そして再び、長い旅へ


「さよならは言えた?」

 魔女が尋ねると、ミャンファは小さく鳴いてうなずいた。老婆のたましいを、もう何にも苛まれない安らかな場所へ導いてから、ミャンファは魔女のもとへと帰ってきたのだ。


 魔女はミャンファの真っ白な背を撫でた。魔女の使い魔としては、白よりも黒の方が好ましいのだけれど、これはこれで良いか、と彼女は思う。


 ミャンファはおとなしく撫でられながら、ひとつの旅を終えた寂しさと、また新たな旅が始まる予感とに胸を震わせていた。


 魔女の使い魔となった自分は、これから残されたたましいの分だけ、長い時間を生きることとなる。

 頑張って長生きをして、この親切な魔女が死ぬときまでそばにいてやろうと、そんなことを、ミャンファは考えている。そして、彼女の膝を温めていてやろうと。


「これから、よろしくね。ミャンファ」

 ミャンファを抱き上げて、魔女は言った。


 彼女の腕の中は、ユキエの腕の中ほどではなかったけれど、それでも居心地が良く、温かかった。




<おわり>

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ミャンファの長い長い旅 深見萩緒 @miscanthus_nogi

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