第24話 イオン君はどこへ
20××年10月8日
「世田谷〇〇バラバラ殺人事件に関与していると思われる女性が都内で発見されました。知人男性の元に身を寄せていたそうです」
20××年11月8日
「警察が行方を追っていたロリータファッションの女性が、死体遺棄の疑いと〇〇大生殺害事件の容疑者として逮捕されました。容疑者は19歳の元男性で、江田聡史さん殺人幇助は否認しているものの、大学生の殺害については認めているとのことです」
20××年××月某日
「この事件ですが、最初は大学生の単独犯行とみられていましたが、第三の人物が現れたことによって複雑な様相を呈してきました。
起訴された、〇田
〇月〇日、江田さんの家に行った〇田被告は、江田さんが約束の金を渡さなかったことで口論となり暴行を受けた際、大学生の男が止めに入って誤って殺害してしまったと述べています。
壁が薄いため、〇田被告が『助けて!殺される!』と叫んだところ、大学生の男が気が付き部屋に入って来たということです。
〇田被告は防犯のために、普段からナイフを持ち歩いており、大学生の男はそれを使って江田さんを刺したということです」
「丸腰の人間にナイフで襲い掛かるのは、過剰防衛なんじゃないでしょうか」
そこにいた白髪の男性が神妙な顔で言う。
「〇田容疑者によると、誤って刺してしまったようだということです。お互い面識はありましたが、すれ違った時に軽く会釈するくらいの間柄だったそうです」
「ごく普通の隣人ってことですよね。なぜ殺すまでに至ってしまったのか全くもって謎ですね」
「自分がナイフを持ってて、相手が襲い掛かって来たら、思わず刺してしまうっていうこともあると思います」
「本人が亡くなっていますからね。真相はわからずじまいじゃないでしょうか」
「しかし、〇田容疑者はどうして、大学生の男を殺害してしまったんでしょうか」
「はい。〇田容疑者によりますと、大学生の男が肉体関係を迫って来たため、断ったところ男が無理やり行為に及んだとのことです。その際、被告を女性だと思い込んでいたのに、トランスジェンダーの男性だったことに気が付くと逆上して暴行を加え、さらに今後は女性を部屋に監禁すると宣言したため、怖くなって殺害してしまったということでした」
「同じ女性としては胸が痛みます」三十代の女性コメンテーターが目を潤ませながら言った。
「う~ん。これは難しい問題ですね。〇田被告は二人の男性から暴行を受けているので…出張型の風俗店に勤務していたとは言え、こうした悲劇を未然に防げなかったのかと悔やまれます」六十くらいの経済アナリストが答えた。
「自分が同じ立場だったら…どうしていたかわかりません」
「出張型の風俗店というのはトラブルも多いですからね。働いている女性の安全を確保するために、法整備をちゃんとした方がいいんじゃないですかね。風俗っていうとたいていの人は顔をしかめますけどね、工場など男性が多い街では性犯罪が起きないように風俗店の摘発をしないという風にして、性犯罪の抑止に利用していますからね」
「〇田容疑者は、もともと兵庫県の出身ですが、高校を卒業した際に東京の企業に就職したものの、わずか一か月で退職したとのことです。その後は、風俗やキャバクラなどに勤務し、顔の整形と性別適合手術を受けたと言われています」
「〇田容疑者は幼少期から、義父による虐待に遭っていたため、被害者のAさんと大学生の男から暴行を受けた際、パニックになってしまったと供述しているようです」
「〇田被告には同情の声が上がっています。やなり幼少期のトラウマが重大な事件を引き起こしてしまったとみられています。」
「情状酌量の余地はあるんじゃないでしょうか」
「SNSを利用して嘆願書を集める動きが広まっています」
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