生きていく意味さえ掴めないからグッド・バイ、そんな世界で君をみつけた

互いに思い合いながらも死別ものではあるが、読後は開放的で、たとえどんな事があっても生きていこうと強く思える。
限られた字数の中で二人の関係がよく描けている。
プロローグの運び方が上手い。
物語の結論手前くらいが語られており、まだ名前は出てこないけれども、治子はなくなったことをすでに示唆している。
興味をそそられる導入の書き方がされていて良い。

治子が芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を好きだといったとき、奈緒美だけが否定しなかった。そのときから、治子の奈緒美が好きがはじまったのだろう。

現世では結ばれないから来世では一緒になるのを願って心中するので、奈緒美と心中したいのではなく、心中した先にある、二人が一緒に生きていく世界を思い描いていたと思う。
毎年お呪いを一緒にしていたなら、治子は自殺をしなかったかもしれない。

連絡が取れなくなってから十九日まで、奈緒美は治子を探そうとしていない。
中学三年生の時に二カ月様子を見ていたときと同じ。
ただし、今回は五日と早かった。
奈緒美の治子に対する距離感は、それだけ縮まっていたとみることができる。

奈緒美はどうすればよかったのか。
救いたかったのなら、彼女をグイグイ引っ張っていく行動力が必要だった。
その行動力がようやく開花し、作家になったのだろう。

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