第3話ーきみと、ぼく。

 っっっえ?何が起こったん、だ?


「おーい、ひさしぃ。明日の卒業式一緒にいこーぜー。三年は10時からなんだってよ。」

「お、おう。」唯一親友と呼べる京助が俺の名を呼ぶ。


 おかしい。確かに覚えている。前にも同じ会話をした。ん?「明日の卒業式」??卒業式はもう終わったろ。最後の記憶はたしかきれいな石を拾ったところ…

家に向かって歩きながら、俺は手の中の石を見る。なんか段々明るくなっているような…?気のせいか…。ポケットに入れたきり俺は石の存在なんか忘れていた。ただ、今起きている不可解な出来事は解像度の良い夢なのだと信じて疑わずに帰路についた。


 ぼーっとしながらドアを開けて家に入ると、母の

「おかえりー、ん?なんかポケット光ってるけど、もしかしてスマホの電源入れっぱなしじゃない?」

という声にハッとする。さっき入れた石が玄関の電気と同じくらいの光を放っていたのだ。俺はもう必死に光が漏れないようにと、ポケットの上から強くそれを握る。

「あっあはっそうそう!こんなとこにあったん


 ー誰かが時間操作能力を使った。たしかに今私はルベウスを握っていなかった。しかし時は桜の木の下でペンダントとにらめっこをするあの日あの時、彼を振ったあとの時間のあの日に進んでいる。

「スマラカタが、スマラカタの主が能力を発動させたんだわ!」

私の元カレが転生している。そして、スマラカタを見つけたのだわ。はぁあマズいことになったわと頭を抱える。早く見つけ出さないと、以前魔法学校であった事故のように、同じ時に一方はある未来へ、一方はある過去へそれぞれ同じ時間分移動することになると、世界全土を巻き込むブラックホールができ、大量の死者が出てしまう。「それだけは阻止しないと!  絶対に見つけ出す…!」


 あ、れ?俺が今石を握った瞬間、時がとんだ?いや、戻ってきたのか!俺がこの石を見つけたときに帰ってきている!

「…まさか」これはなにかとてつもないことになったのではないか??俺はもう一度石を強く握った。


「ーん?なんかポケット光ってるけど、もしかしてスマホのー」聞いたことのある母のセリフ。間違いない。これはー

「時間を操る力…??」思わず口からこぼれ出てしまった。

「あんたまだそんなこと言ってんの?まったく、厨二病は卒業してよね。あんたもう高校生になんのよ?」母の呆れたようなセリフに俺は耳をかせなかった。それよりも興奮がおさまんなくて、でもまだ夢を見てんじゃねえかって。まあ夢なら夢なりによくできたおもろい夢だなあなんて思いながら、今起こったことは事実なのだと思うことにした。時間を操ることができれば、なんでもできんじゃね!?例えば夏休みの最終日になったらまた初日に戻ってさ、って我ながらくだらねぇな!あれ?ちょっと待てよ。俺、もう一回嶺花に告れるんじゃね?いや、その前に俺はあいつを惚れさせなきゃなんねえのか。やっばいこれ名案すぎじゃね??いつに戻んのがいいかなー。やっぱ3年の2学期の修学旅行かな〜。よしっ!


 一方の嶺花は、自分の部屋の机でスマラカタの主探しについて一生懸命考えていた。さっきから時間操作が頻繁に起こっているのが癪に触るが、今は元カレを見つけ出すのが最優先事項だと考えた。主を見つけたことにより活動し始めた対になっているストーンは、近くなれば近くなる程光を発する。ただ、問題なのはそれが国内にあるのかすら手がかりが掴めていないことだ。

「ストーンの光が…」さっきより明るくなっている。少しずつにスマラカタの主に近づいているという嬉しさと、元カレに再会する日が近づいているむず痒さでなんとも言えない気持ちになる。転生前の記憶がない彼は何も覚えていないのだが、私がルべウスを持って転生したため、時間操作能力をもつ対のストーンがつながったら、スマラカタの主である彼にも記憶がうつってしまうんだよなぁ。まあ大量の死者生産よりはよっぽどましなんだけど。さてどうするかー


 エメラルドグリーンの光が刹那に天地を覆った。

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