんと見張ってんだろな」
「チッ、またかよ…」
来た…、牢屋の奥の扉から眼帯をした怖い顔の男が入ってきて様子を見に来る、エリスの考え通り やはり5分おきだ
「ちゃんと見張ってだろ!、ったく 何で俺がこんな息苦しいところで ガキのお守りなんか、見張ってる最中は酒も飲めないしよ」
「持ち回りなんだから仕方ねぇだろ、テメェがサボったら俺の責任になるんだからな、絶対サボるなよ!後!殺すなよ!」
「分かってるよ!、早くどっかいけ!」
口論に近いような言い争いを数度した後、眼帯をした方の男は扉から外へ出て行く…多分 遠くへ行ったと思う、さて この5分以内に少しでも状況をよくしないと
「………『火雷招』」
猿轡をしたまま、口の中で小さく小さく一つ詠唱を唱える…ただ無為に今まで過ごしていたわけではない、ちゃんと魔力を全部使えるように ずっと練っていたのだ
手の中で小さく生まれた炎の雷を用い、こっそり手を縛る縄を焼き切る…これで、手は自由になった…次は
「ふぁあぁ、嫌な仕事任されちまったな…くそっ、俺はガキが嫌いなんだ」
「んん?…んん…?」
さっきアリナちゃんへ ぶつけられた石を拾う、エリスが慎重に動いていることもあってか、それとも見張りの男がやはり集中していない所為か、エリスが魔術を使った事にも縄を切ったことにも気がついていない…よしよし順調だ
さて、第一関門だ ここでミスったら最悪だよエリス! そう自分で自分を奮い立たせ、手の中の石をギュッと握る、大丈夫大丈夫 やれるやれる、この石を使って あの見張りを倒す
「ん?…おい、金髪のガキ テメェ、さっきから何を見てんだよ、生意気な面しやがって…というか?何してんだ?さっきから…」
エリスの鋭い目つき青筋を浮かべ、ズカズカと乱暴な足音と共に近寄って エリスの事を舐め回すように暴力的な目で見つめてくる、どうやら集中力はなくともエリスの異変には流石に気づき始めているようだ
いやいや寧ろ、近づいてきてくれるのは僥倖だ…
「ん…お前 よく見たら縄をっ!?」
「っ…颶風よ この声を聞き届け給う、その加護 纏て…『旋風圏跳』!!」
男がエリスの縄が焼き切れている事に気付き声を上げる、その瞬間に咄嗟に手を前へ出し出来得る限り早口で詠唱を並べる、噛んだり吃れば詠唱は発動しないが 普段からししょーがその辺は厳しく鍛えてくれているから問題ない!
旋風圏跳 …これは風を纏い高速で移動する、ししょーが村まで歩くのに使っている…
別名移動補助魔術 これを使う事で、使用者は通常では考えられない速度で移動することが出来る、ただこの魔術 何も自分の加速にしか使えないわけじゃない
今回はこの手元の石に対して使用する、この小さな小さな石ころがエリスの手の中で風を纏い…超高速で移動、いや エリスの手から勢いよく射出される 行く先はもちろん目の前の…
「がひゆっ!?」
「っ…!」
近づいてその顔をデカデカと見せてくれた事もあり、狙いは一分のズレもなく 目の前の盗賊のデコを弾き 、遥か後方まで吹き飛ばす…ただ一つエリスに誤算があったとするならば、その威力の高さだ
精々気絶させる程度の威力しか出ないと思っていたのだが、まさか小石が砕け 大の男が羽のように宙を舞い壁際まで吹っ飛ばすほどの威力が出るとは思っておらず、思いの外音を立ててしまった
しまったと 即座に扉の方に指を向け警戒する、音を聞きつけた盗賊が来たら 速攻で迎撃して……
……来ない、聞こえなかったか?それともエリスが思っているより遠くへ行っていたか、兎も角幸運だった
「ふぅ…ぷはっ、取り敢えず第一関はなんとかなった、あ 今みんなの拘束を解くね」
猿轡を外して一息つく、とは言え安心はできない、直ぐにまた別の男が様子を見に来る…、制限時間は5分かそこら、それまでに他の子達の拘束を解いて牢屋から出なくては、手始めに拘束を解くのは…
「ふぇ…お おねえちゃん何したの…?おとこのひとが…」
名前は確か、アリナという少女…この中で一番年下の子で 前かけっこした時に一緒に走ったケビンと言う子の妹だった筈だ
この子の拘束解除は最優先事項だ…何も、一番年少で可哀想だからじゃない この子には仕事をしてもらわなくてはならないからだ
