第25話 〇chに投稿された話
110:「僕は某大学の二年生です。数年前に起きた全国的にも有名な殺人事件の舞台になった部屋を借りました。一つのアパートで二部屋が事故物件になってしまったというあれです」
111:「おい、家ばれすんぞ」
112:「個人情報書かん方がええて」
113:「安心してください。もう、引越しました」
114:「よかった。それでどうした?」
115:「お盆にぴったりだわ」
116:「エアコン消してるのに涼しくなって来た」
117:「イッチ、大丈夫か?」
118:「はい。では、聞いてください。
僕は地方出身で母子家庭なので、不動産屋にはできるだけ家賃の安いところにしたいと伝えました。風呂トイレ付きの物件はとても借りられる金額ではないため、風呂なし物件にしようかと思っていたところ、格安のところがあるよと言われて紹介されたのがそのアパートでした。
二階建ての普通のアパートでしたが、各階四部屋あるのですが一階は全部空いていて、二階だけが埋まっていました。
昼間見に行ったのですが、何となく薄気味悪いし、本当に一階は全部屋空いていて不気味でした。一階だから日当たりが悪いのかなと思いましたが、不動産屋さんは『引越したらすぐ耳に入ると思うから』と言って、殺人事件について話してくれました。
借り手がつかなくて大家さんも困ってるから、礼金なしで交渉してくれると言ってくれました。僕はそこに住もうかなと思い始めました。やっぱり、お風呂がないときついですし、そこはエアコンもついていました。
不動産屋さんからは、もし、ここに住んでダメなら風呂なしに越せばいいんじゃないと言われました。それに、事件があった部屋は真ん中の二部屋なので、道路に一番近い部屋にしたらどうかと提案されました。
道路側に一番近い部屋は壁の外側に二階に上がる階段があるし、道路は人通りがあって、ちょっとはマシかも知れないと言われました。
僕はその通りにしました。
引越した初日はまだ部屋に布団しかありませんでした。
カーテンもなくて、照明も付けていませんでした。
男だし覗きもないと思っていました。でも、誰かが庭を通るかもしれないから、目隠しに白いごみ袋を垂らしておきました。
そのアパートは壁が薄いので、外の階段を人が上がる音がすごく響きました。それに、自転車を止める音もします。階段の下が自転車置き場になっているからです。
アパートに引っ越して数日経つと、隣に誰かが引越して来ました。男の人でした。
話し声が聞こえて来て、女性を部屋に呼んでいました。僕はDTの一人暮らしなので、興味本位で耳を壁につけて聞いていました。
すると、女の人が「一時間三万円ね」と言いました。すると、男性の方が「最初に払うと手を抜くかもしれないから千円だけ払う」と答えました。デリヘルの人を呼んだんだと思いました。でも、ちょっと高いなと思いました。風俗を利用したことはありませんが、本番がないならもっと安いはずです。多分、女の人はフリーでやってるのかもしれません。トラブルにならないかと心配でした。
僕がずっと盗み聞きをしていると、「助けて、殺される!」という叫び声が聞こえました。その後は音楽が聞こえて来ました。Jポップだけど何年も前に流行った曲ばかりでした。僕は心配になって警察に通報しました。
その後、警察が来ましたが、隣の部屋は鍵が掛かっていて、庭から覗いたけど誰もいなかったと言われました。
そのアパートは殺人事件があったせいで地元で有名だから、不届きな連中がラブホ代わりに使っているみたいだということでした。警察が来るまで十分くらいしかなかったし、ずっと音楽が流れていたから、二人がどこに行ったのか不思議でした。
もしかしたら、上の階から聞こえたのかもしれないけど、その時は気が付きませんでした。
それからも、時々隣の部屋から話し声が聞こえてきました。何を言っているかよく聞こえませんでしたが、女の人の声で「一時間三万円」と言っていました。多分、同じ人がいつもそこで売春をしているんだと思いました。僕はどんな人か見てみたくなりました。
そして、ある夜、思い切って魚眼レンズから廊下をずっと覗いていました。一時間三万円なら、一時間後には出てくると思ったからです。一時間後に音楽が止みました。僕はドアに張り付いて女の人が出てくるのを待ちました。お恥ずかしいですが、右手で息子をさすさすしていました。音楽のせいでいつも息子が反応してしまうようになっていました。
すると、隣の部屋のドアが開いて、びっくりするくらいかわいい女の子が出てきました。年齢は十八くらいで白いフリルのいっぱい付いた洋服を着ていました。
僕は三万円くらいならうちにも来てくれないかと思いました。どうやって、連絡を取っていいかわからなかったので、どうしようか迷っていました。
すると、その人がこっちを見たかと思うと、目が合いました。すごく怒っているようでした。
まずい気付かれたと思って動揺していると、その人がいきなりドアに突進して来ました。僕はびっくりして、後ろに倒れてしまいました。すると、さっきの子が郵便受けの隙間から、こちらを覗いえていました。僕は恥ずかしいと言うよりも怖くなって部屋に戻りました。
すると、女の人は裏庭の方に回ったみたいで、ガラスの向こうに誰か立っていました。女の人のような感じで小柄でした。僕は怖くてたまらなくて、布団の中で震えていました。
すると、隣の部屋で掛かっている音楽がまた流れました。いつも聞いているので、曲名を覚えているものばかりです。また、別のお客を取ったんだと思いました。僕は布団から顔を出しました。その音楽がいつもより大きな音で流れていました。
僕は恐ろしいことに気が付きました。
その音楽は僕の部屋でかかっていたのです。
それに部屋に誰かいる気配がしました。
僕は恐怖で気絶しました。
翌日は友達の家に引越しました。
家具がなかったので、布団だけ持って引越しました。
引越した後知りましたが、逮捕されていた女の人は拘置所で自殺したそうです。理由はホルモン治療ができなくなって毛深くなっていくことに耐えられなかったのではないかということです。それに、親が反社だからもう娑婆に戻れない、また人を殺して戻って来るしかないと警察官に訴えていたそうです。生き残った女性も被害者のような事件でした。ご冥福をお祈りしたいと思います。
119:そのアパートどうなったの?
120:一階だけ取り壊しだろ。
121:やるとしたらガレージバンドだな。
122:いいね。バンドの練習スタジオにすればどう?
123:カラオケ店
124:風俗一択だろ
125:そのアパートはいくつかの大学に近くて、今は人が住んでるそうです。今も怪奇現象が続いていても、普通に音楽がかかっているだけだと思っているかもしれません。
僕は隣の部屋でかかっていた音楽を聴くと今も気が遠くなります。
事故物件に住むのはガチでやめた方がいいと思います。
二つの部屋 連喜 @toushikibu
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