第23話 二つの部屋

 ニュース速報です。本日、東京都世田谷区〇〇のゴミ捨て場で男性の一部とみられる遺体が発見されました。近隣のゴミ捨て場数か所から不審なゴミ袋が複数発見されているとのことです。


 そして、同じ頃に被害者とみられる男性の隣の部屋に住んでいた十代の男性が遺体で発見されました。死後、数時間経過しているとみられています。この男性が被害者の死に何らかの関わり合いがあると見て警察は捜査を続けています。


 ***


 20××年7月25日。


 世田谷〇〇バラバラ殺人事件の容疑者とみられる男性は、実家の両親に宛てて自らの犯行を仄めかすメッセージをSNSで送信していたことが明らかになりました。


 警察はこの人物が被害者の無職江田聡史さん(五十五歳)を殺害したとして、動機などを捜査しています。


 ***


 20××年7月30日。


 テレビのワイドショーで、アナウンサーが被害者の情報を読み上げていた。


「被害者の江田聡史さんは、元々大企業のグループ会社の管理職を務めていましたが、数年前に自主退職した後は犯行現場とみられるアパートで独り暮らしをしていました。

 投資で財産を作ったからファイヤーすることにしたと周囲に漏らしていたとのことでした。株や債券で数億円の資産があったようです。死亡した男性との間で金銭的なトラブルがなかったか捜査を続けています」

「被害者の男性はブログや動画共有サイトなどを通じて、自分が株式投資で成功した手法などを公開していたとのことです」


 感想を求められたお笑いの女性が答えていた。

「私もこういう仕事をしていると、お金持っていると勘違いされて、投資話とかいっぱい来るんです。どのくらいお金持っているとか言っちゃだめですね。気を付けないといけないなと思いました」


「被害者の隣に住んでいた大学生は都内の有名大学の学生でしたが、大学では目立たない存在で友人もいなかったと見られています。当番組では、この大学生の高校の時の同級生に話を聞いています」


「そうですね…うちは田舎なんで、〇〇大学に進学するってけっこう珍しいんですよね。だから、会うと必ず自慢してきて、ちょっと空気読めない人だったなと思います。勉強はできたけど友達はあんまりいないというか…本当に目立たなくて、学校の行事とかでも、あ、いたの?って感じでした。だから、あんな事件起こしたのが今も信じられません」


「僕は中学の同級生だったんですけど、◎◎君は部活でいじめに遭ってました。…一個上の学年で虐めてた人がいたんですけど、急に亡くなってしまって…◎◎君が犯人じゃないかと言われていました」


「小学校の時の同級生の子から聞いたんですけど、水槽で飼っていた金魚をわざと炎天下の校庭にだして死なせたりしてました。みんなでサイコパスだって噂してました」


 それを聞いて、そこにいた経済学者の人が言った。


「こういう一方的な決めつけはどうかと思いますが。亡くなった人は反論できませんからね。事実かもわかりませんし」

「当番組では複数の人から裏を取り、確証を得た話だけをピックアップしています」

「俺も死んだら何て言われるかわかんないから怖いよ」

 別の人が言った。


「でも、株や債券を持ってても換金できるのって本人だけじゃないですか。殺害してしまったら意味ないですけどね。トラブルって何なんでしょうね」


 ***


 その後のワイドショーで取り上げられた事件に関する新たな情報。


「江田さんの遺体が入ったごみ袋には、大学生の指紋が検出されたということです。そして、スマートフォンには被害者の物と見られる写真が多数発見されているということです」


「亡くなった大学生が、前日に若い女性とファミレスにいたという目撃情報が寄せられているということです。江田さんが亡くなった後も、この男性は普段通りアルバイトに出勤していたとのことです。遺体を発見した当日は無断欠勤をしており、心配したアルバイト先の社員が携帯に電話をした際には、つながらなかったということです」


「ファミレスにいた女性が、江田さんと最後に会った人物と見られています。生前最後のTwitterに『先日、派遣型リフレでロリっ子を呼んだら、びっくりするほどかわいい子が来た。その後、何回か店外デートして、今日は初めて家に呼ぶ』と書かれていたそです」


「大学生がファミレスで会食していた女性もロリータファッションだったということなので、もしかしたら同一人物ではないかという可能性が浮上しました。警察ではこの女性の行方を追っています」


「大学生の胸には複数の刺し傷があり、他殺と自殺両面で調査を続けています」


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