「…詳しい説明は後でします、アリナちゃん 君なら牢屋の格子をすり抜けて外に出られますよね、あそこで倒れてる人が 牢屋の鍵を持っている筈です、それを取ってきてください」
牢屋の格子はかなり狭く作られているが、体の小さいアリナなら抜けられる
アリナだけ外に出して、気絶した見張りが持っているであろう鍵を使い 牢屋を脱出する、こう言う流れだ だから先に見張りを気絶させた、これなら安全に鍵を回収できる
…筈だったのだが
「い いやだよ、こわいよ…アリナだけそとに出るなんて やだぁ…」
「な 泣かないでください、別に怖い事なんてありません あそこの男は気絶させました、危険だって…」
「で でもやだぁ、ヤダヤダこわいよぉぉ」
頼みの綱のアリナが泣き出してしまったのだ、恐怖で足が竦み 動けなくなってしまう
理屈ではない 怖いのだ 男が気絶していても怖いのだ、そもそもまだ幼いにも程がある彼女がこんな生きるか死ぬかの極限状況に連れ出されて うまく動けるわけがない 異様なまでに落ち着いて行動しているエリスがおかしいのだ
この当時はまだ気づけなかったが、今思えばこれはエリスの失敗だ アリナは責められない、エリスという少女はこの非常時にあって 『他者に自分と同じだけの能力と思考』を要求してしまった、これではそもそも作戦自体成り立たないのだ
きっと、これがレグルスであったならば5分あるうちの4分をアリナを落ち着かせ説得することに割いただろう、それだけ重要な場面であることに気がつけなかった、エリスと言う少女が 他よりも出来すぎているが故に過ちである
「お おねえちゃんが、なんとかしてよぉ…」
「なんとかって…」
なんとか、つまり火雷招なり旋風圏跳なりで牢屋をぶっ壊すとかして、なんとかしろというのか、多分 出来なくはない だがやりたくないのだ
エリスは、先程魔力を使って初めて分かったが まだあんまり魔術を連発出来ない…幼い為魔力の量が全然足りないからだ、特訓の時には気がつけなかったが、しっかりした威力の魔術など 撃てて後5~6発…あまりにも心許ない弾数
きっと、ししょーの修行を全て完全に履修していたなら…こんな事にはなっていなかったのだろう…、出来ることなら魔力は節約したい、だから アリナにお願いしたかったのだが
「じ 時間がないんです、早くしないと直ぐに別の男が来て…」
「べ べつの人がくるの…!?」
しまった、口を滑らせた いや…円滑に行動していたならば全然間に合う時間だったのに、まさかこんな事に時間を使うなんて完全に予想外だ、エリスの中で建てられていた計画が次々瓦解する音が聞こえる…
マズい、かといって今更引けない 目の前で気絶している男が発見されれば、間違いなく騒ぎになる…そうなれば脱出どころの騒ぎではなくなる
「とにかく鍵を取ってきてさえくれれば…」
「ヤダっ、こわいよぉ…おかあさん」
「おい、飯持ってきたぞ …ん?、おい!何があったんだよ!?」
チッ、もう来たか!、モタモタとしている間に見張りの見張りが来てしまった、もうどうやっても間に合わないかッ…こうなっては仕方ない
こんな所で無駄使いはしたくなかったが、騒ぎになってはもう意味がない、手の中で魔力を高め眼帯をした男 いや牢屋の鉄格子目掛け、魔力を練り上げた掌を叩きつけるように向ける
「一体何が…お おい、誰か…」
「焔を纏い 迸れ俊雷 、我が号に応え飛来し眼前の敵を穿て赫炎 『火雷招』…ッ!」
詠唱と共に爆ぜる光、周囲の空気が煮え立ちグッと温度が急上昇するのを感じる、縄を切った時は比べ物にならぬ火力がエリスの手の内から溢れて零れ出て、輝く紅雷が厳かに手の中で鳴り響き、激烈なる魔力が嵐のごとく渦巻き 逆巻き暴れ狂う
「ぐっ!?なんだこの光 ってか…ま 魔術!?なんでこんなガキが…っ!?」
その名の示す通りの炎雷が強烈な閃光と共に撃ち放たれ、目の前の鉄格子 そして様子を見に来た眼帯の男を超絶とした炎威が襲いかかる
「くっ…あっ!?」
その威力を態々説明するならば、爆撃とでも称しようか 、目を刺すような光と耳を裂くような音の最中、鉄の格子はいとも容易くひしゃげて吹き飛び、眼帯の男は火雷に体を貫かれ爆炎に体を巻かれ燃え盛りながら壁を突き破りながら吹き飛んでいく
