第3話 2日目
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そして、2日目――
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【節見】「こいつ犯人です吊ろう!」
茶番はともあれ、誰も死なずに朝を迎えたということは、複数人によるなんらかのアクションがあったということ――この場に集った7人であれば、誰に言われずとも既にいくつかの可能性には思い至っているだろう。
殺人が行える『犯人陣営』は1人。毎晩殺していくのが推奨される。にもかかわらずそれが実行されなかったということは、【警官】による妨害を受けたか――その場合【殺人犯】の部屋の前にいたか、標的を守っていたのかの二択になる。
私と
……私がここで名乗り出るか、否か。私が考えるべきは、その二択。
桐生さんは自分の
私と彼女、両方が昨夜の出来事を主張しなければ、他の参加者に対して昨夜の出来事を認めさせることは出来ないのだ。仮にお互いを擁護しても、今度は私たちの
昨夜の出来事を証明してくれる第三者がいれば――もちろん私の手札にはその
しかしそうすると本物の【記者】から疑惑の目を向けられてしまう。安易な役職騙りは避けたい。
……単純に、私が名乗り出るだけでも、桐生さんに「お前の役職を知ってるぞ」と圧をかけられる。むしろ彼女が【悪役令嬢】であると皆に公言し、吊られる可能性を潰しておくべきか。桐生さんだって、勝つためとはいえ公開処刑は嫌なはず。陣営としての勝利ルートに無理やり巻き込ませるだけでも意味はある――
私がそうやって頭を悩ませ、結論を打とうとしたところで、
【桐生】「昨夜、私は殺されて、蘇生された」
彼女の方が先に動いた。さすがに現『女王』……判断が早い。まずは発言し、周囲の反応を窺おうというつもりか。皆、初日の彼女の言動から、夜にその周りで何かが起こることは見越していたはずだから、桐生さん自身の主張は第三者のそれよりも効果がある――
【桐生】「先に言っておくと、私は【悪役令嬢】。そのことは私を殺したオオカミと、助けた【医者】なら分かる」
まずは自分の身の潔白と、今日の投票への防衛線を張ってきた。
【宮代】「今の発言、誰か証明できる? 【医者】とか【記者】」
ナオちゃんの呼びかけが、私に名乗り出る決心をさせた。
【
【御手洗】「わたし【記者】」
【節見】「ゴシップ記者だ」
うるせえ、というやりとりがあって――御手洗さんが【記者】目線から、【桐生】の部屋を監視していると、2人分の入退室があったことを証言した。それを証明する証拠もやはりないが、何かしら仮定を設けていかないことには議論は進まない。
私と御手洗さん、桐生さんの役職と昨夜の行動が皆に了解されたところで――
【桐生】「【警官】がいれば、自分が守っていないのに殺人が起きなかった以上、こちらの証言は納得できるはず。
だけど、オオカミが率先して私を噛む?
【警官】がいる可能性があるのに?」
……雲行きが怪しくなってくる。
【宮代】「個人的な恨みがあったら、やるんじゃない?」
【桐生】「私が【狂信者】の可能性もある。リスクが高い。でも噛んだ。なぜ?
【医者】がカバーできるから。
【医者】と【殺人犯】が【恋人】の可能性」
もっともだし事実その通りだけど、それなら【警官】と通じていた方がよりリスクは低い――彼女があえて口にしないそれを私は告げようとするのだが、
【桐生】「これはメタ読みだけど。
今回のゲームは勝者を決めるもの。
全役職が特殊勝利できるはず。
つまり
【医者】【霊能者】に【恋人】がつく」
彼女の入力速度の方が速い――
私もそのメタ読みには納得できる。【医者】【警官】【霊能者】は単独で勝てる役職ではないし、私の【恋人A】という表記からは【恋人B】ペアの存在を疑えるからだ。
桐生さんの主張は正論。しかしそれを認めることは、あまりにも私に分が悪い――
【桐生】「じゃあ、今日は【医者】を吊るということで」
あっという間に、劣勢に。私は白から黒へ、桐生さんは疑惑の人物から完全なる潔白となり、場を仕切り始める。
その時、私は悟った。彼女には誰が黒かは関係ないのだ。【悪役令嬢】が自分であるため、投票をためらう理由がない。全員敵なら、全員吊って殺せばいい――
……どうする? なんとか他に
焦るばかりで何も思いつけないでいた私を現実に戻したのは、
「御手洗、スマホ」
ハッと我に返る。現在は、授業中――教室で自ら静寂を破って許されるのは、
「げ、先生……」
「没収」
前の方の席にいる御手洗さんが、先生にスマホの使用を見咎められたのだ。
私たちはとっさにスマホを隠す。GMの平塚さんがそれとなく咳ばらいをして先生の注意を引いてくれた。それは「一時休戦」という合図でもある。これで少しの間、命拾いできたし、敵も一人減った――運命は私に味方している。
【
……などと、よせばいいのに余計なコメントをするから、先生は回収したスマホの画面に表示されたそれを目撃。今回のため皆アカウント名を分かりやすくしていたのもあって――
「染井、スマホ」
さらなる犠牲者が。
……一時休戦はしても、やり直しはない。
スマホを取られれば
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