第4話 3日目/決着
【
――と、ゲームは意外なコメントから再開した。
【節見】「霊能です。本物。信じて」
……どうせ負けるなら、せめて処刑されないように、ということなのだろう。【恋人】による死には唯一「罰」がない。オオカミに食べられると、ゲームの勝者によって処遇が決まる……犠牲者はお腹の中なのだ。
しかし、ゲームは思わぬかたちで終盤に差し掛かっている。ここで吊り1、夜に殺害1とくれば、残るは3人――つまり、節見さんが嘘をついてこの日を乗り切ろうと考えている線もありうるのだ。
仮にその証言が真実だとしても、彼女からすれば、オオカミと
――中断前に私に入るはずだった票を、彼女に集めることは十分に可能!
既に私と
あとは、
【桐生】「あとは『オオカミでない方』次第ってこと。
私は【
……昨日助けたのに! まるで私を目の敵にしてる。
【節見】「恋人説は分かるけど、【医者】なら一般人確定でしょ。
もし犯人側2人残ってたら?」
……同数で、処刑終了時点で『犯人陣営』の勝利だ。
節見さんのそのフォローは助かるけど、心が痛む。私は保身のため、彼女を殺そうとしているのだから。
それから――彼女のその発言は、いかにも『一般陣営』だ。まあ【殺人犯】以外の『犯人陣営』……【霊能者(偽)・狂信者】は自分が『一般陣営』だと思い込んでいるから、信用は出来ないけど、本当に【恋人】なら、今回のゲーム的に【霊能者】である可能性も――
【節見】「私、霊能で【宮代・犯人】て出てる」
【桐生】「それでも【恋人】を吊れば夜に死ぬ」
……今の桐生さんは自陣営の犠牲なんて考えていない。【医者】を吊れば確実にオオカミも釣れる、そちらの可能性が堅いという判断なのだ。これは覆せそうにない。節見さんもそれに乗るしかない以上――
あとはもう、ナオちゃん次第――
【
信じてた……!
「――――」
喜んだのもつかの間、私の脳裏にはある可能性が閃いてしまう。
夜には死ぬという節見さんを処刑する――それはある意味、【殺人犯】処刑のチャンスを一回無駄にする遅延行為。【殺人犯】からすれば、延命。
……節見さんはナオちゃんを【殺人犯】だと証言している――もしも節見さんが、真の【霊能者】だったら?
だけど、私は知っている。【殺人犯】は来栖さん――初日の夜だって、私の指示通りに桐生さんを殺したのだ。
しかし、思い出す。ログを遡れば、彼女のコメントは残っている。
【宮代】「個人的な恨みがあったら、やるんじゃない?」
……偶然の一致も、十分あり得るのだ。
そしてこの夜、桐生さんが再び殺されても――それは自然な流れ、予想できる展開だ。
じゃあ来栖さんは何なのかといえば――【詐欺師】――その可能性が残っている。だとすれば、私と生存しても、『結婚詐欺』が成立して【恋人】よりも【詐欺師】が優先され、来栖さんの一人勝ちが確定する……。
……まさか?
【
節見さんには辞世の句を詠んでもらいます」
予想外の可能性を私が検討しているあいだにも、ゲームは進む。
【平塚GM】「本日は先生の誕生日なので、『おめでとう』をあいうえお作文で伝えてください」
……夜。
【来栖】「明日、宮代さんを吊って二人でゴールしようね」
彼女を信じてもいいのだろうか?
今夜、桐生さんは死ぬだろう。私には彼女を助けることも出来るが、そうしても信用を得られるとは思えない。「疑われているのに助けた」で白アピールしようとしている――と。
それに、桐生さんを助けて、投票で【殺人犯】を吊ることが出来れば『一般陣営』としての勝利の線は出るが、『女王』は続投決定――
……私、あの人キラいだしなぁ。
なんにしても、彼女を吊れない以上、明日、私は来栖さんかナオちゃんのどちらかに投票しなければならない。
無難なのはナオちゃんに投票することだけど――来栖さんを吊っても、私には『一般陣営』としての勝ちの目が残る。
もうすぐ午前最後の授業が終わる。次の処刑は恐らく「参加者全員分の昼食を買ってくる」だ。
ここは乙女の園、お昼を大量購入なんかすれば、周囲から『食欲旺盛』のレッテルを貼られてしまう――授業中に告白したりするのに比べればマシな部類だけど、まだイメージの固まっていない転校生にはつらい内容かもしれない。ナオちゃんなら、ダメージは少ないだろう。
だけど、勝つためとはいえ、私に友達が処刑できるのか。
【平塚GM】「では、投票をお願いします」
【宮代】「【来栖】」
【来栖】「宮代さんで」
私は――
……ナオちゃんと恋人だったら、良かったのに。
【木隅】「ナオちゃんになら、食べられてもいいよ」
罰ゲームは、優しくしてくれるといいな――
xxxゲーム 人生 @hitoiki
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