魔術を撃った張本人であるエリス自身、その余波にコロコロと体を転がし尻餅をついてしまう
全霊で撃ってしまった、咄嗟だったから手加減する暇さえなかった…ごっそり持っていかれた魔力を感じながら、エリスは焦燥に駆られる…
「はぁ…はぁ、まさかこんなに威力が出るなんて、いてて…今の人 し 死んでないかな」
全力で魔術を撃ったのは初めてだ、さっき放った旋風圏跳など比べ物にもならない一撃…ししょーは魔術は危険なものだと言ったのが 今身を以て理解出来た、危険だ…目の前の景色に目を向ければ 凄惨な光景が広がっている
ひしゃげて大穴を開けた牢屋 壁 床…まるで大砲で打ち込まれたかのような荒れ具合、これを今 エリスがやったのだと思うと なんだか体が震えてくる
何よりこんな一撃を受けたら 人間なんて
「ぐ…ぐぉ…」
「生きてる?…ぎ ギリギリだけど」
黒い炭のようになりながらも、男は辛うじて息をしている…良かった生きてる…、エリスはこの盗賊達に容赦をするつもりはないけど 何も殺すつもりはないんだ、ししょーからもらったこの力で人を殺してしまったらエリスは…ともかく良かった
エリスが未熟で火雷招の威力を一割も引き出せなかったが故の幸運にホッと一息つきながらも立ち上がり態勢を整える、殺してないならば良い 今はもう時間がないんだ
「今の音を聞きつけて他の盗賊が集まってくると思います!、直ぐにみんなで逃げましょう!、メリディアとクライヴは移動しながら他のみんなの縄を解いてあげてください、足は縛られていませんから 走るくらいは出来るはずです!」
流れとはいえ、牢屋と壁に大穴が開いた ここから外に出られる…代償としてかなりの量の魔力を消費し ど偉い音を立ててしまい隠密も何もなくなってしまったわけだが
即座にメリディアとクライヴの縄を解く、この二人ならば怯えることはないだろう というか今更怯えられても困る、ここで縮こまっていても状況は悪化の一途を辿るだけなんだから
「エリス…わかった!、みんな こっち来て!」
「に にげるって、出口なんか わかんないし」
「それは覚えています、右に進んで突き当たりを左 三番目の角を横に曲がり4つ目の扉を通って まっすぐ進んだら階段が見えてくるから、それを登って直ぐに左 その後右へ行けば広間に出ます そうしたら…」
「ぜ ぜんぶおぼえてるのか!?」
当たり前だ、この牢屋まで態々歩かせてくれたのだ 目隠しもせずにだ、エリスにかかれば道順の暗記なんて一回通れば十分だ 、道案内は出来るが…とにかくとにかく時間がない
クライヴは戸惑いながらもみんなの縄を解いてくれてる、メリディアもすぐに理解してテキパキ行動してくれてる…、よし!この二人に頼んで良かった
「早く外に出よう、ここにもすぐに盗賊が集まってくる…また捕まれば今度はどんな目にあうか…」
「なんだなんだよ!今の音は…って牢屋壊れてんじゃん!やっべ!報告しねぇと」
「もう来たっ…颶風よ この声を聞き届け給う、その加護 纏て具足となり、大空へ羽撃く風を 力を 大翼を…!」
音を聞きつけた別の盗賊が集まってくる、当たり前だ あんな馬鹿みたいな爆音を聞いて駆けつけない方がどうかしている!、男が反応するより早く吹き飛んだ瓦礫の岩を掴みながら詠唱を叫び
「そしてこの身に神速を! 『旋風圏跳』!!」
「なっ!?このガキ空飛んで…がびゅっ!?」
岩を抱えたまま風で空へと飛び上がり 、勢いをそしてエリスの体重を乗せたまま叫んで仲間を呼ぼうとしている盗賊の頭へと叩き込む
腕で抱えた岩が砕けるほどの衝撃を、顔面で受け止めればいくら大人とはいえ昏倒を免れず 鼻血を流しながらぶっ倒れる…ぐっ、また魔力がかなり持っていかれた…これ以上の魔力消費はマズい…
ししょーの体力強化の修行が生きているお陰でまだ動けるが…、あの修行の日々がなければすでにエリスは魔力消費からくる疲労で動けなくなっていただろう
「みんな!早く!外へ!」
「あ ああ、みんな!外ににげよう!」
ガキ大将のクライヴの声に、他の子供達も反射的に動き出しバタバタとエリスを置いて 牢屋の外へ駆けていく…、ああ早く追わないと…弱音は言ってられない 他の子供達じゃ盗賊と鉢合わせしたとき抗う術がない、エリスが エリスがなんとかしないと…!
