第5話ーきっと、もう。
修学旅行の夜。それは学生時代で刻む青春の3ページ分も占めそうな大イベントであるが、どうもその真っただ中にいる俺たちはそのことに気づけないのであるから、不思議だ。
そんなときに,俺らはー
「じゃあトランプ持ってきたから大富豪でも、」
「チッチッチ。何言ってるの嶺花さん。ここは王様ゲームに、??」
「決まってるでしょう!」京助と日葵がにやっと被って言う。その勢いにおされた嶺花は、何も言えなくなってしまった。
「じゃあおやすみー。」
2時間ほどゲームやおしゃべりを楽しんだあと日葵と嶺花は俺らの部屋を後にした。
「俺らも寝っかー。」京助の声に俺は「んー」と賛同する。
前の記憶の修学旅行は、たしか俺が恥ずかしすぎてあの二人が部屋に来るのを断ったんだっけか。それに比べたら何もなかったとは言え、テンパらなかたんだから大きな進歩だろ。
俺は光が漏れないように石を小さなお菓子の缶に入れたのを思い出してちらりと見る。感謝してもしきれないが、本当何なんだあの石??
「結構楽しかったねー。」という日葵の声に「うん。」と笑ってみせた。
平静を装って。
思い出したのだ。前回の記憶の修学旅行では、久志は私たちが部屋に来るの断固拒否してなかったかしら。
「まさかとは思うけど…」あいつ、前回の記憶と今回の時間操作で行動が変わってない?まさか…
ー疑う余地はあるのかしら
思い当たることもあるにはあるのだ。家に帰るとルベウスの光が強くなることが多い。久志と幼馴染なのは、家が隣だから。つまり何が言いたいかというと、久志との距離が近くなるとルベウスの光も強くなるということ。あくまでも一つの可能性に過ぎないけれど。でも、もしあいつが元カレなのなら…
私は一晩中久志のことを考えることとなる。
ふわぁぁ。いつもと違う布団に襖の陰影。見たことない京助の寝顔とその少年のような寝方に一瞬驚き、あぁ修学旅行の朝だと思う。
二日目、自由行動。前回の記憶では嶺花を誘えず、京助の取り巻きに混ざりながら観光なんかしてたっけ。でも、もう俺はくよくよしない。絶対嶺花を誘うって決めたんだ。
朝食時、幸運なことに嶺花の班と席が近かった。帰り際を狙って俺は嶺花に声をかけた。
「あのさ、今日俺と一緒に回らね?」
ぽかんとして「?うん」としか言えなかったけれど、今日一日久志の行動を疑るにはよかったと思う。
ーよっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!俺は心の中で滅茶苦茶叫んだ。今日一日嶺花とデート!?うわぁ、喜んでも喜びきれねぇ…はぁぁ、涙出てきそ。
と、いうわけで俺らは二人で奈良を回ることとなった。
「あーうふふ。」鹿にせんべいを取られた嶺花が笑っている。楽しそうだ。
ー!?!?やっべー可愛すぎる、天使なんだがぁぁ!?と言いたい気持ちをぐっとこらえて俺は天使とのデートを満喫する。鹿せんべいって人も食えるらしいよ、なんてくだらない豆知識を交えながら。
久志に未来で告白された身としては、今のこの状況って結構ドギマギする。惚れてはいけないという決心と、もしかしたらこの人が転生した元カレかもしれないという興味が心の中で綱引きをする。ここはいっそ割り切って、思い切った質問をしてみよう。
「久志ってさ。前世とか、どう思う?」
「え?前世?そんなのわからないよ。俺にそんなのがあるとも思わないし。」
俺は焦ってこう答えてから はっ、もしかしてこれで相性がわかるとかそういう心理テスト的な何かだったりしたのか?と思ってパニくるのだった。
「そう。」嶺花のその一言にほっと安心する。
「じゃあさ、タイムトラベルはどう思う?」
「え??」
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