「大丈夫?エリスちゃん」
「はぁ はぁ大丈夫…、まだ動けるよ メリディア」
壁に手をつき冷や汗を流すエリスを気遣って声をかけてくれる、大丈夫 と口にしていなければ足が動いてくれなさそうだ、ししょーは 魔力は魂に直結する 使いすぎれば死に至ると言っていた……これ以上使い続けたらエリスは…
いや!そんな事考えるより今は脱出だ 出し惜しみして捕まったら、魔力云々関係なくエリス達は殺されるかもしれないんだから
「っっ!、行くよ!メリディア!道を覚えてるのはエリスだけだから エリスが先頭に立たないと…!」
「でも顔が…うん、うん!分かった!」
青い顔で鬼気迫るエリスに、若干の恐怖を覚えながらも 今は彼女だけが希望なのだと駆け出す
ただ、自分と同じ歳のこんな小さな女の子が 大人顔負けの魔術を使って、自分達を助けようとしてくれている 事実が…なんだかメリディアは悲しく思いながら
………………………………
「安酒だな…」
「そう言わねぇでくだせぇ、ここは仮のアジト 駐屯してるのも下っ端しかいないんでやすから、高い酒なんか置きやせんよ」
仮のアジトとなるこの隠れの砦の、一応最も豪華な空間である大広間にて 、偽の魔女レグルスは真っ赤なぶどう酒を煽りながら今回の戦利品 銀貨の山と宝石を見つめながら山猿と共に頭の中で算段を立てる
これだけあれば裏市場運営の資金として事足りるだろう、この金を元に稼いで稼いで稼ぎまくれば いずれここにある銀貨は全て絢爛な金貨に変わり 安物の宝石は『栄光の黄金宮殿』に飾られるような豪華な宝石に変わる事だろう…クヒヒ 今から楽しみ
と 内心ほくそ笑んだ瞬間、鈍い地鳴りと共にグラスの中の酒が波紋を生み…というか地面が揺れて
「ぬおぉっ!?じ 地震か!?いやでもさっき爆音が…ま 魔女様大丈夫でやすか?」
「っ…問題ない、それよりなんの音だ!地下か?地下で爆発でもあったのか!?」
轟音と共に砦全体を揺らす地鳴りに思わずたたらを踏み酒をこぼしてしまった…くそっ!なんなんだ!、轟音は地下から鳴っていた 感じ的に爆発音だと思うが、爆薬か?そんな危険なもの こんな辺鄙なところに置かないと思うが
「いやぁ〜、オレにもなんの事やら …爆発物なんかここじゃ扱いやせんし、誰かが魔術をって ウチの盗賊団にそんな強力な魔術使えるやつなんかいやしせんし」
「分かっておる、……いや 魔術か?」
山猿の言葉少し引っかかる、確かに強力な魔術であればこの轟音さえも引き起こせるだろう、だがそんなこと出来る奴は我が盗賊団にはいない…となれば、子供達か?いやそれは尚更…
「っ!あの金髪のガキ!賢人の弟子!、確か魔術師の弟子たるあのガキなら魔術も使えるはずだ!、もしかしたら魔術を使って牢を破り 外に出たのかも知れん!」
「いやぁ、無いと思いやすよ…だって子供が牢屋を破るほどの、ましてや地上にまで余波が届くほどの魔術を扱うなんて聞いたことが…」
「それ以外考えられんだろう!くだらぬ戯言は聞きたく無い!、おい!山猩々に声をかけて様子を見に行かせろ!、賢人の弟子が魔術を使えるのであれば厄介だ!」
魔術の教練を受けた子供なら魔術を使えてもおかしく無い、いや そんな威力の魔術を撃つのは おかしいにはおかしいが、最悪の事態を想定して動くべきだ
魔術を使えたのに下っ端の盗賊に簡単に捕まったとは考えにくい、つまり…最初からこうやって他の子供を助ける為 アジトを探るため この私と正体を探るため、態と潜入していたのだ…
ガキが、なめ腐りやがって…もう死んでも構わん 使うつもりはなかったが山猩々を使う、アイツはタイマンの喧嘩なら山狼のブエルゴを凌ぐ男だ、魔術を使おうが 関係ないだろう
「山猩々の兄貴を!?い いや…確かにあの人は山狼のブエルゴがいなくなったウチの盗賊団じゃ最強ですが、あれは抑えの効かないちょっとした狂人ですぜ 下手したら商品のガキを殺すかも…」
「牢屋を破るガキなど商品にはならん、どうなろうが知ったこっちゃ無い… 寧ろ残酷に殺すように言っておけ、後 地上にいる他の盗賊には様子を見に行かせず この地上で待ち伏せをするように伝えろ」
決して逃がさん…、寧ろ 逃がそうとした子供全員捕らえてから痛めつけて、自分の無力さを思い知らせてやる、クソガキめ 大人をなめた代償はデカイぞ…
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